最新エンタメ情報が満載! Merkystyle マーキースタイル
大舞台でプロ初勝利を挙げた園部八奏。「大きくズドンと構えていた方がいい」17歳が示した大器の片りん<SMASH>

大舞台でプロ初勝利を挙げた園部八奏。「大きくズドンと構えていた方がいい」17歳が示した大器の片りん<SMASH>

屋根の閉じた有明コロシアムに快音轟かせ、強打が次々にコートをえぐった。

 大きなテイクバックから、長い左腕を身体に巻きつけ振り抜くと、黄色いボールは相手のラケットに触れることなく、後方のフェンスを叩く。

「今年の全豪オープンジュニアを制した17歳とは、どれほどの選手か」と見守る観客たちに、名刺代わりの豪快プレーを披露。約2週間前にプロ転向を果たした園部八奏(そのべわかな)が、日本テニスの聖地・有明で開催中の女子ツアー「東レ パンパシフィックオープン」(WTA500)にて、プロ初勝利を手にした。

 園部が『プロテニスプレーヤー』の肩書きを背負いコートに立つのは、先週の「ジャパンオープン」が初めて。しかも初戦の相手は、大坂なおみだった。自身を「肝が据わっている」と評していた彼女が、「ものすごく緊張した」がゆえの、0-6、4-6の敗戦。試合後には「できることなら、やり直したい」と唇を噛むほどに、悔いを募らせたプロデビュー戦だった。

 その苦い思いを繰り返さないためにも、この1週間は、「立ち上がりから足を動かし、エネルギーを出す」ことに力点を置き練習を重ねてきたという。
  そして迎えた、今大会――相手のニコラ・バルトゥンコワは、世界132位の19歳。この半年間で、400位近くランキングを駆け上がってきた、こちらも勢いある新鋭だ。

 その立ち上がり、263位の園部は自身のサービスゲームを失う。ゲームポイントが3本ありながら許したブレークは、精神的ショックも大きいかに思われた。

 だが園部の胸中、そしてその後のプレーは、1週間前とは大きく異なる。

「自分のプレーは、悪くない。ちゃんとエネルギーも出せている。先週よりもずっと良い」

 その手応えと前向きな姿勢は、伸びやかなプレーに、そしてスコアにも反映されていく。ゲームカウント2-4でのサービスゲームを、6度のデュースの末にキープ。そうして続くゲームでは、デュースから2連続ウイナーでブレークをもぎ取った。

 特にデュースからのポイントは、リターンを深く鋭く打ち返し、返球を迷わずバックでダウンザラインへと叩き込む。「相手のセカンドサーブの時は、強気でポイントを取りに行こうと決めていた」という決意を、清々しいまでに貫いた。
  この試合だけではないが、園部はリターンでポジションを上げ、相手がサービスを打つより先にコースを読み切ったかのように動いていることが多い。園部いわく、「緊張した場面だと、みんなサーブをバックに集めがち」。そこで「相手の気持ち、ここに打ちたいんだろうなっていうのを考えて動いてました」という。

 その読みが当たったのは、「半分くらいかな」と本人は笑うが、相手にしてみれば、当たった時のリターンの威力を思えば驚異だ。

 第1セットの最後に相手が犯した連続ダブルフォールトも、かけ続けた圧力により、園部が奪ったポイントだ。

 一度つかんだ流れと勢いを、17歳は手放さない。第2セットも3ゲーム連取でリード。その後、ブレークの危機に面しもしたが、コート上の佇まいは堂々たるもの。自身が主導権を掌握していることを、観客に、そして相手にも示すようだった。

 最終スコアは、6-4、6-3。勝利の瞬間には、明るく無邪気な笑みが爆ぜた。
  先に「プロ転向初勝利」と記したが、プロの大会はすでに数多く経験済み。今年2月には、東レPPOと同グレードの「アブダビオープン」に予選から参戦し、本戦2回戦まで進出。トップ100選手相手にも、3つの白星を勝ち取っている。4月末には、ここ有明コロシアム開催の「安藤証券オープン」(下部ツアーのITF W100)に出場し、5連勝で優勝トロフィーも手にしている。

 その後は早期敗退が続く時期もあったが、本人は「自分のプレー的にも、めっちゃ波がある方」と、どこか客観的かつ泰然自若と構える。

「全部優勝する気で挑んでいるけれど、それで全部勝てるわけないし。ある程度は、大きく、ズドンと構えていた方が良いのかなと思っています」

 プロ転向直後には、そんな心構えを語っていた。
 
 その言葉通り、大舞台で手にした大きな勝利。波に飛び乗った大器の勢いは、ここからさらに加速するかもしれない。

取材・文●内田暁

【画像】「東レ パン パシフィック オープン2025」大会2日目厳選PHOTO/園部八奏がプロ転向後初勝利を挙げる

【関連記事】国内女子最高峰「東レPPOテニス2025」開幕!日本期待の園部八奏と内島萌夏による初コンビも登場<SMASH>

【関連記事】プロデビュー戦の園部八奏を跳ね返した大坂なおみの老練さ。「隣で練習している彼女を見た」だけで立てた作戦がハマる<SMASH>
配信元: THE DIGEST

あなたにおすすめ