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【揺れる大学サッカー界|後編】シーズン移行のJリーグに示した総意。主力流出の抑止力が必要、金銭的な補償を提案

【揺れる大学サッカー界|後編】シーズン移行のJリーグに示した総意。主力流出の抑止力が必要、金銭的な補償を提案


 2024年12月19日、Jリーグのシーズン移行の実施が正式に発表された。

 その要旨は「2026年8月1週ごろに開幕。12月2週ごろから2027年2月3週ごろまでウインターブレークとし、2027年5月最終週ごろに閉幕する。シーズン移行の実施に向けて、残された課題については継続検討していく」というものだった。

 これを受ける形で、(一財)全日本大学サッカー連盟ではワーキンググループを設置。Jリーグのシーズン移行に伴う諸問題について議論を重ねてきた。同グループのメンバーは、大学サッカー界をけん引する関東と関西の2大リーグの指導者をはじめ、Jクラブに籍を置きながら大学のサッカー部監督を務める方、連盟監事であり、弁護士資格を持つ方など、多様な視点からディスカッションできる人材をそろえた。

(一財)全日本大学サッカー連盟および(一財)関東大学サッカー連盟の理事長を兼務し、流通経済大の監督でもある中野雄二が、ここまでの経過を次のように語る。

「Jリーグのシーズン移行に伴い、大学サッカー界が今後どのような影響を受けるのか、まずはワーキンググループのなかで、いろいろ検討しました。それをもって、今年8月の理事会にかけ、疑問点や質問、修正点などがあれば、さらに議論を深め、9月の理事会で大学側の総意としてまとめました。きちんと手順を踏みながら、有意義な話し合いができたのは良かったです。大学側の主張というか、要望・提案を、どこまで受け入れてくれるか、分かりませんが、こちらの総意をJリーグ側に伝えて検討してもらうことに意義があると考えています」
 
 立場が違えば、考え方も異なる。受け入れるべきところは受け入れ、主張すべきところは主張していく。創設30年を超え、新たな改革に乗り出すJリーグと、日本サッカー界の底上げに貢献を果たしてきたという自負のある大学サッカー界。双方の事情や考え方を共有し、すり合わせながら、より良い着地点を探ろうとしている。

 大学側の総意とは、一体何だろうか。そのひとつが、年間スケジュールに関する基本的な方針だった。

 来季から“秋春制”に移行するJリーグは8月に開幕し、2027年5月に閉幕予定だが、日本の教育制度は4月に始まり、3月に終わる。この日程的なズレを、どうとらえるか。中野理事長が、こう明言する。

「Jリーグにつながる日本フットボールリーグ(JFL)やその下のカテゴリーである地域リーグ、都道府県リーグは昇格、降格が絡んでくるので、Jリーグのシーズン移行に日程を合わせると聞いています。ですが、大学側としては来年度も従来どおりにやっていくことにしました」

 現在、大学サッカー界では北海道から九州までを9つの地域に分け、リーグ戦を行ない、2つの全国大会を実施している。各地域で、いわゆるサテライトリーグに相当するインディペンデンスリーグも開催。都道府県単位のリーグ戦などを含め、学生主体となって年間スケジュールが管理・運営されている。また、昨今の温暖化の影響を考慮し、真夏の約1か月間は公式戦を入れないという暑熱対策にも取り組む。

 こうした事情のなかで、Jリーグのシーズン移行に合わせるのは難しく、「従来どおり」という結論に至った。中野理事長は「将来、どうなるか、分かりません」と柔軟な姿勢を残しつつも、「海外のように9月ごろに新学期が始まるとか、日本の教育制度がガラリと変わらない限り、大学の年間スケジュールの変更は現実的ではないでしょう」と、付け加えた。
 
 そして、もうひとつの懸念は、主力流出の問題だった。プロ内定の選手たちが次々に前倒しでJクラブに進んでしまったら、各大学の戦力ダウンはもとより、ひいては大学サッカー界全体の競争力の低下をも招きかねない。「あくまでも要望・提案の段階」と前置きしながら、次のような具体策を打ち明けた。

「選手たちには職業選択の自由があるので、サッカー部を退部してプロに行きたいと言われたら、大学側は引き留めることができません。私たちとしては正直、葛藤がありますが、それはともかく何らかの抑止策が必要でしょう。そこで、Jクラブが前倒しで選手を獲得する際は、金銭的な補償を伴うというのを制度化できないかと伝えました。いわゆるローカルルールですが、これによって多少なりとも主力の流出が抑えられるのでは、と考えています」

 現在、アマチュアの選手がプロクラブと契約する際、在籍していたチームに獲得クラブからトレーニング補償金が支払われている。これは国際ルールとして定められている制度だが、「それとは別途、金銭的な条件を設けられないか」というわけだ。

「今はまだJリーグ側に伝えた段階で、実際に制度化できるのか、制度化できたとしても補償金をいくらに設定するのか、解決しなければいけない問題がたくさんあります。J1からJ3までの60クラブによって受け止め方も違うでしょう。どのような結論になるか、まったく分かりませんが、Jリーグのなかで議論してもらうことが何より大切だと考えています」
 
 これまでに前倒ししてJクラブに進んだ選手がいないわけではない。上田綺世(元・法政大)や長友佑都(元・明治大)、武藤嘉紀(元・慶応大)など、大学のサッカー部を退部し、Jクラブや海外クラブ、そして日本代表と活躍の場を広げた選手たちがいる。近年は、卒業を待たず、Jクラブどころか、いきなり海外に新天地を求める選手も少なくない。

 一方で、三笘薫(元・筑波大)、伊東純也(元・神奈川大)、守田英正(元・流経大)、相馬勇紀(元・早稲田大)、旗手怜央(元・順天大)など、名を挙げていったらきりがないが、大学4年間を過ごしてからJクラブに進み、海外クラブ、日本代表へと羽ばたく選手もいる。

 選手にとって、どのような道を選択するのが、最善なのか。

 流経大のサッカー部監督であり、スポーツ健康科学部の教授でもあり、これまで多くの選手たちを見てきた中野理事長であっても「その答えは非常に難しいですね」と苦笑しつつ、こう言葉をつなぐ。

「小さいころからプロになりたいと思いながらサッカーに取り組んできて、実際にJクラブからオファーを受けて、その夢が叶うとなったら、少しでも早くプロの世界に飛び込みたい。そういう選手たちの気持ちも分からないではありません。ただ、大学4年生というのは、ピッチ内外でいろいろな責任を負いながら過ごすので、選手としてだけではなく、人としてもすごく成長できる時期です。やはり大学での4年間をまっとうしてほしいなとは感じますね」

 大学サッカー界はそもそもプロの養成機関ではなく、あくまでも社会に役立つ人材育成が理念だ。とはいえ、高い競争力のなかで、切磋琢磨しながら、毎年、数多くのプロ選手を輩出しているのもまた事実だ。

 Jリーグのシーズン移行に伴い、大きな分岐点にある大学サッカー界が、今後もこうした役割を果たしていくのか。世界的にあまり例を見ない独自のサッカー文化を育んでいくのか。その答えは5年後、10年後にあるのだろう(このシリーズ了)。

取材・文●小室功(オフィス・プリマベーラ)

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配信元: SOCCER DIGEST Web

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