
健太郎役の高橋文哉さんの2024年卓上カレンダー『FUMIYA TAKAHASHI 2024 CALENDAR』(幻冬舎)
【画像】え…っ? 「めっちゃ美人やん」 こちらがやなせたかしさんが「一目ぼれ」し「ドキンちゃんのモデル」とも言われる実際の妻・暢さんの若き日です
やなせさんが一番思い入れあるのはカレー?
『アンパンマン』の作者、やなせたかしさんとその妻の暢さんをモデルにした2025年前期のNHK連続テレビ小説『あんぱん』は、各登場人物に『アンパンマン』に出てくるキャラクターが反映されていることが、脚本の中園ミホさんへの各種インタビューで明かされています。たとえば主人公「柳井のぶ(演:今田美桜)」は「ドキンちゃん」、パン職人「屋村草吉(演:阿部サダヲ)」は「ジャムおじさん」です。
どの人物がどのアンパンマンキャラなのか、考察しながらドラマを観ている方も多いでしょう。そのなかでも、特に分かりやすいのは、「柳井嵩(演:北村匠海)」の親友で義理の弟でもある「辛島健太郎(演:高橋文哉)」です。彼は名前に「辛」と入っているうえに、ドラマ内で何度もカレーを食べています。
ドラマのガイドブックなどでは特に明言されていませんが、健太郎のモデルは「アンパンマン」と一緒に戦うヒーローのひとり「カレーパンマン」で間違いないでしょう。最新の124話では、健太郎がミュージカル『怪傑アンパンマン』の現場で、公演が終わったらみんなにカレーを作ってごちそうすると提案したことも話題になりました。
カレーパンマンの初登場は、1981年発売の絵本『あんぱんまんのサンタクロース』(フレーベル館)です。『あんぱん』は1976年まで物語が進んでおり、次週のどこかで嵩が健太郎をイメージしたカレーパンマンを考案する、という展開も考えられます。
やなせさんが身近な誰かをモデルにしてカレーパンマンを考えた、という記録はありませんが、実はやなせさんは「カレー」に関して相当な思い入れがあったようです。書籍『アンパンマン伝説』(フレーベル館)では、やなせさんは絵本シリーズを描くなかで、「しょくぱんまん」の次にカレーパンマンを思い付いたときのことを振り返っています。
やなせさんは座骨神経痛になっていた時期があり、とある整体院に通っていました。毎週通院するなかで、週に一度は食べるほど「カレー大好き人間」だったというやなせさんは、整体院の近所にあったパン屋でカレーパンを食べてみたそうです。
そのカレーパン自体はカサカサしていてあまり美味しくなかったそうですが、のちに飛躍的に美味しいものが増えてきたカレーパンに感心したやなせさんは、カレーパンマンを思い付きます。アンパン、しょくぱん、カレーパンという定番の人気パンがそろったメインヒーローに関して、やなせさんは
「クリームパンはなんか弱そうだし、チョコレートパンもお菓子っぽくて、トリオを組むには頼りない。やはり、アンパン、しょくぱん、カレーパンの三銃士トリオでよかったと思っている」
と語っていました。
やなせさんは戦前に旧制東京高等工芸学校で学んでいたときも、よく学食のカレーを仲間と分けながら食べていたそうで、『アンパンマン伝説』では「カレーパンマンを登場させたのは やはりぼくのノスタルジア」「ひりりとからいヒーローは 昔の夢をつれてくる」と、詩を綴っています。
さらに、やなせさんは「名もなく貧しく恋もなくなんにもなかった孤独な日々 カレーはぼくの友だちだった」「主役ではないにしても いないとさびしいカレーパンマン」と、カレーとカレーパンマンへの強い思い入れを語っていました。
美学校時代に始まり、軍隊、戦後まもなくの高知の闇市、上京後までずっと嵩のそばにいて恋も応援してくれた健太郎は、まさに「いないとさびしい」存在といえるでしょう。カレーパンマン誕生のエピソードも盛り上がりそうです。
