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『あんぱん』は成功者の物語だから安心? 売れずに終わる劇場版『ゲゲゲの女房』の衝撃

『あんぱん』は成功者の物語だから安心? 売れずに終わる劇場版『ゲゲゲの女房』の衝撃

水木しげる夫婦を描いた『ゲゲゲの女房』も成功者の物語だが…?

 漫画家夫婦をモデルにした朝ドラのヒット作として、2010年に放映された『ゲゲゲの女房』を覚えている人も多いのではないでしょうか。『ゲゲゲの鬼太郎』の作者・水木しげる役を向井理さん、妻を松下奈緒さんが演じ、ふたりとも『ゲゲゲの女房』がきっかけで売れっ子俳優となっています。

 水木しげるさんも遅咲きの漫画家として有名です。戦争で片腕を失っていた水木さんは、漫画家になったものの、満足にお米を買えず、茶色になって売れなくなったバナナを好んで食べていました。「貧乏でも死にはせん」と笑い飛ばしていたそうです。

 貸本マンガを描いていた頃は小さな出版社が次々と倒産し、原稿料がもらえないことが続きました。大手出版社である講談社の「週刊少年マガジン」で『ゲゲゲの鬼太郎』が連載され、1968年にTVアニメ化され、ようやく安定した生活を送れるようになったそうです。

 妻の武良布枝さんが執筆した同名エッセイを原作にした朝ドラ『ゲゲゲの女房』でも、ふたりのビンボー生活が描かれましたが、視聴者は「最終的には成功する」ことを知っていたから安心して視聴できていたように思います。

劇場版『ゲゲゲの女房』には厳しいコメントが?

 朝ドラ『ゲゲゲの女房』も好評のうちに2010年9月に最終回を迎えましたが、同年11月に劇場版『ゲゲゲの女房』が公開されたことはご存知でしょうか? 劇場版は、吹石一恵さん、宮藤官九郎さんが水木夫妻を演じ、市川準監督の『トキワ荘の青春』(1996年)で安孫子素雄役を演じた鈴木卓爾さんが監督を務めています。企画自体は朝ドラ版よりも早かったそうです。

 半年間にわたって放映された朝ドラ版に比べ、劇場版は上映時間119分でした。そのため、水木夫妻が見合い結婚し、東京で新婚生活を送り、長女が生まれるまでが描かれています。経済的には、最初から最後までビンボーなままです。朝ドラ版を観ていた人は「えっ、ビンボーなまま終わるの?」という驚きがあったようです。

 子供にウケない、と酷評されながら茂(演:宮藤官九郎)は妖怪マンガを描き続けます。締め切り前夜は、妻の布枝(演:吹石一恵)も懸命にベタ塗りを手伝います。恋愛感情がないまま結婚したふたりが、『ゲゲゲの鬼太郎』の原型となる『墓場鬼太郎』を仕上げることで心を通い合わせる様子が丁寧に描かれています。

 ネット上では「地味で退屈」「売れるまで描いてほしかった」などの厳しいコメントが目立つ劇場版『ゲゲゲの女房』ですが、創作を生業とする夫婦の苦悩と喜びを、当事者に近い視点からリアルに描いた作品だったと思います。その人の人生が成功だったのかどうかは、その人がその生涯を終えるまで分からないわけですから。

 水木しげるさんは40歳を過ぎてブレイクしましたが、やなせたかしさんの『アンパンマン』がアニメ化されたのは69歳になってからです。『ゲゲゲの女房』以上に『あんぱん』は、高齢化が進む現代社会に適した朝ドラなのかもしれません。

 アニメ『それいけ!アンパンマン』で大成功を収めるやなせさんですが、その成功と前後していちばん大切なものを失うことになります。脚本家の中園さんはこのエピソードをどう描くのか、主演の今田さんと北村さんはどう演じるのか。最終章の大きな見どころとなりそうです。

配信元: マグミクス

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