
「まだスタートラインに立っただけ」広島ユース10番がトップ昇格内定。滲み出る危機感と覚悟。U-17W杯にも気を引き締める
10月18日、サンフレッチェ広島ユースの10番であるMF小林志紋の来季からのトップ昇格内定が発表された。
翌19日、小林はプレミアリーグEAST第18節・名古屋グランパスU-18戦のピッチに立った。1位のヴィッセル神戸U-18、2位のサガン鳥栖U-18に次いで3位の広島ユースにとって、前日に神戸U-18が静岡学園に敗れたことで、勝点差を縮めるためにも落とせない一戦。この重要な試合で背番号10が眩いばかりの輝きを放った。
【3-4-2-1】の左インサイドハーフに入った小林は、持ち前の運動量と俊敏性、抜群のボールキープ力とポジショニングを駆使して、相手のボランチ脇や3バックの間に入り込んでボールを受け、攻撃のリズムを作り出した。前半は彼のいる左サイドでイニシアチブが取れていた。
圧巻だったのは、0-0で迎えた後半のパフォーマンスだ。56分、ペナルティエリア左外でクリアボールを拾うと、シュートやクロスをチラつかせながら冷静にキープして、一瞬、相手ディフェンスの足を止めた。その瞬間を見逃さず、縦に行くと見せかけて、右足で中央のスペースに顔を出したFW宗田椛生へグラウンダーのパス。これを受けた宗田が左足でゴール右隅を射抜く。先制点をアシストしてみせた。
その直後に名古屋U-18のFW大西利都にボレーシュートを決められるが、68分に再び小林が躍動する。
CB林詢大の縦パスを左サイドで落ちながら呼び込むと、右足ダイレクトで中央の宗田へフリックのパス。そのままターンして斜め前にダッシュすると、宗田の落としを受け、追い越して中央のエリアにボールを運び出し、ペナルティエリア外から右足を一閃。鋭いライナーのシュートはバウンドして伸びる。名古屋U-18のGK加藤直太郎が弾いたこぼれ球を、FW土井川遥が押し込んで決勝弾。小林は2得点に絡む活躍で、2-1の勝利の立役者となった。
「上との差が縮まって、この試合だけではなく、残りの全部、負けられないという状況が続いているなかで、今日はみんなが同じ方向を向いて試合に入ることができた。先制してすぐ取られたので、苦しい試合になるかなと思ったんですけど、良い形で点を取れて勝点3を掴めたのは大きいと思います」
試合後、冷静な表情で試合を振り返った小林に、トップ昇格について聞くと、変わらぬトーンでこう続けた。
「まだまだスタートラインに立っただけだと思っているので、自分の基準をもっと上げていかないと(プロの世界で)活躍はできないし、試合にも出られないと思うので、そこは意識を持ってやっていきたいと思っています」
広島ユースの10番といえば、現在トップチームで活躍するFW加藤陸次樹をはじめ、FW満田誠(ガンバ大阪)、昨年はMF中島洋太朗が背負ったチームを象徴する番号だ。
「中学(広島ジュニアユース)の頃から加藤選手や満田選手の動きやプレーを意識していて、1つの目標にしてやってきました。それに1学年上の中島選手はどんどん活躍して、トップチームの中心になっていく姿を間近で見てきました。そういう刺激は僕の中では大きいと思いますし、今までずっと背中を見てやってきた。僕もそうなりたいと思っていますし、いずれは超えていかないといけないと思っています」
浮かれているような様子は一切感じなかった。むしろトップ昇格が決まったことで、今の自分に対する危機感とやるべきことへの覚悟が滲み出ていた。同時に1月の早生まれである小林は、11月にカタールで開催されるU-17ワールドカップのメンバーにも選出された。世界の大舞台を見据え、彼は気を引き締めていた。
「(9月にチリで開催された)U-20ワールドカップでも(日本代表は)難しい戦いを強いられていました。特に(ラウンド16の)フランス戦は、あれだけボールを握って押し込んでいたのに、最後にああいう形(終了間際に失点)でやられての敗戦を目の当たりにして、細部にこだわらないと勝てないと感じました。U-17ワールドカップも簡単に勝てる相手ではないので、世界の戦いに目の色を変えて臨んでいきたいと思っています」
1.5列目で違いを生み出せるセカンドアタッカーは、チームの攻撃の拠り所として機能しながら、時にはゴールを引き寄せるプレーを世界でもトップでも見せるべく、目の前の結果に一喜一憂することなく、しっかりと地に足をつけて前に進んでいる。
取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)
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