
順調なキャリア、優秀な子どもたち、完璧な家庭生活に彩られた夫婦。そんな“幸せな夫婦”に秘められた競争心と不満が、夫の事業破綻をきっかけに一気に噴出するブラックコメディー映画「ローズ家~崖っぷちの夫婦~」が10月24日(金)に全国公開される。「女王陛下のお気に入り」(2018年)のオリヴィア・コールマンと「ドクター・ストレンジ」(2016年ほか)シリーズのベネディクト・カンバーバッチがW主演を務め、まさに命懸けの夫婦げんかを熱演する。
このほどWEBザテレビジョンでは、10月初旬に行われた「ローズ家~崖っぷちの夫婦~」の公開前トークイベントに登壇したタレント・俳優の小田井涼平と映画コメンテーターのLiLiCoにインタビューを行い、夫婦で仕事をするときの意識についてや夫婦円満の秘訣(ひけつ)、予告映像ナレーションも担当している本作の見どころなどを語ってもらった。
■LiLiCo「家族や友人と感想を語り合いたくなる作品ですね」
――2017年に結婚されて、「いい夫婦 パートナー・オブ・ザ・イヤー2020」にも選ばれている仲良し夫婦のお二人ですが、お二人の視点で本作の見どころを教えてください。
LiLiCo:テンポ感がものすごく良くて、悲しいシーンでもなぜか笑えたりするんです。見終わった後、家族や友人と感想を語り合いたくなる作品ですね。
小田井:いろいろと考えさせられる映画だなと思いました。映画の中で「お互いの好きなところを10個挙げる」というのがあって、僕らも本作のトークイベントでお互いの好きなところを10個挙げたんですけど、あらためて相手のことを考えるきっかけにもなりました(笑)。
LiLiCo:「あ、そういうところを見てるんだ!」って発見もありましたね(笑)。そのイベントでもお話したんですけど、“好きなことが同じ”よりも“嫌いなことが同じ”のほうがうまくいくんです。例えば、何かに対して不満に思っていたときに、パートナーが「これ嫌だよね」って言ってくれると、「やっぱりそうなんだ」とか「私もそう思ってた!」と共感できるんです。もちろん共通の趣味があって楽しむのもいいんですけど、パートナーの「これは嫌だな」って思っていることを知ってたり、共感できたりするとよりいいんじゃないかなと。夫婦円満の秘訣と言ってもいいかもしれません。
小田井:趣味とか、そういうのは同じじゃなくてもいいなっていうのは僕も同じ考えですね。
LiLiCo:お互いの趣味が違うと、興味の幅が広がったりするんです。私もLEGOとか詳しくなかったけど、「そういうのもあるんだ!」って知ったり、魚もあまり知らないけど、どんどん買ってくるから、面倒を見ようと思っていたら、詳しくなりました。
小田井:結婚したときに“晩婚”って言われましたけど、僕の中で“結婚する”ということに重きを置いて生きてこなかったんです。言い方は変ですけど、“いい年”になってから結婚しているので、それぞれの価値観をそこからすり合わせていくというのは無理やなって思っていました。譲れるところは譲り合いながら、これまで生きてきたように生きていくのが自然なのかなって思ったんです。今さら好みは変わらないですからね。そういう意味では、同じような考えのパートナーと巡り会えたわけですし、僕の場合は性格的にも晩婚でよかったんちゃうかなって(笑)。
――例えば20代とかで結婚したケースとは違いますよね。
小田井:20代だと学生から社会人になって、働き始めると人間関係もどんどん変わっていきますよね。仕事周りの人たちが増えたり、友人も変わったり。転職すると環境が変わって、関わる人たちもまた変わって。その間に結婚してお子さんが産まれたりすると、家族で困難に立ち向かっていけたりするんだと思うんです。でも、僕の場合は、サラリーマンも5年ぐらいやっていましたし、そういうことを全部経験した上で結婚したので、それぞれの歩んできた道を受け入れながら、共に前に進んでいけると思ったし、それが結婚する意味なんかなって。
LiLiCo:私も同じ気持ちでした。でも、最初の頃はちょっと頑張っちゃって合わせようとしたこともあったんです。今は、仕事で最終の新幹線で帰ってくるんだったら晩御飯は別々に食べようって感じなんですけど、帰ってきてからも一緒に食べようとか思って、お互い8kgくらい体重が増えたこともあって(笑)。お互いに良かれと思ってやっていたんですけど、「いや、そういうことじゃないな」って思ってやめました(笑)。なので、その後は2人ともすごく自然体ですね。

■小田井「純烈にいた頃と僕の役割は変わってない」
――本作のトークイベントだったり、過去に「東京コミコン」でご一緒に登壇されたりもしていますが、ご夫婦でお仕事されるというのはどういう感覚ですか?
