健診で「気づく」:健康と幸せのつながり

――数値ではなく“自分ごと”に変わる瞬間
岩木健康増進プロジェクト(以下:岩木健康増進プロジェクト)の健診は、一般的な健康診断とは大きく異なる。
血液検査や身体測定といった項目は同じでも、その目的は「病気を見つけること」ではなく、全身を網羅的に検査し、今の健康状態に気づくこと。
岩木健康増進プロジェクトでは、血液や唾液などの一般的な内科項目に加え、ゲノムデータ、体力調査、骨密度調査、生活習慣に至るまで3,000項目にも及ぶ検査を実施している。
この岩木健康増進プロジェクト健診を基に生まれたのが「QOL健診」だ。
「メタボリックシンドローム」「口腔保健」「ロコモティブシンドローム」「うつ・認知症」の4つの重要領域にしぼり、測定終了後に結果通知と健康教育までを短時間に一気通貫で完結されるプログラムパッケージである。
「“未病”や“予防”に焦点を当てて、病気になる前の“気づき”を促すのが私たちの健診(健康チェックプログラム)です」
村下先生がそう語るように、この健診の真の目的は、健診を通して“自分の身体と生活を見つめ直す”きっかけをつくること。

その場で数値を確認しながら、自分の食生活や運動習慣と照らし合わせていく。
「体脂肪率がちょっと高いのは、最近野菜をあまり摂っていないからかもしれない」
「最近疲れが取れないと感じていたけど、心が疲れていると表れていた」
そんな“ちょっとした気づき”が、健康行動への第一歩となる。
さらに、健診直後に医療従事者をはじめとした専門職との丁寧な対話を重ねることで、単なる注意喚起ではなく「納得感ある改善目標」を見定められるのがポイントだ。
「“知らなかったことを知る”だけでは、行動は変わらない。
“自分のことだ”“このままだと将来が危ない”と思える瞬間が、行動変容のスイッチになるんです」
また「QOL健診」中で、健診は「病気が見つかってしまう怖いもの」ではなく「毎日の変化に気が付く楽しいもの」へと変化していった。
数値の上下に一喜一憂するのではなく、自分らしく健やかに暮らすための“ヒント探し”の場として機能するようさまざまな工夫を取り入れている。
そしてこの「気づき」を共有できる「仲間作りができる場」として、「ただ健診を受けるだけの場所」ではない変化を生んでいる。
地域がひとつになるお祭りのような「岩木健康増進プロジェクト」

――行動変容は、気が付き、つながりの中で起きる
青森県弘前市岩木地区で行われている年に一度の大規模な合同住民健康調査は今や地域の「風物詩」となっている。
その雰囲気は、どこかお祭りのような賑やかさすら感じさせるのだ。
早朝から集まる地域の人たち。
「自分一人じゃなかなか続かないことでも、みんながやってると思えば頑張れる」
岩木健康増進プロジェクトを通じて**健診が“孤独な努力”ではなく“仲間と歩む習慣”**へと変わっている。
村下先生も、こうした“つながり”の力を強調する。
「個人の行動変容を促すには、実は“個人”の気付きだけだとなかなか難しい。
家族、職場、地域といった“まわりの環境”が変わり、”自分一人じゃない”と認識することで行動につながりやすくなります」
