●こぼれ話
週刊BCNに度々ご登場いただいている檜山太郎さん。今回は、千人回峰で対談の機会を得ることができた。ビジネスの詳細は他の記事に委ね、千人回峰を貫く大きなテーマ「人とは何ぞや」に近づけるか。初登場ではないからこそのプレッシャーと期待を自らに課しながら秋葉原へ。
何から切り出そうか。対談の入り方はある程度考えていくものの、その場の雰囲気を大切にしている。檜山さんの場合、時間の関係でいきなりポートレート撮影からスタート。あいさつもそこそこに窓際に立っていただき、にこやかな表情を要求する。場が和んでいない中、カメラを見つめながら穏やかな笑顔で雑談に応じる檜山さん。あっという間に、室内に笑顔と笑い声が広がり、取材クルー一同が檜山さんのお人柄に救われる。
例え話を用いながら、丁寧に説明するように心掛けているという檜山さん。お立場から時間に追われる毎日と想像するが、コミュニケーションには時間をかけているそう。私はと言うと「コミュニケーションはコストではなく投資」と心にとどめているものの、できていない自分に直面し、反省ばかりの日々だ。「分かるだろう、分かっていてほしい」。そんな相手への甘えも、コミュニケーションを希薄にしてしまっている。多くの人に支えられていることに甘んじることなく、それに応える丁寧なコミュニケーションを心掛けたいものだ。それがビジネスのスピードや成功にも直結する。
檜山さんは、ラグビーの経験から、チームプレーが脳内に染み付いているようだ。それだけラグビーに打ち込み、多くのことを得られたのだろう。真剣にやるからこその学びだ。
AI同士がつながり、さらに大きな変化が起ころうとしている。その世界で自分はどんな想像領域をつくっていけるのだろうか。人間の欲望に天井はない。それゆえ不安もあるが、だからこそ驚きが生まれる。
IT業界は、幾度となく新しいテクノロジーによって、安定を崩して新しいビジネスをつくってきた。檜山さんが率いるレノボの挑戦は、世の中にどんな驚きを与えるだろうか。そのスピードは加速している。(奥田芳恵)
心に響く人生の匠たち
「千人回峰」というタイトルは、比叡山の峰々を千日かけて駆け巡り、悟りを開く天台宗の荒行「千日回峰」から拝借したものです。千人の方々とお会いして、その哲学・行動の深淵に触れたいと願い、この連載を続けています。
「人ありて我あり」は、私の座右の銘です。人は夢と希望がある限り、前に進むことができると考えています。中学生の頃から私を捕らえて放さないテーマ「人とはなんぞや」を掲げながら「千人回峰」に臨み、千通りの「人とはなんぞや」がみえたとき、「人ありて我あり」の「人」が私のなかでさらに昇華されるのではないか、と考えています。
奥田喜久男(週刊BCN 創刊編集長)
<1000分の第381回(下)>
※編注:文中に登場する企業名は敬称を省略しました。