LiLiCo:2人で呼んでいただけるのはありがたいなって思いますね。「東京コミコン」の場合は、MCとかを担当させてもらったりしたんですけど、2人で一緒のステージでトークするというのはそんなに多くなくて。今回のトークイベントは結構新鮮な気持ちでした。
――普段と違う一面が見えましたか?
LiLiCo:そうですね。こういうふうに話すんだなぁ~って思ったりもしました。
小田井:そうは言っても、純烈にいた頃に取材を受けているときと、この2人で取材を受けているときと、基本的には僕の役割は変わってないと思うんですよ。
――と、言いますと?
小田井:純烈のときはリーダー(酒井一圭)がバーっと喋って、足りていないところがあったら僕が補足して、「話が締まってないな」って思ったら締めるみたいな役割をずっとやってきたんです。純烈でのインタビューでは、僕は最後のほうになるまであまり喋らなかったと思うんですよ。自然と役割が決まってきたという感じがあったのでバランスを取って喋っていた感じでした。
LiLiCo:私は、純烈のショーはファンの皆さんの空間だから見たことがなかったんですけど、ステージでもそういうふうに役割があったんでしょうね。取材でもそういうふうに考えて話してたというのは今初めて知りました。トークイベントでも私に喋らせてくれて、バランス取ってくれてたのかな…ありがとう(笑)。

■小田井、“ローズ家”は「日本人的な仕事の描き方だなって…」
――トークイベントでのお二人のトークも楽しく聞かせてもらいましたが、この映画も“夫婦”の関係性、やりとりが大きな見どころという感じですよね。
LiLiCo:そうですね。ちょっとしたことでギクシャクしたり、イライラしたりすることってどの夫婦にもあると思いますし、仕事でうまくいった、うまくいかなかったということでも夫婦の関係性というかバランスが崩れることもあると思います。リアリティーはありますよね。
小田井:ケンカのところはエンターテインメントって感じで誇張してるけど(笑)。
LiLiCo:まぁね。銃を持ち出したりすることはないので(笑)。
小田井:この作品を見てて思ったのは、夫婦ともにお仕事をされてるじゃないですか。すごく日本人的な仕事の描き方だなって感じました。僕はLiLiCoと結婚して、「海外の方って、家族をすごく大事にされてるから、仕事をやっていても、どちらかというと家族を優先にする」っていうイメージがありました。でも、この作品では、仕事を優先されていく感じで話が進んでいくからとっても日本的だなぁって。
LiLiCo:あ、それ、私も思った!
小田井:だから日本人の僕らが見たときに「仕事をやり過ぎると家庭が壊れる」っていうのはまさにこのことなんやなって。お仕事をすごく大事にされている方が見たらすごく共感するんじゃないかなって思いました。
LiLiCo:うんうん。外国の作品なのに、その部分は日本的だなって私も思いました。
小田井:本当に脚本がすごくよくできているなって思うんです。リアリティーがあるし、日本的だなって思うところもあるし。あとは、予想できないラストが…(笑)。
LiLiCo:やっぱりラストだよね。ネタバレできないので詳しくは話せないんですけど、試写会で見たときに「えぇっ!」ってびっくりしました(笑)。最後の最後までしっかり見ていただいて、最初にも言いましたけど、見た人と語り合ってください。
小田井:見た人それぞれがどう感じたのか、話したり聞いたりするのも面白いやろうなって思える作品です。
◆取材・文=田中隆信

