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「弾道がヤバかった」アシストした佐野海舟が証言! パラグアイ戦で衝撃ミドルを叩き込んだ小川航基が明かす“足を振る”という意識の変化【現地発】

「弾道がヤバかった」アシストした佐野海舟が証言! パラグアイ戦で衝撃ミドルを叩き込んだ小川航基が明かす“足を振る”という意識の変化【現地発】


 パラグアイ戦(2-2の引き分け)の豪快ミドル弾、そしてブラジル戦(3-2の勝利)の歴史的勝利の余韻がまだ少し残るなか、日本代表ストライカーの小川航基(NEC)は10月18日のトゥエンテ戦に先発し、65分間プレーした。「50分と言われていたんですけれど」と予定より15分間長くプレーした彼は62分、味方のクロスに対し「当てれば1点」というタイミングでゴール前に飛び込んだが、かすかにボールをスパイクの爪先に触れるのが精一杯だった。試合は3-3の引き分けに終わった。

 NECはミドルシュートを打つより、チームとして相手を崩し切ることで得点効率を高める戦術を採っている。9節を終えた時点でNECのゴール数は25。これはPSVの27ゴールに次ぐオランダリーグ2位の数字だ。それでも小川は41分、チーム戦術に逆らうかのようにミドルシュートを打ちに行った。

「あの場面、サイドにひとりいた(のでパスを繋げたの)かな、と思うんですけれど、パラグアイ戦で決めたということもあって、『(足を)振る』という意識がありました」

 パラグアイ戦の成功体験が、小川に積極的なミドルシュートを打たせた。
 
 チームメイトのMF佐野航大はパラグアイ戦後、兄である佐野海舟(マインツ)に連絡したという。

「兄ちゃん、(小川のゴールを)アシストしたじゃないですか。後ろから見ていて『弾道がヤバかった』と言ってました。すごかったです」(佐野航大)

 そんな佐野のコメントを紹介すると、小川は言った。 

「キーパーにとって、思ったより無回転だったので弾き切れなかったと思います。あれも僕の得意なパターン。ミドルシュートを決められる自信はあるので。どんどんああいうシーンを作っていければ、“ペナ外”からのシュートも自分のストロングになって、得点パターンが増えると思います」

“代表”で12試合10ゴールという素晴らしいスタッツを残す小川にとって、パラグアイ戦は国内初先発&初ゴールだった。

「小さい時から日本代表の試合をスタジアムに行って見てきて、『こういうところでやれたらな』と思ってました。国内でスタメンとして初めてプレーして点を取れたのは、感慨深いものがありました」
 小川の本職はストライカー。しかし、私はシャドーストライカーへの思いを聞くタイミングを探っていた。それというのも、1年半前の彼とのインタビューを読み直すと、「横浜FCではシャドー気味のポジションでプレーしてたので、CBを背負ってプレーするのは久しぶりです」と答えていたからだ。

「おっしゃる通り、日本にいた時はタイミングで相手を外して、足下でボールを受けて叩いたり、相手との競り合いもやりつつ、いろんなことができるタイプでした。オランダに来て相手を背負ったり、身体をぶつけることが求められるのを感じてます。そういったことが自分の武器になれば、さらに前線に起点になれると思います。この2年でそういう意識を高めてきましたが、まだまだ全然。もっと僕は前線で身体を張らないといけない」

 ここであらためてパラグアイ戦のミドルシュートを振り返ると、小川は最前線から中盤に降りた状態で佐野海舟のパスを引き出し、瞬時のトラップ&ターンから迷うことなく右足を振り切っている。シャドーストライカーに求められる理想的な形だったのではないか?

「選手が前線でバッと切り替えて、トランジションしてガチャガチャってなって、自分のところにボールがこぼれそうだな、という意識はあった。それで相手のプレッシャーが掛からない位置でポジションを取るというのは自然にできた。だから受ける前に確認することもなく、スルッと前に向けました」

 日本代表もNECも、1トップ・2シャドーシステムを採用している。NECのストライカー陣は層が厚く、トゥベンテ戦では塩貝健人に出場機会が訪れなかった。しかし、ディック・スフローダー監督はリスクの高いサッカーを好むので、負けていれば1トップ・2シャドーの形をどんどん崩して、前線に人数を割くはずだから、小川のシャドーストライカーは考えづらい。
 
