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不振続くバニャイヤに、ドゥカティができることはもうない? 2度のMotoGP王者の復活は「本人次第」なのか

不振続くバニャイヤに、ドゥカティができることはもうない? 2度のMotoGP王者の復活は「本人次第」なのか

2度のMotoGP最高峰クラス王者であり、ドゥカティ史上最も成功したライダーであるフランチェスコ・バニャイヤ。彼は現在不振に陥っており、先日ミサノで行なわれたサンマリノGPも惨憺たる結果に終わった。そんな彼の自信喪失は、バイクではなく彼自身に問題があると指摘されている。

 バニャイヤの現在の苦境には、彼の穏やかな人柄も手伝って、VR46アカデミーの同胞だけでなく、ライバルでチームメイトのマルク・マルケスからも同情の声が寄せられている。

 マルケスはサンマリノGPで今季11勝目を挙げ、日本GPでの7度目のMotoGPタイトル獲得決定に王手をかけている。6年ぶりの戴冠となれば、キャリアを脅かした腕の大怪我と4度の手術を経ての歴史的なカムバックとなる。

 そんな復活を遂げるマルケスとは対照的に、チームメイトのバニャイヤは絶望の淵に立たされている。母国イタリアの観客の前でスプリント、決勝ともに1ポイントも獲得できず、フランスのル・マンに続く今季2度目のノーポイントに終わった。パドックの関係者、ファン、そしてドゥカティ首脳陣までもが「バニャイヤに何が起きているのか?」と疑問を抱えている。

 その答えは彼自身にしか分からない——。motorsport.comにそう話したのは、とあるドゥカティ関係者だ。彼はこう続ける。

「我々も助けたいが、彼がそれを受け入れなければならない。彼がドゥカティ勢の最下位であってはならない。ペッコ(バニャイヤ)はそんなレベルではない」

「問題はマルケスに負けていることではない。むしろ他のライダーたちに安定感で劣っていることが深刻なのだ」

 motorsport.comが把握したところによると、ドゥカティはデスモセディチGP25を徹底的に解析したが、バニャイヤがシーズン序盤から訴えている自信喪失の原因となるメカニカルな問題は見つからなかった。それでも彼らはチームのイメージを損なうことを承知で表向きは彼を守り、不満を公然と受け入れる姿勢を取っている。

 しかしミサノでのバニャイヤはどん底だった。予選で8番手に終わると、スプリントでは13位に後退。たった13周のレースながら、優勝したマルコ・ベッツェッキ(アプリリア)から16秒以上離された。バニャイヤは「僕は悪夢の中にいる。僕を(1周)1.5秒遅くしている何かがあるはずだ」と語り、これまでも口にしてきたように「我慢の限界」だと嘆いた。

 日曜の決勝レースでは8番手走行中の8周目に転倒。ドゥカティはレース後、彼をプレスから遠ざけ、義務的に短いレース後コメントを出すに留めた。そしてレース終了から5時間が経った19時5分、彼を励まそうとするケーシー・ストーナーと語り合った後、ガレージを去った。

 バニャイヤが最後に表彰台に乗ったのは、夏休み前の7月に行なわれたザクセンリンクでのドイツGPまで遡る。それ以降の5戦でわずか40点しか積み上げられなかったのに対し、ポイントリーダーのマルケスは168点を稼いでいる。この失速を止められなければ、現在ランキング3番手のバニャイヤは8点差に迫っているベッツェッキだけでなく、49点差のペドロ・アコスタ(KTM)に追い抜かれてもおかしくない。

 ドゥカティは表向きはバニャイヤ本人と原因究明に取り組んでいるとされる。ドゥカティを2度のチャンピオンに導き、グランプリ通算30勝を挙げてきた彼のポテンシャルを妨げているものを探っていると。しかしながら舞台裏では、その原因はパーツやセットアップではなく、バニャイアの心構えにあるとの結論に達している。ドゥカティのエンジニアの誰もが、彼のスランプを引き起こした技術的要因を見つけ出せないとは考えづらい。

 バニャイヤはメンタルトレーナーのサポートを受けることを選ばず、ドゥカティは「走ること自体を療法にせよ」と助言している。そんな中でサンマリノGP翌日に行なわれたテストでは、前日にクラッシュしたマシンに再び跨り、タイムを一気に1秒縮めて6番手に入り、マルケスを上回った。その間、ストーナーが常に寄り添い、アドバイスやセットアップの提案を与えていた。現クルーチーフのクリスチャン・ガバリーニはストーナーの2度の王座を支えたエンジニアでもあり、意思疎通はスムーズだ。

「ケーシーには常にそばにいてほしい。でもそれが無理なのは分かっているから、チャンスがある時は最大限に活かそうとしている」とバニャイヤは言う。このように、ストーナーのような存在に頼ることは確かに救いになるかもしれないが、それは同時に、ドゥカティとしては手を尽くしたが、もう手札は残っていないことを暗に示している。

 来季に向けたライダー市場が近年稀に見る活発さを見せる中、ドゥカティはまもなくファクトリーチームの理想的なラインアップを決断しなければならない。マルケスとの契約更新が最優先事項となる一方で、バニャイヤの未来は彼自身が復調できるかどうかにかかっている。それがGP25であれ、GP26であれ、極端な話スクーターであっても、速く走らせる力が必要だ。

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