スーパーGT第7戦オートポリスは、戦前の予想に反して“シビック祭り”となり、ホンダ陣営が表彰台を独占した。その結果、最終戦に向けてトヨタ陣営のみで争われる可能性もあったタイトル争いに、100号車STANLEY CIVIC TYPE R-GTが割って入ることになった。
オートポリス戦前の今季6大会7レースでは、トヨタGRスープラが5勝、日産Zが2勝を挙げる中、ホンダのシビック・タイプR-GTは未勝利に終わっていた。2024年から投入されたシビックは来季はプレリュードへとスイッチされることが決まっているが、2024年の第4戦で挙げた1勝のみでGT500を去ることになるのではないか……そう心配する声も強まっていた。
迎えた第7戦の予選では、タイヤ選択とアタックの戦略がハマらず、ブリヂストンユーザーの4台が全てQ1でノックアウトされるなど、下位のグリッドに固まってしまったホンダ陣営。しかしペース自体には確かなものがあることはHRC(ホンダ・レーシング)も確認しており、オートポリスでの3時間レースという追い上げの可能なフォーマットである決勝レースに向けてはあまり悲観していなかったという。そして決勝レースでは戦略も上手く決まり、一転してホンダ勢が上位に食い込むことになった。
優勝した100号車STANLEYの山本尚貴はフィニッシュ直後のインタビューで様々な関係者への感謝を口にする中で、今回に向けてスペック2のエンジンを開発してきたHRCにも言及した。
「ここ最近ずっとホンダ勢が苦戦していて、苦しい時間を過ごしてきました。2基目のエンジンに関しても、開発陣の皆さんは辛かったと思いますがここまで頑張ってくれたので、感謝ですね」
HRCのスーパーGTプロジェクトリーダーである佐伯昌浩氏は、終盤2戦で投入されたスペック2エンジンは、かなり大きく手を加えたものになっていると明かした。
「2基目は内蔵物がかなり変わっています」
「ここまで(投入時期を)引っ張った要因は色々あるのですが、我々としても中に入れたい部品の信頼性を担保するためのテストは結構時間をかけてやってきました。ここ最近の中ではかなり大きく手を加えて持ってきています」
最近ではGT500参戦各車のエンジン性能は拮抗しており、大幅な性能アップは難しいとも言われるが、その中でもホンダ陣営は「ちょっとしか上がらないパワー(佐伯氏談)」を上げることにフォーカスしてきたという。来季からは年間に使用できるエンジンが1基に減らされてしまうため、今回のスペックを来季用に踏襲できるかは不透明だが、とにかく今季終盤戦に向けて絞り出せるものは絞り出そうとしたようだ。
「今回のエンジンは2戦しか使わないので、年間2基で運用する上で本来は厳しいというものまで入れ込んだ状態で仕上げてきています」
「これが来年用のエンジンになるかと言われるとそこはクエスションですが、残り2戦で挽回するために多少踏み込んだ状態で持ってきています」
「我々が開発の手順を踏んでいく中で、本来なら手前のスペックでやめておこうとなるようなところを、ギリギリまで……チリツモで溜め込んだものを入れ込んできました」
この新エンジンがオートポリスでの表彰台独占の要因になったと言えるかとの質問には「……そう言えたらカッコいいんですけどね(笑)。そこはなんとも難しいところです」と苦笑した佐伯氏。しかしながら、シビック投入以来初となる表彰台独占と全車入賞には確かな手応えを掴んだはずだ。
第7戦のレース前の段階では、ランキングトップから5番手までをスープラ勢が独占している状況であり、最終戦を前にホンダ、日産共にタイトル争いから脱落してしまってもおかしくなかった。しかし100号車STANLEYの優勝により、山本、牧野任祐組がランキング3番手にジャンプアップ。トップにつける1号車au TOM'S GR Supraの坪井翔、山下健太組に8.5ポイント差まで肉薄した。
自力王座の可能性は残っていない山本、牧野組だが、仮に最終戦もてぎで優勝した場合、1号車au TOM'Sが3位以下で逆転タイトルを獲得できることになる。(※1号車がポールポジションを獲得した場合は4位以下)
HRCの車両開発責任者である徃西友宏氏も「去年の最終戦に向かう時は、ランキング2番手だった100号車がトップと18点も離された状態だったので、それに比べると射程圏内のポイントで終わったところは良かったと思います」と語る。
そして佐伯プロジェクトリーダーは最終戦に向けて、「これで(シビック)2勝目ですが、年間1勝じゃ寂しいですから、年2勝を目指して、そしてチャンピオンを獲れるように頑張りたいと思います」とコメントを締め括った。

