
テレビアニメ「ワンダンス」(毎週水曜夜11:45-深夜0:15、テレビ朝日系※一部地域を除く/ディズニープラスのスターで配信中)の第3話「オーディション」が10月22日に放送。ダンス&ボーカルグループ・BE:FIRSTによるオープニング主題歌「Stare In Wonder」も話題沸騰の本作だが、第3話では主人公・小谷花木(CV:内山昂輝)の底知れない才能をうかがわせる描写に注目が集まった。(以下、ネタバレを含みます)
■吃音症の主人公が才能の片りんを見せる
同作は、月刊コミック誌「アフタヌーン」(講談社)にて連載し海外でも10言語で出版されている、珈琲による累計発行部数110万部突破の人気漫画シリーズをアニメ化したもの。自分の気持ちをうまく表現できない、吃音症の高校生・小谷花木(CV:内山昂輝)が、人目を気にせず自分の表現を追求する同級生・湾田光莉(CV:羊宮妃那)を通じてダンスに引き込まれ、言葉が要らない“フリースタイル”なダンスの表現に挑んでいく青春物語だ。
第3話では、6月のコンテストに向けたメンバー選出のための部内オーディションが行われることに。ダンス部部長の“恩ちゃん”こと宮尾恩(CV:諏訪彩花)は、ダンス初心者もいる1年生のためにダンスの基礎をイチから教えていくことに。アフタービートをしみ込ませるため、目の前に壁があると思って音楽に合わせて手のひらで打つ、“ヒット”という重要な技術の“練習の練習”を伝授する。
オーディション当日、恩ちゃんはオーディションがフリーダンスであることの理由を説明。「人前に立って緊張して焦ってしまったときに起きる“早取り”を防止するために、ちゃんと音が聴けているかを見たいから」と打ち明け、「早取りしていないかどうかだけを見る」と審査ポイントを公表した上でオーディションを始める。顧問の先生と恩ちゃんの前で、2人ずつ踊っていくことに。
3年生から始まったオーディションでは、難なく踊っていく3年生、踊り慣れていない者も見受けられる2年生を経て、1年生の番に。そしてカボと光莉の順番となる。音楽が流れる前から嬉々として堂々と立つ光莉とは対照的に、初めて人前で踊るカボは、動悸が激しくなり呼吸も荒くなる。踊る前から汗が滴り落ち、緊張はMAXに。そして、水の中に沈んだかのような、音が聴こえづらく、息苦しく、動きづらい状態に陥ってしまう。
そんなカボをよそに、鳴り始める音楽。くぐもった音を聴きながら体を動かすことができず、その場に佇むカボだったが、隣で舞うように踊る光莉のダンスに魅了され、次第に緊張が解けていく。音がクリアになってくるにつれ、思考もクリアに。そして光莉が、音が鳴ってから動いていることに気付き、音に集中し始めたカボは、音を捉え、振りの難易度は意識せず、ダウンをキープして片足だけで踏んでいくことに意識を傾ける。「動かなくていい。音楽に動かされていればいい」と悟り、自然と音に“ノる”カボに、恩ちゃんは計り知れない才能の片鱗を見いだす。
■ダンス初心者にも刺さる“How to”要素満載の設計
ダンスをテーマにした作品であるため、ダンスやダンスミュージックに興味がない人からすれば、かなりのハードルの高さを感じるだろうが、実はダンスに疎い人も視聴しやすい構造になっている。というのも、“主人公がダンスが苦手”という設定で始まっているため、彼の“素人目線”でダンスの基礎から成り立ち、現在のダンス文化に至るまでが分かるように進んでいき、初心者に対する“How to”要素満載で苦労することなく世界観に没入できる。
また、吃音症を持っていることで人前が苦手な主人公が、ダンスを通してその才能を開花させていくという展開こそ、昭和の時代から愛され続ける王道の“スポ根”だろう。第2話で、主人公の“耳の良さ”に恩ちゃんが言及する場面も描かれたが、主人公の“才能”に関する伏線が張られ、今後どう開花して回収されるのかも見どころだ。
そして何より、主人公がさまざまなシチュエーションからダンススキル向上のポイントに気付き、成長を遂げていく様子もエモい。“スポ根”作品の熱さを知る昭和世代が「これ、これ!」と膝を打つ姿が容易に想像できるほど、主人公が一足飛びで成長していく姿が気持ちいい。
一流ダンサーが監修している圧巻のダンスシーンなど、コアなファン向けの見どころを楽しんでもらうもよし、BE:FIRSTのオープニング主題歌「Stare In Wonder」目当てで見るもよし、あるいは本作の大ファンとして知られる櫻坂46の遠藤光莉を推すファンが“推し活”の一環として見るもよし、ダンスや音楽の魅力が一言では言い表せないように、この作品の見方も人それぞれ違っていいのだ。
それを象徴するように、SNSでは「カボ君と湾田さんの水中ダンスは圧巻でした」「カボくんの成長が楽しみ!もちろん歌は最高過ぎる」「ダンスにそんなビートがあったんだ」「カボほんとにダンスの上達がはやい!」「ダンス用語がてんこ盛り」「ダンス少しでもうまくなりたいと思っている私にとってワンダンスは毎回学びがある」「オープニング目当てで見ているけど物語も本当に面白い」などと、さまざまな層に刺さっていることを感じられる声が寄せられている。
特にダンス初心者の人は、主人公に感情移入しながらダンスの知識を深めつつ、彼の成長ぶりを一緒に体験するような爽快感を味わってみては。
◆文=原田健

