主将になって意識は変わったか。決まってそう聞かれる。
ワーナー・ディアンズは今夏、23歳にしてラグビー日本代表の共同主将を務めた。
今年8~9月のパシフィック・ネーションズカップ(PNC)では参加した全4戦でゲーム主将を務め、序盤は同じ反則が続くなかレフリーに耳を傾け、終盤は故障者続出の隊列にあって組織の忍耐強さを保った。
何より自身がプレーヤーとして持ち味を発揮した。身長201センチ、体重117キロの体格からなる高低のタックル、豪快な突破で、自軍のスコアボードに違いをもたらした。
後日、重責を担って進歩したかを問われた。
「ちょっと、あるとは思いますが…」
間を置いて切り出す。
「責任感がより強くなったというか、より貢献できるプレーをしないといけない、っていう感じですね」
中学2年でニュージーランドより来日のバイリンガルは、指揮官のエディー・ジョーンズヘッドコーチからも褒められた。若くして責任のある立場になっても、自然体で持ち味を発揮したからだ。
「言われたのは、『あまりプレッシャーを感じずにできているのがいい』ということです」
以前、高校3年生だった2020年にパンデミックを経験したのが大きかったと述べたもの。自宅生活を余儀なくされるなか、プロのS&Cコーチだったグラントさんと器具を用いないトレーニングを重ねた。
自らがコントロールできることのみにフォーカスするという、マインドの礎を築いた。
「ずっと前から、目の前の仕事に集中するだけ。言葉とかでリードするより、プレーで引っ張っていく感じです。最初のカナダ代表戦(大会プールフェーズ初戦)ではちょっと緊張感があったんですけど、『キャプテンだから…(過度に意気込む)』というのは、あまりないです」
ここから補足したのは、李承信らと編む「リーダーシップグループ」の機能ぶりだ。戦前の準備、本番中のプレー選択で周りの主軸と手を取りあう。
「僕だけじゃなくて、リーダーシップグループの何人かでチームリードしている。その繋がりもよかった。それをこれからももっとよくして、自分のパフォーマンスももうひとつ、よくしていきたいです」
秋にはタフなカードを控える。
10月25日に東京・国立競技場で好調のオーストラリア代表とぶつかり、渡欧後の現地時間11月1日にはワールドカップ2連覇中の南アフリカ代表と激突する。その後も欧州で光るアイルランド代表、夏に1勝1敗のウェールズ代表、昨春に敗れたジョージア代表という、世界ランクで上回られる国々と敵地で対戦する。
2027年のワールドカップ(W杯)オーストラリア大会に向け重要なこのキャンペーンでも、ディアンズは主将候補だ。大分でのポジション別合宿で空中戦のラインアウトとモールの攻防を入念にチェックした後、険しい道のりを展望した。
「チャレンジャーとしてどれだけできるかが楽しみ。これからものすごいフィジカルな相手が待っている。集中して、PNCでちょっと成長できたフィジカリティを試合で出せるようにしたいです」
確かにPNC決勝では、前回のワールドカップで8強入りした「フライング・フィジアンズ」ことフィジー代表に27―33と接近。国内組主体の隊列でよく耐え、惜敗を悔しがれる領域には達した。戦術の浸透と相まって、わずかずつ自信を育む。
史上初のW杯4強入りへひたすら歩むグループの筆頭格として、次のステージで考えるのは「リベンジ」である。5カ国中2カ国に直接対決して敗れているためだ。
「ウェールズ代表にも夏には1勝できたけど、負けた試合のリベンジという感じで。去年のジョージア代表にも2点差(23―25)で負けているので、リベンジ。全部、チャレンジャーとしてやっていきたいです」
大会後は母国のハリケーンズへ入り、国際リーグのスーパーラグビーに挑む。
ラグビー王国で生まれ、アジアの島国でラグビー選手として成長したさながら逆輸入戦士。「…という感じ」といった当世風の口調が違和感なく響く。
取材・文●向風見也(ラグビーライター)
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