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海外F1ライターの視点|フェルスタッペン猛追! 2025年F1チャンピオンは誰になるのか?

海外F1ライターの視点|フェルスタッペン猛追! 2025年F1チャンピオンは誰になるのか?

レッドブルのマックス・フェルスタッペンが復活し、ここ数戦上位フィニッシュを続けていることで、ドライバーズランキングの差が急激に縮小。その行方は混沌としてきた。

 アメリカGPを終えた時点でランキング首位につけているのは、マクラーレンのオスカー・ピアストリで、ここまで346ポイントを獲得。チームメイトのランド・ノリスが14ポイント差という僅差で続いている。

 当初このふたりだけのタイトル争いになるものと見られていた。しかしここに来てフェルスタッペンが猛追。イタリアGPを勝ち、アゼルバイジャンGPを勝ち、苦手とされていたシンガポールGPで2位、そして先日のアメリカGPではF1スプリントと決勝の両方を制した。これで当初は100ポイント以上あったピアストリとの差が、40ポイントまで縮まった。これにより、タイトル争いの結末がどうなるのか……全くわからなくなってきた。

 残りは5戦。しかもサンパウロGPとカタールGPでは、F1スプリントも予定されている。では、最終的な結末……2025年のチャンピオンは一体誰になるのか? motorsport.comの各国のライターが予想する。

【ノリス】彼は正しいことを全てやっている:オレグ・カルポフ

 ノリスは今年、ポイントを獲り逃すシーンもあり、ライバルのミスを活かす機会も最大限に活用できなかった。カナダGPでは、ピアストリと接触したことによりリタイア。中国GPでのスプリント予選では、最終アタックでミスしたことが痛手となった。

 しかし最近のノリスは、力強い走りを見せていると言えるだろう。

 アゼルバイジャンGPでは1周目にピアストリがリタイアしたことで、差を大きく縮める最大のチャンスだったが、角田裕毅(レッドブル)に抑え込まれたことで、そうはならなかった。しかし不必要なリスクを冒さなかったことは賢明だったと言える。無理にポジションを上げようとすることで、リタイアに終わる可能性だってあったのだ。おそらくこの1戦は、正しい判断だったはずだ。

 オランダGPをマシントラブルでリタイアした後、ノリスは明らかに、より強いドライバーとなった。今やランキング首位のチームメイトを、完全に凌駕していると言える。シンガポールGPの予選結果は期待はずれだったものの、決勝レースの1周目、ピアストリをオーバーテイクする唯一のチャンスを掴んだ。この動きはチーム内では”波紋”を呼んだかもしれないが、本来ならば賞賛されるべきだろう。

 アメリカGPでの走りも、見事だったと言えるだろう。マクラーレンは慎重な戦略を採り、ミディアムタイヤを履いてスタート。ソフトタイヤを履いたシャルル・ルクレール(フェラーリ)に先行を許してしまった。ただやはりノリスは無理をせず、レース終盤までそのチャンスをじっと待った。そして最終的には2位を手にした。

 おそらく彼は今年、1年を通してそうすべきだった。もう少し余裕を持ってレースに臨むべきだった。

 ノリスは現在、ピアストリに14ポイントの差をつけられている。残り5戦でやることは実にシンプルだ。今と同じことを続けるだけでいい。フェルスタッペンはミラーに映る位置まで近づいてきているが、それでも心を乱さず、チェッカーフラッグまでほぼ完璧な走りを見せなければいけない。そして残りのレースの中には、マクラーレンが得意とするはずのサーキットもいくつかある。

 皮肉なことに、オランダでのマシントラブルは、ノリスが立ち直るのに役立ったと言えそうだ。一方、そのことでノリスとの差を拡大できたピアストリは、逆に落ち着きを失ったように見える。

 ふたりともチャンピオン候補であるのは間違いないが、少なくとも最近の数戦を見れば、ノリスは自分がすべきことをしっかりと理解しているように見える。

【フェルスタッペン】マクラーレンのふたりの方が、証明すべきことが多い:フィリップ・クリーレン

 私は勢いというモノをあまり信じていない。それは、人を大袈裟に捉えさせてしまう概念のひとつだ。

 今年の夏、フェルスタッペンは完全敗北寸前だった。しかしフェルスタッペンはここ数戦で圧倒的な強さを見せており、タイトル争いの行方も彼の手に委ねられているように見える。今のF1における差は実に僅かであるため、細かい部分がとても重要……日曜日の夜には、様相が一変している可能性もあるが。

 ポイント差が縮まっているとはいえ、マクラーレンのふたりよりもフェルスタッペンをチャンピオン候補として挙げる理由は他にもある。その最大の要素は経験だ。

 フェルスタッペンはこれまで4回ワールドチャンピオンに輝いている。特に最初のタイトルを獲得した2021年は、ルイス・ハミルトン(当時メルセデス)との激戦を制しての載冠であった。

 ノリスも十分な経験を積んでいるはずだが、チャンピオンを獲得したという経験はない。またピアストリは、まだF1で3シーズン目である。

 この経験という要素で言えば、フェルスタッペンは圧倒的に有利だ。しかも最近のレッドブルのマシンは戦闘力が急上昇し、どんなサーキットでも勝てる力を持っている。マクラーレンがレッドブルよりも強いのは、中速コーナーが多いカタールのみであろう。またラスベガスは、メルセデスが強いことが予想される。

 そう考えると、フェルスタッペンが3勝を挙げ、残りのポイントを3人がどう取り合うかという展開になるだろう。

 マクラーレンのふたりにとっては、もうこれ以上のミスは許されない。彼らはシンガポールでも、そしてアメリカGPのスプリントでも接触し、多くのポイントを取り逃がすことになった。そしてその中で、彼らは自らの実力を証明しなければいけないのだ。

