
市原隼人が“給食愛”に対して全くブレない中学教師を演じ、人気を博している「おいしい給食」シリーズ。劇場版の第4弾となる「おいしい給食 炎の修学旅行」では、市原演じる主人公・甘利田幸男が生徒たちを引き連れて青森・岩手へ修学旅行に出発。「みんなで楽しく食べる」という給食の原点にスポットを当てた物語が描かれる。
今回、毎シリーズごとに甘利田幸男として熱い演技を見せている市原にインタビューを実施。そこからは、甘利田に勝るとも劣らない市原のブレない「おいしい給食」愛が見えてきた。
■甘利田は「常に本質を追及し続けている男」
――2019年にTVドラマとしてシリーズがスタートし、劇場版はこれで4作目となります。今回のお話が来たときに、どのような心境でしたか?
第3シーズンで、甘利田が函館に行けたことだけでも奇跡だったと感じていますが、それがまさか今回は青森と岩手へ修学旅行に行くことになり、また奇跡を頂けた気持ちになりました。
そして、第1シーズンのヒロインだった御園先生(武田玲奈)が6年ぶりに出演してくださって、言葉にならない思いになりましたし、一つの作品を長く続けることの醍醐味を感じました。だからこそ、甘利田として普段人が見せない滑稽な姿や笑われる姿をより一層爆発させないといけないなと気合いが入りました。
――シリーズ開始当初から一貫しているのが、甘利田のあふれんばかりの“給食愛”だと思います。市原さん自身は、甘利田のブレない姿勢をどう感じていますか?
私も変わりたくないと思っていますし、そして、変らないのが甘利田幸男の良さだとも思っています。自分をよく見せようとしたり、見栄を張ろうとすることは一切なく、誰かと比べるわけでもなく、人の物差しで何かを見ることもない。
常に本質を追及し続けている男だからこそ、コメディー的な要素だけでなく、日本人が忘れかけている古き良き心、そしてしっかりと地に足をつけた社会的なメッセージを、皆さまに届けることができているのではと思います。
――演じるときに甘利田のボルテージにまでテンションを上げるのは大変だと思うのですが、「おいしい給食」の現場に戻ってくると、自然とそうなる感じですか?
はい、大変です(笑)。その前の作品で侍の役なんかをやっていると、とくに大変です。ですが、私は「おいしい給食」のチームに惚れていて、監督やプロデューサー、脚本家、技術スタッフのみんなが大好きなんです。
なので、皆さんに会うと自然に甘利田になれますし、このチームは私にとってもう家族であり、帰る場所だと感じています。
――市原さん自身の「おいしい給食」にかける愛がすごいですね。
本当に小さなところから始まった作品ですので、とにかく愛にあふれているんです。シリーズ開始当初から変わらないスタッフも多いですし、ここまで連携が取れている作品はなかなかないと思います。そういった意味では、私にとっても財産なので、これからもずっと大切にしていきたいと思っています。
■生徒たちが楽しんでいるのは「ほほ笑ましかった」
――「おいしい給食」はモノローグが多い作品だと思います。先にモノローグを録ってから、お芝居をつけていくそうですが、それを現場でどう合わしているのでしょうか?
どう動くのかは脚本には書かれていないので、撮影の前日に全ての動きを自分で考えています。例えば、甘利田が給食を前に高揚するシーンがあれば、こういうリアクションの後に、ここで踊り出すとか。
そういうことを前日にずっと考えているので、撮影の日は常に寝不足です(笑)。ですが、それだけ必死になれる作品もそうそうないので、それを含めて役者の醍醐味だと思っています。
――生徒役の若手俳優さんもたくさん出演されていますが、現場の雰囲気はいかがですか?
