稀代のロックシンガーのソロデビューシングル「アイ・ラブ・ユー、OK」は意外にもバラード曲。思わぬ路線変更にロックバンド時代のファンからは落胆する声も絶えなかったという。ものまね芸人の矢沢A型氏が振り返る。
「私もバイト先の『ひのくにランド』という熊本にあった遊園地で、バンド時代の永ちゃんを見て一目ぼれした1人です。当時高校生でしたが、同世代の誰もがリーゼントで革ジャンを着こなしてロックを歌う姿に憧れていました。それだけに、ソロ転向後は『ロックやってくれよ!』とがっかりしたのも事実。しかし、永ちゃんは動じません。自分の作りたいメロディーを追求し続けたのです」
バンドのボーカルから「矢沢永吉」というソロアーティストへの“脱皮”に時間はかからなかった。デビューから1〜2年こそコンサート動員に苦労したが、ライブツアーを重ねるごとに人気はV字回復。77年に武道館、78年には後楽園球場で単独公演を実現する。
「後楽園球場に約5万人動員したのは予想外でした。というのも、そのライブツアーを開催すると発表したのは、大ヒット曲『時間よ止まれ』をリリースする前でしたからね。当時、後楽園球場を満員にできたのは巨人戦ぐらい。その意味で巨人相手に肩を並べる国民的アーティストになったわけです」(富澤氏)
同年の長者番付歌手部門で1位にランクイン。名実ともにロックスターとしての黄金期に突入する。ところが、ファンが大挙するコンサート会場の治安は最悪だった。
「自分もそうでしたが、ファンの大半がヤンキーや暴走族ばかり。チケット発売日前夜のプレイガイド店頭では、ヤンキーたちが乱闘騒ぎを起こすのもしばしば。深夜から行列に並んだファン同士の目が合えば、『ガンつけたろ?』と喧嘩が始まってしまうんです。ライブ会場でも、ファンが座席にとどまっていられず、ステージ前に押し寄せてしまう。MC中にも揉めているファンに、『お前ら、もう来んでいい!』と本気で怒る永ちゃんを見たことあります」(A型氏)
それどころか、矢沢は“風紀の乱れ”を放置しない。
「現在はコンサート会場内でのアルコールは厳禁。さらに言えば、飲酒しての入場もNGなのです。09年の武道館コンサートでは、フリーアナウンサーの徳光和夫氏が出先でワインを飲んで会場入りするも、スタッフに止められて泣く泣く帰宅したとか。『酔った客が怖い』という飲まないファンの声を反映させたルールです」(芸能デスク)
ちなみに、コンサートでは「永ちゃんコール」も禁止。「声出し」が許されるのは開演前とアンコール〜終演までと制限されている。
「コロナがきっかけでしたが、『“ボス”の言うことは聞かないといけない』と、今でもみんなルールを守っています」(A型氏)
ファンもいつしか丸くなったようだ。