 対するフェルスタッペンは、それを何度も証明してきた。やはり有利なのはフェルスタッペンだろう。

【ピアストリ】依然として彼には力がある:オーウェン・ベルウッド

 フェルスタッペンとレッドブルが最近目覚ましい活躍を見せていることは否定できない。直近4戦中3勝、2位1回という好成績がもたらす勢いは、決して軽視できるものではなく、まさにチャンピオンの証だと言えよう。

 しかしそれでも、マクラーレンを倒すのには十分ではないと思う。

 マクラーレンはここ最近、ドライバー同士の接触が起き、序盤のような速さもない……厳しいグランプリが続いている。しかしフェルスタッペンの好調さと、マクラーレンの苦戦が、この先も続く可能性は低いように思う。

 ピアストリは依然としてランキング首位をキープしており、チームメイトであるノリスとの差は14ポイントである。フェルスタッペンはそこからさらに26ポイント遅れている。

 フェルスタッペンがここ最近急接近しているのは、誰の目から見ても明らかだ。それを考えれば、このポイント差は、あまり大きなモノには見えない。

 しかしマクラーレンはそのことを承知している。今後大失敗があれば、タイトルを逃すことになるだろうということも覚悟している。チームが再び確固たる基盤を築き、ピアストリが冷静さ、そして力強い態度を取り戻すことができれば、ドライバーズタイトルを獲得するのは、それほど難しいことではないだろう。

 チームに求められるのは、ピアストリとノリスの間で高まる緊張感をうまくコントロールし、ポイントを奪い合うことを阻止し、フェルスタッペンに塩を送ることになるミスを根絶することだ。

 大したことはない……よね?

【フェルスタッペン】マクラーレンが”最後の花”を添えないかぎり:ジェイク・ボクソール=レッジ

 メキシコ、サンパウロ、ラスベガス、カタール、アブダビ……今季のF1サーカスも残り5戦だ。

 この5箇所のサーキットは、それぞれ全く異なる特徴を持つ。今週末は高速で標高も高いメキシコシティでのレース。続いて、よりコンパクトで雨が降ることも多いサンパウロと続く。ラズベガスは寒く、低グリップの路面に対処するという全く異なる挑戦となる。カタールは中速コーナーが多く、アブダビはストップ&ゴーでDRSを効果的に使える。

 アメリカGPの前の段階では、メキシコとブラジルではフェルスタッペンがマクラーレン勢からポイントを奪い、ラスベガスは寒さに強いメルセデスが制し、中東での連戦はマクラーレンが花を添える……そんな予想が大きかった。しかし今や、フェルスタッペンが全て勝ってしまう可能性が高まっている。

 アメリカGPでのフェルスタッペンのパフォーマンスは、マクラーレンが持っていたはずの中速域での優位性が、それほどではなくなっていることを実証した。一方でレッドブルは、原石だったマシンを磨き上げ、今やダイヤモンドのような輝きを見せるようになった。

 したがって今問うべきは、「フェルスタッペンは今季のタイトルを獲得できるか?」ではなく、「マクラーレンはどうやってフェルスタッペンのタイトル獲得を阻止できるか?」であろう。

 マクラーレンの皆さん、あなたたち次第だ。

【フェルスタッペン】レッドブルは勢いに乗っている。マクラーレンは……:スチュアート・コドリング

 限られたサンプルから推測するのは賢明ではないが、最近の状況を考えると、例外を認めることもできるかもしれない。

 マクラーレンは今年のグランプリのほとんどあるいは全てにおいて、マシンの優位性を維持している。そのため、ふたりのドライバーに自由にレースをさせるという考え方を貫くことができた。しかし実際には、ポイント獲得の機会を逃し、今やその代償に直面している。

 マクラーレンはまだこの状況を打開できる。しかし今最も論理的な行動は、少なくともひとりのドライバーを優先するということを検討することだろう。フェルスタッペンという脅威が増大している現状において、状況を見て「待つ」というだけでは、積極性が足りない。

 見方によっては、フェルスタッペンの脅威を軽視することもできる。しかしそれでは、彼の最近の好調さを”たまたまだ”と言って片付けてしまうということになる。

 レッドブルはイタリアGPでアップデート版のフロアを投入して以降、より効果的な車高で走らせることができるようになり、その上でスキッドブロックの摩耗を軽減できるようになった。これは”たまたま”などでなく、明らかにゲームチェンジャーとなる要素だった。

 フェルスタッペンは、マシンから常に最大限のパフォーマンスを引き出す方法を見つけ出す、類稀なる能力の持ち主だ。

 フェルスタッペンが今後全てのレースで勝利したとしても、ピアストリが全レースで2位に入れば、依然としてピアストリがチャンピオンに輝くことになる。ただピアストリは、最近調子を落とし、ポイントの取りこぼしが目立つ。数字的な状況は、あくまで机上の計算ということにすぎない。

 マクラーレンのチーム代表を務めるアンドレア・ステラは、エンジニアリング的なバックグラウンドを持つため、パフォーマンスの差別化となる要因をある程度予測・マネジメントできる。しかしモータースポーツは、技術的な側面が重要な一方で、レースは予測不可能な部分も大きい。

 マクラーレンには、グラフやスプレッドシートに頼るだけでは解決できない、難しい選択が待ち受けている。チームがどちらのドライバーを信頼するのか……という問題なのだ。どちらかを選び、そのドライバーを全力でサポートしなければいけない。

 さもなければフェルスタッペンは、1986年のアラン・プロスト、そして2007年のキミ・ライコネンの再現をすることになるだろう。

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