本来なら、彼らはまだ仕事をしなくてもいい年齢です。なので、“遊びの延長線上”にあるような、自ら撮影に来たくなるような現場にしたいと思っていました。
それでいて、この作品が何のためにあるのか、どう作るべきなのか、その先にあるお客さまに何を伝えようとしているかは、撮影に入るまでに彼らにちゃんと話しました。
――本当の先生みたいですね。
そして、この作品に携わることで、彼らが役者としても、人間としても、成長するきっかけにしてくれればいいなという思いもありました。
ですが、それを押しつけるのではなく、とにかく来たくなるような現場にしたかったので、そこは常に心掛けていました。実際、生徒たちが楽しんでいるのを見ているのはほほ笑ましかったです(笑)。

■市原隼人、学生時代は「いたずらっ子だった」
――今回、修学旅行が題材になっていますが、修学旅行の思い出はありますか?
中学のときは京都に行ったのですが、楽しかったです。でも、修学旅行なんて、みんな寝ないですよね(笑)。私は本当にいたずらっ子だったので、いろんな人が手を焼いていたと思います。
――学生時代に好きな先生、苦手な先生はいましたか?
私は理由なき反抗みたいなものを常に持っている子供だったので、大人のことを信用していなかったんですよね。怖い先生はたくさんいて、たくさん怒られましたし、優しい言葉をかけていただくこともありました。そのおかげで今の自分があるというのは、大人になってから気付きました。
苦手といいますか、当時の私はキウイフルーツが苦手で食べられなかったんです。そうしたら先生が「牛乳をかけたら食べられるから」と勧めてくださったのですが、これが私には合わず。そのときは「この先生、なんてこと言うんだ」と思いました(笑)。
■「おいしい給食」のチームが大好き
――甘利田先生は「好きなものは好き」とはっきり言いきれるタイプの人間ですが、市原さんご自身はいかがですか?
言いきれるタイプです。というより、好きなものは好きと言わないと気が済まないタイプです(笑)。だから、今は「おいしい給食」のチームが大好きだと全力で言いたいです。
――逆に、好きなものを好きと言えない人にアドバイスはありますか?
無理して表面に出す必要はなく、自分の中で思い続けるだけでいいのではないかなと思います。自分の好きなものは底知れない強さを自分に与えてくれたり、人への優しさや思いやりを還元してくれるものでもあると思うので、こっそり内緒にしながらでも自分なりの好きを持っていることはいいことだと思います。

■子供たちに伝えたいことは「失敗を恐れるな」
――甘利田は自身の給食愛だけでなく、生徒たちにとても大切なメッセージを与えてくれます。今回は「人生には分岐点がある。それを決めるのは自分で、自信とは自分を信じることだ」という言葉が印象に残りましたが、もし市原さんが先生だったら、今の子供たちにどういうことを伝えたいですか?
「失敗を恐れるな」ということですかね。最初はどんな人でも失敗するし、失敗をするのは当たり前のことなんだと。その後にあきらめない気持ちを持てるか、持てないかで変わってくると思うので、一度の失敗で心折れてほしくないなと思います。
何度もあきらめないで挑戦すれば、オリンピック選手になれるかもしれないし、偉人にだってなれるかもしれない。子供たちには、いろいろな可能性にあふれていることを知ってほしいです。
――市原さんにとって「おいしい給食」は、どんな存在になっていますか?
私は常に新しい作品、新しい役に挑みたいと思っているので、正直シリーズを重ねることに、あまり肯定的ではないんです。ですが、「おいしい給食」は予想以上にいろんな反響を頂きました。小さなお子さまから人生のキャリアを積まれた方まで応援してくださっていて、偶然道で会ったお子さんから「甘利田先生、大好きです」と言われたときは涙が止まらなくなりました。
それ以外にも「『おいしい給食』に生きる活力をいただいています」と言ってくださった方もいて、この方々のためにもっと尽くしたい、もっと頑張りたいと思いました。なので、私にとって「おいしい給食」は、私の夢です。
◆取材・文=馬場英美/ヘア&メーク=大森裕行(VANITES)、スタイリスト=小野和美