 日本代表の2シャドーには南野拓実、鎌田大地や、ウイングバックとしても活躍する堂安律、久保建英といった面々がおり、伊東純也をそこに置くこともあった。また、ストライカータイプの町野修斗というオプションもある。

 日本が負けているとする。点を奪いに行きたいけれど、残り時間はあるから1トップ・2シャドーのまま、試合を進めたい。そのとき上田綺世の1トップ、小川のシャドーという形を取れれば、終盤、「上田&小川+1枚」といったスクランブルへの移行など、オプションが膨らむ。

「代表でシャドーをやったことがないので、そのオプションがあるかどうか分からないですけれど、自分はやっぱり前のところでという意識がある。シャドーというよりかは前で。でも意外とシャドーの時のほうが点を取ったりしている。横浜FC時代に、前線のFWが潰れてそこにこぼれてきたボールとか、けっこうシャドーのほうが得点を取ってる気がするんですね」

「自分はやっぱり前で」という発言の後ろには「勝負したい」という小川の本音が隠れている。それがストライカーの持つ矜持なのだ。それに続く言葉は、きっと質問者への気遣いだろう。それでも私はしつこい。恐る恐る、「小川航基のシャドーストライカー」はありか、なしかと尋ねると、彼は続けた。

「2トップだったとしてもシャドーだったとしても、そこまで求められることはそんなに大きくはない。自分がシャドーをできたら、それはプラスでしかない。複数ポジションができることはめちゃくちゃプラスに働くことですので。僕自身、シャドーのほうが点を取っているというのもありますけれど」
 トゥベンテ戦の29分、佐野航大がDFトーマス・アウウェヤンにスルーパスを通し、1-1となる同点ゴールをアシストしたシーンでは、小川が中盤に引いて味方のクリアボールを胸トラップし、ドリブルでテンポを落ち着かせてから佐野にボールを預けた。

「あの場面は、パッと周りが見えた。選手がいてワンタッチで出そうかなと思ったんですが、瞬時の判断でいっぺん、自分のところでキープしようという意識があった。あの位置は確かにシャドーでしたよね」

 横浜FC時代、「自分はシャドーストライカーではなくストライカーシャドーです」という造語を残した小川に、その時の残り香が日本代表とNECでのプレーに漂うことがある。

 ワールドカップの本番では追加招集が難しいことから、大会中に何かアクシデントが起こっても限られたメンバー(前回カタール大会は26名。その前のロシア大会では23名)でやりくりしないといけない。プランをいくつ持っていても、思わぬことで足りなくなってしまうことがある。

 小川の強気な性格はザ・ストライカー。日本代表でもNECでも、このポジションで多くのゴールを記録している。本人がストライカーへの誇りを持っていることも知っている。だから私は声高に叫ぶことなく小声でひっそりと言う。「小川航基にはシャドーストライカーとしての特性があることも、頭の片隅に入れておいてほしい。きっと困った時のオプションになる。その時は本人もひと肌脱ぐぞ」と。
 
 最後に、ブラジル戦の勝利について残した小川のコメントを皆さんにお届けしよう。

「今まで日本が勝ったことのないブラジルに勝ったというのは、みんなにとって喜ばしいことだと個人的には思います。満足するとか満足しないとかの領域の話ではなく、みんなで勝ち取った素晴らしい勝利でした。

 これが自信になるかどうかというのは紙一重のところです。これが本当のブラジルだったのか。もう一回同じやり方をして同じ展開になるのか、分からない。ワールドカップで彼らが国を背負ってやってきて、どれくらいの強度で来るのか。それはまた全然違ったチームになっていると思います。

 日本が5枚で引いたなかを、2点ともワンツーで崩してゴールを取ってくるブラジルは、やはり世界レベルでした。それでも日本のサッカーファミリー、みんなで3点をひっくり返したことが、僕は良かったことだと思います」

“日本のサッカーファミリー”として「練習試合とは言え、ようやくブラジルに勝てる日が来た」という喜びをみんなで噛みしめることができたのは、みんなにとっての素晴らしい成功体験。しかし、いつまでも余韻に浸ることなく、みんなで前へ進んでいきたい。

取材・文●中田 徹
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配信元: SOCCER DIGEST Web

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