
柳井嵩役の北村匠海さん(2020年11月、時事通信フォト)
【画像】え、「すげえミュージカルだな」 こちらが22歳で売れっ子、『怪傑アンパンマン』でやなせたかしがモデルのキャラを演じていた超有名声優です
『あんぱん』ファン必見のエピソード「ジャムおじさんとあんぱんまん」
連続テレビ小説『あんぱん』(NHK)は、『アンパンマン』の作者、やなせたかしさんと妻の暢(のぶ)さんの人生をモデルにした物語です。第25週ではミュージカル『怪傑アンパンマン』が上演される模様が描かれました。
『怪傑アンパンマン』は、やなせさんをモデルにした売れない漫画家の「ヤルセ・ナカス(演:西山潤)」が登場するところから始まります。1976年7月20日に初上演されたとき、このヤルセ・ナカス役を演じていたのは、中学3年生のときに演じたアニメ『巨人の星』の「星飛雄馬」役として広く名が知られていた声優の古谷徹さん(初演時22歳)です。『機動戦士ガンダム』の「アムロ・レイ」など、さまざまなキャラの声を担当したことでも知られています。
「いせたくや(演:大森元貴)」のモデルとなった作曲家、いずみたくさんが設立した会社オールスタッフの公式サイトでは、いきいきとヤルセ・ナカスを演じる若き日の古谷さんの姿を見ることができます。
古谷さんとやなせさんの縁は、『怪傑アンパンマン』では終わりません。その後、アニメ化された『それいけ!アンパンマン』では「チョコレートマン」のほかに、重要な役柄を演じていました。それが「ポエムさん」です。
ポエムさんは『それいけ!アンパンマン』放送開始35周年を記念して、2023年に放送された特別エピソード「ジャムおじさんとアンパンマン」に登場したキャラクターです。この回では、「ジャムおじさん」の少年時代が描かれました。
パンを焼くようになったきっかけを尋ねられたジャムおじさんは、子供の頃の思い出を語ります。ある日、彼は遠くの街へ出かけたものの、お弁当を忘れてしまい、空腹のまま夜道をひとりで歩いていました。
彼が思わず涙を流したとき、空に流れ星が輝いて集まり、手のひらの上でアンパンになります。そのアンパンを食べたとき、ジャムおじさんはお腹がすいてひもじい思いをしている人にパンを届けたいと思い、パン作りを決心したというのです。
これは、やなせさんが書籍『熱血メルヘン怪傑アンパンマン』(サンリオ)に書いたエピソードを元にしています。幼かったやなせさんは遠くの街へ行ったとき、財布を落としてしまい、ひもじい思いをしていた際、偶然出会った友人とそのお母さんに助けてもらいました。そのときに食べさせてもらったのが、アンパンだったのです。
一方、アンパンマンはお腹が空いた人たちに自分の頭を分け与えて助け続けていました。その途中で出会ったのが、ポエムさんです。ポエムさんは帽子を深く被っていますが、このデザインはやなせさんが自分自身を投影して描いたマンガ『ボオ氏』を元にしています。
詩を書くのが好きで、詩を書くために生まれたというポエムさんは、アンパンマンにこう尋ねます。
「君は何のために生まれたの? 何が君の幸せ? 何をしたら喜ぶ?」
アンパンマンは「僕はお腹が空いて困っている人を助けるために生まれてきました。だから、ひもじい人に食べてもらうことがいちばんうれしいんです」と明るく答えます。
その後アンパンマンは、「カレーパンマン」と「しょくぱんまん」が用意したお昼ごはんを奪い、さらにジャムおじさんのパン工場を襲撃した欲深い「ばいきんまん」と戦い、声優陣による「アンパンマンのマーチ」の合唱に後押しされて、みごと勝利しました。
ラストでは、砂漠で倒れている旅人にアンパンマンが頭を分け与え、飛び去っていくところにポエムさんのモノローグが被さります。
「忘れないで、夢を。こぼさないで、涙。だから君は飛ぶんだ、どこまでも」
この旅人は、絵本『あんぱんまん』に登場した旅人と同じデザインでした。「ジャムおじさんとアンパンマン」が放送された2023年は、1973年に出版された絵本『あんぱんまん』の50周年でもあったのです。
「ジャムおじさんとアンパンマン」は、『アンパンマン』に込めた、やなせさんのメッセージがすべて詰まった感動的なエピソードでした。『あんぱん』ファンなら必見でしょう。
古谷さんはヤルセ・ナカスとポエムさんという、やなせさんの分身のようなキャラクターを二度演じたことになります。その後、ポエムさんは1700話放送記念スペシャル「ポエムさんとベンチさん」にも登場しましたが、このときは三ツ矢雄二さんが演じていました。
