
モロッコの躍進を象徴するU-20W杯制覇。楽しみなタレントがずらり。指揮官が育む一体感。移民選手の混在で“最高のミルクセーキ”に
2022年カタール・ワールドカップで4強入りと大躍進を遂げたモロッコは、26年北中米大会へ向けても加速している。
「アトラスのライオン」を率いるのは、今やモロッコの英雄として知られるワリド・レグラギ監督だ。カタールW杯では、本番直前に解任されたヴァヒド・ハリルホジッチ前監督からチームを引き継ぎ、母国を史上初のベスト4へ導いた指導力は絶大の信頼を得ている。
フランス生まれのレグラギ監督は、欧州仕込みの戦術理解とモロッコの情熱を併せ持ち、選手一人ひとりに深い信頼を注ぐ。「私は魔術師ではない。ただ選手を信じた」と彼は語る。その信頼が、欧州育ちの選手を多く抱えるチームをひとつにまとめた。
カタールの地でクロアチアとの3位決定戦に敗れた後、必ず成長して、世界の舞台に戻ってくることを約束したレグラギ監督。北中米W杯に向けて、キャプテンのアクラフ・ハキミ(パリ・サンジェルマン)や中盤の要ソフィアン・アムラバト(レアル・ベティス)といったカタール大会の主力たちは健在だ。
彼らがチームの骨格を成し、そこにブレイク中のブラヒム・ディアス(レアル・マドリー)やニール・エル・アイナウィ(ローマ)など、勢いのあるニュータレントが台頭してきている。
モロッコの躍進を象徴するのが、U-20W杯の優勝だ。欧州のメジャークラブに所属する選手を招集できない国が多く、モロッコも同じ事情を抱えていたが、それでも将来性を感じさせるタレントが多く見られた。
大会で7試合・5得点のヤシル・ザビリ(ファマリカン)、圧倒的な突破力を武器に4アシストを記録したウスマン・マーマ(ワトフォード)などは今後の活躍次第で、北中米W杯のメンバーに滑り込んでもおかしくない。同世代ではすでに、シェムズディン・タルビ(サンダーランド)やエリエス・ベン・セギル(レバークーゼン)といった選手たちがレクラギ監督の率いるA代表に名前を連ねている。
戦術面でも着実なアップデートが見られる。カタールW杯では徹底した堅守速攻のイメージが強く、レグラギ監督もポゼッションにこだわりがないことを強調していた。しかし、アフリカではモロッコがボールを持つ側になることが多く、自分たちからいかにアクションを起こしてゴールを奪うかというテーマに向き合う必要があった。
その結果、アフリカ予選では8戦全勝、22得点・2失点。ボールを持つ側になっても、守備の安定を維持しながら攻め切る力強さを証明したと言える。
最終ラインの中央に構えるセンターバックもアダム・マジーナ(トリノ)、ナイエフ・アゲルド(マルセイユ)といった190オーバーの屈強な戦士たちが、守護神ヤシン・ブヌ(アル・ヒラル)と共に鉄壁を作り出す。
右サイドバックのハキミはいわばモロッコの“アクセル”。10番を背負うウイングのディアスとの縦ラインは世界最強と言っても過言ではない。左サイドにはオランダでアシストを量産中のソフィアン・エル・カルアニ(ユトレヒト)を擁する。中盤ではイスマエル・サイバリ(PSV)の充実ぶりが際立つ。CLでセリエAの強豪ナポリを6-2で粉砕したゲームでの活躍が記憶に新しい。
レグラギ監督が生む一体感は、欧州で育った移民選手の多いチームにとって非常に大きな意味を持つ。モロッコ生まれの選手も含めて、育った文化の違いが内部の分裂を生むリスクは少なくないが、レグラギ体制ではそれが逆に強みとなった。
ドイツ、フランス、ベルギー、オランダなどで育った選手が混ざることで、“最高のミルクセーキができ上がる”と表現しているほどだ。その言葉どおり、多様性をエネルギーに変えるチーム作りが成功している。
北中米W杯のアフリカ予選をダントツで勝ち抜いたことで、もはや大陸内での競争を超え、次のステージが世界基準であることを示している。彼らの戦い方には、W杯でヨーロッパ勢を撃破した時のようなカウンターの鋭さと、ボールを持つ側になっても連動性の高いアクションで崩す柔軟さが同居している。
モロッコの強さは、奇跡でも偶然でもないことが、その後の試合で証明されてきた。48か国に増える北中米W杯でモロッコは日本と同じく、抽選会のポット2に組み込まれそうだが、カタールの再現、それ以上の成功があってもおかしくない。アメリカなど開催国や優勝を目ざすポット1の国にとっても、モロッコとの同居は避けたいだろう。
文●河治良幸
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