マクラーレンは、F1アメリカGPのスプリントでまさかのダブルリタイアを喫したが、この件は決勝レースを終えてから検証を行なう予定だという。
2週間前のシンガポールGP1周目にランド・ノリスとオスカー・ピアストリが接触した件について、マクラーレンはピアストリに「詳細かつ非常に分析的な」レビューを約束。結果としてノリスは軽い懲戒という形で「影響」を受けることになり、その内容についてはアメリカGPの週末中、パドック内で憶測が飛び交っていた。
状況は大きく異なるとはいえ、アメリカGPのスプリント1周目、ターン1でのインシデントについても、同様のプロセスが繰り返されるだろう。
今回のマルチクラッシュについては、ニコ・ヒュルケンベルグ(アストンマーティン)の動きが主な原因なのか、それともピアストリがカートのような動きでノリスを追い抜こうとしたことが自らの不運を招いたのか、意見が分かれている。サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)のターン1は、コースが混雑している状況でそうした動きが成功しにくい構造になっている。
チーム内部でも意見が分かれており、CEOのザク・ブラウンは当初ヒュルケンベルグを激しく非難したがその後公に撤回したが、その一方でチーム代表のアンドレア・ステラはヒュルケンベルグの「慎重さ」の欠如を嘆き続けている。
ノリスは、スタートの出遅れでターン1で本来よりも積極的になったとはいえ、基本的に無実の当事者である。彼は、チームメイトの1コーナーでの動きとその結末に憤りを感じているかどうかについては、意図的に曖昧な態度をとっている。
スカイ・スポーツ・イタリアから、ピアストリが今後「影響」を受けると予想しているかと問われると、ノリスは「オスカーがぶつかった」「彼のせいではない」と繰り返し答え、この質問を避けた。
同日に行われたFIAの予選後記者会見で、彼は事故についての自身の見解をより具体的に述べるよう求められ、同様に言葉遣いにも慎重に答えた。
「僕たちがチームとして行なうすべてのことと同様に、これは検討されるだろう」
「全てを理解するにはもう少し時間が必要だと思うし、確かに予選直前、そしておそらく明日のレース前も最適なタイミングではない。だから、そうだな、もう少し理解を深めるために見直しが行なわれるだろう」
「でもそれ以外は、まあ、僕にできることはない。ただひたすら自分のやるべきことに集中するだけだ。早い段階でレースを終えることになったのはかなり不運だった」
「そしてそれはレースに向けた準備の面でも痛手だった。だから、確かに厳しい状況だった。でも言うべきことは言ったし、これ以上は付け加えない」
この問題を週末中は棚上げし、週半ば、あるいはメキシコシティGP後に再検討すべき理由がある。損害は取り返せない上、スプリントレースはポイントが少なく、被害は限定的だった。マクラーレンは決勝レースで最大限のポイントを獲得することに集中しなければならない。
「ランドとオスカーとは何度か話し合った」とステラ代表は語った。
「しかし本質的にはリセットのための話し合いだった。レースにおいては、特に予選を控えている状況で、過去に固執しすぎるわけにはいかない」
「つまりリセットを目的とした対話だ。いつものように、適切なタイミングでこのインシデントを検証する。チームとドライバーが協力して行ない、適切な評価を下す」
「これは我々のレース運営方針に基づく対応だ。ランドとオスカーの両名も、このアプローチに満足している」
COTAでのインシデントの経緯は、シンガポールよりも解明が難しいだろう。文字通り、より多くの要素が絡み合っていたからだ。ノリスはスタートの遅れを取り戻すため、ターン1でポジションを主張しようとしていた。ピアストリはそれを許容しつつ、ターン2へ向かう直線で逆転を狙おうとしていた。
ピアストリのカットバック、クロスラインとも言われる動きはレースのこの段階で実行するのは危険だ。なぜなら、そのスペースに誰かが飛び込んでくる可能性が常にあるからだ。今回のケースではフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)がイン側に飛び込んできたため、ヒュルケンベルグも対応を迫られた。
この事故の物理的な事実は議論の余地がない。ヒュルケンベルグは両側から挟まれ、逃げ場を失い、ピアストリを一時的に空中に弾き飛ばし、そこでピアストリはチームメイトのクルマに衝突した。
責任の所在を判断するのはさらに複雑だ。スチュワードは「お咎めなしのレーシングインシデント」だと宣言した。ペナルティを科すには、一方のドライバーが「完全に、あるいは主に責任を負う」必要があるからだ。
前述したように、マクラーレン上層部は当初、ヒュルケンベルグが軽率すぎると同時に、もっと分別のある経験豊富なドライバーであるべきだと主張した。一方、ピアストリの行動がまさにこのような衝突を招くものであるという認識が欠けていたと指摘する見方もある。
現時点でステラ代表はドライバーを擁護している。
「スプリント直後に私が言ったのは、経験豊富なドライバーたち、特に好位置にいるドライバーたちがもう少し慎重さを発揮していれば良かっただろうということだ」
「そして、これが今も私の意見であることを確認できる」
ステラ代表の意見を聞いて、疑問が残る。もしこのインシデントが明らかにヒュルケンベルグの責任だったのなら、なぜ見直しをする必要があるのだろうか。
そして見直しをした結果、ピアストリに責任があると判断された場合、シンガポールGPの責任を問われたノリスのように、何らかの”影響”が生じることはあるのだろうか?

