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「定年後に農業」は幻想だった──元外務省・佐藤優が語る“60代からの理想的な働き方”

「定年後に農業」は幻想だった──元外務省・佐藤優が語る“60代からの理想的な働き方”

少子高齢化が進む日本において、定年後も働き続ける人が増えている。定年後の人たちは、どのように働けば幸せを感じられるのだろうか? 

定年後の幸せな働き方や時間の使い方、人間関係の再構築、そして老後の選択について『定年後の日本人は世界一の楽園を生きる』より一部抜粋・再構成してお届けする。

定年後の人たちの幸せな働き方とは

仕事に関しても、定年後は、時間の感覚が変わる。仕事に費やす時間については、いかに短時間で目的を達成するか――これが重要になる。一定の時間で、売り上げや利益などの数字を、どれだけ最大化できるか――それが勝負となる。

日本の企業では、やはり現在でも、長時間デスクに座っている人物が評価される傾向がある。しかし、政府が進めている「働き方改革」とも重なるが、定められた時間内で高水準の仕事をこなす「労働生産性」こそが重要なのだ。そして、この労働生産性を上げるためには、最大限に無駄を省くことがポイントとなる。

これを得意とするのが、定年後の人たちだろう。なにせ40年にも及ぶビジネスパーソンとしての経験がある。定年後の人たちは、ビジネスパーソン時代に何らかの組織やチームを率いてきた経験もある。当然、時間の使い方を考えた組織マネジメントもできるはずだ。

そして定年後の人たちは、現在は、役職を求めているわけではない。社会貢献も視野に入れて働くことができる。

かつて若いころは、時間をかけても、とにかくがむしゃらに働くことが結果につながると考えがちだった。しかし組織を率いていく立場になると、広い視野に立ち、無駄を省き、合理的なやり方で仕事を進めていく必要が生まれた。最小限の労力で最大の効果を上げる方法を考えたはずだ。

すなわち、余計なところにエネルギーを使わない、と言ってもいいだろう。こうしたことを実践しながら、若者やスタッフに「仕事術」を伝授していくのが、定年後の人たちの役目である。

2024年発表の総務省の統計では、65歳以上の労働者の75%以上が非正規で働いている。ポジティブに考えると、少子化で人手不足の日本には様々な仕事があり、隙間時間を使っておカネを稼ぐことができる、ということだ。

つまり若者よりも安定した生活基盤のある定年後の人たちは、自分の好きな時間に好きな仕事をチョイスすることができる。そしてそれが、人材育成や地域経済に貢献することになる。なかなか幸せな時間ではないだろうか。

プライベートな時間は優先的に確保

時間の使い方がうまい人……私が知っている人物のなかでは政治家に多かったように思う。実際、一流の政治家は、誰もが時間管理の達人だ。

総理大臣を務められた安倍晋三氏や森喜朗氏、そして、鈴木宗男氏もしかり。彼らは多くの人と会い、膨大な資料を短時間で読み、演説をこなし、かつ家族との時間も大切にしていた。過密なスケジュールに追われながら、意外にも、プライベートな時間を充実させていた。

その時間術のコツは、前もってスケジュール帳にプライベートな予定を書き込んでおくこと。そのうえで仕事のスケジュールを組む。そうしないと仕事に忙殺され、いつまで経っても家族との時間を確保することができない。

たとえば夏休みの家族旅行……何ヵ月も前に宿や飛行機を手配してしまい、「確定」とする。どうしても休まなければならないように縛ってしまうのだ。

あたかも給料から天引きされる財形貯蓄のように、時間も先に確保しておく。そうすると家族との時間が生まれ、実はそれが、仕事へのエネルギーとなって返ってくる。

こうした時間の使い方は、定年後の人たちのほうが採用しやすいだろう。プライベートを優先して、余裕のある時間で仕事をする。仕事のなかで若者たちを指導し、社会貢献をする。なんと素晴らしい毎日だろう。

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