投打の目玉候補に挙げられた立石正広(創価大)、石垣元気(健大高崎高)に加え、最大のサプライズだった佐々木麟太郎(スタンフォード大)の競合と非常に盛り上がった2025年のドラフト。各球団とも好指名が目立ったが、その中で個人的な注目ポイントをもとに12球団の指名を採点した。
▼ヤクルト:83点
1位で打力と守備力を兼ね備えた松下歩叶(法政大)の単独指名に成功。MLBに挑戦する村上宗隆の穴を埋める三塁としてだけでなく、山田哲人の後の二塁手としての起用も視野に入る。2位の松川玲央(城西大)は故障の影響で今秋こそ思うようなパフォーマンスを発揮できていないが、脚力とコンタクト能力を兼ね備えており、将来的に攻撃面で価値を発揮できることに期待したい。喫緊の課題である投手整備と将来の野手強化の両立を可能な限り目指した印象を受けた。
▼ロッテ:95点
2球団競合の末、石垣元気(健大高崎高)の指名に成功。順調にステップアップできれば、5年後には球界を代表するエースを目指せる逸材だ。2位の毛利海大(明治大)、5位の冨士隼斗(日本通運)も今季課題となった投手陣の強化にはうってつけ。その中で、将来の中軸候補として櫻井ユウヤ(昌平)の指名は会心の一手とも言える。欲を言えばもう少し内野手を確保したかったかもしれないが、全体を通してほぼ理想的な指名ができた印象だ。
▼広島:93点
1位の平川蓮(仙台大)は左右両打席で長打があり、加えて走れる希少性の高い逸材。2位の齊藤汰直(亜細亜大)は縦の角度で勝負できる投手で、先発としてもリリーフとしても活路を見出せそうだ。チームのニーズに合致する即戦力性と将来性を両睨みした大学生中心の指名の中、故障さえなければ1位指名もあり得た髙木快大(中京大)の7位指名には唸らされた。万全の状態に戻れば、3年後にはエース格を担っていてもおかしくない。▼西武:94点
事前に指名を公表していた小島大河(明治大)は将来的に中軸を担える水準の打撃を武器とし、正捕手争いにも食い込める貴重な存在。チーム状況次第では他のポジションでの起用も視野に入る。今井達也、高橋光成のMLB挑戦や平良海馬の先発再転向と流動的な投手陣に岩城颯空(中央大)、堀越啓太(東北福祉大)と左右の豪腕の獲得で備えができた点も高評価。3位の秋山俊(中京大)が攻守両面でどこまでレギュラー争いに食い込めるかがカギを握りそうだ。
▼中日:90点
中西聖輝(青山学院大)、櫻井頼之介(東北福祉大)、篠崎国忠(徳島インディゴソックス)とタイプの異なる3投手を立て続けに獲得。いずれも潜在能力は高く、特に中西はフォーク、櫻井はカットボールを武器に1年目からローテーション争いに加われるだけの力がある。ホームランウィングの設置で従来より狭くなるバンテリンドームでの投手強化を見据えた指名の中、6位の花田旭(東洋大)の長打力が開花すればより恩恵は大きくなるだろう。
▼楽天:88点
1位の藤原聡大(花園大)は現在チームに加えてもトップクラスのストレートと多彩な変化球を武器にエースを狙える投手。2位の伊藤樹(早稲田大)は今秋こそ調子を落としているが実績は十分。投球術やコマンドの高さなど藤原と違った強みを持つ投手で、差別化しながらともにローテーション定着を目指したい。その後も将来の正捕手候補として大栄利哉(学法石川高)、即戦力投手として九谷瑠(王子)など編成面でのポイントも抑えた好指名が続いた。
▼巨人:85点
岡本和真のポスティングを容認したこともあり野手強化を望む声もあったが、事前公表した竹丸和幸(鷺宮製作所)を筆頭に上位3枠で投手を指名。竹丸は引き出しの豊富さを武器に左の先発として、独特な変化球が武器の田和廉(早稲田大)はリリーフとして、山城京平(亜細亜大)は先発とリリーフの両睨みで活躍が見込まれる。4位の皆川岳飛(中央大)、5位の小濱佑斗(沖縄電力)が現有戦力にどれだけ刺激を与えられるかがカギとなりそうだ。
▼オリックス:72点
藤川敦也(延岡学園高)、森陽樹(大阪桐蔭高)、佐藤龍月(健大高崎高)、窪田洋祐(札幌日大高)と立て続けに高校生を指名。あまりに大胆で評価は非常に難しいが、どの選手も最大値で見れば1位級と感じさせるだけの魅力はあり、球団の育成手腕が試される。6位の石川ケニー(ジョージア大)は投げては150キロ超、打っては豪快な本塁打を量産の二刀流プレーヤー。来年7月のMLBドラフトの結果を待つことになるが、入団に至れば戦力的なプラスは大きい。
▼DeNA:80点
1位の小田康一郎(青山学院大)にどのポジションを任せるかは今後のチーム状況にもよるが、将来は打線の軸としてOPS.800以上を見込める存在だ。2位の島田舜也、3位の宮下朝陽(いずれも東洋大)は大学生にしては粗削りな部分が残るものの、入団後の成長次第では投打のコアプレーヤーになり得るポテンシャルはあり、球団の育成手腕が問われる。一方で片山皓心(Honda)、成瀬脩人(NTT西日本)と即戦力指名で安定感を持たせた点は評価できる。
▼日本ハム:78点
大川慈英(明治大)は1位予想の声こそほとんどなかったものの、ボールの良さでは他の上位指名投手にまったく引けを取らない。まずは現在と同じくリリーフでの勝負となりそうだが、球種も多く将来的には先発に挑んでも面白そうだ。2位・エドポロ・ケイン(大阪学院大)、3位・大塚瑠晏(東海大)といずれもドラフト以外での補強が難しいタイプの指名にも成功。抽選で2回外したことを悲観させない、将来への投資を継続した指名となった印象だ。
▼阪神:97点
立石正広(創価大)の指名に成功しただけでなく、2位でも打撃が魅力の谷端将伍(日本大)、3位では身体能力が武器の岡城快生(筑波大)といずれも将来コアになり得る野手を立て続けに獲得。佐藤輝明の近い将来のMLB挑戦に加え、近本光司、大山悠輔らの世代交代を考えると文句のない野手指名ではないか、才木浩人、デュプランティエの去就が不透明な状況の投手陣で、ファームで好成績を残していた5位の能登嵩都(オイシックス)が一軍でどれだけ戦えるか注目したい。
▼ソフトバンク:65点/88点
(佐々木麟太郎が入団しなかった場合/した場合)
1位の佐々木麟太郎(スタンフォード大)の入団交渉は不透明だが、入団に至れば将来の4番候補としてこの上ない存在だ。仮に入団が実現しなかった場合、5位の高橋隆慶(JR東日本)がどれだけ打撃面で存在感を示せるかにかかっている。2位・稲川竜汰(九州共立大)、3位・鈴木豪太(大阪商業大)、4位・相良雅斗(岐阜協立大)はタイプこそ違うがいずれも伸び代を残しつつ早期から実戦投入できる大学生右腕で、起用法も含めて注目していきたい。
文●やまけん
【著者プロフィール】
1999年生まれ、千葉県出身。「一人でも多くのアマチュア野球選手がスポットライトを浴びてほしい」という思いから、関東を中心に全国のアマチュア野球の試合を年間約150試合を球場で観戦するアマチュア野球観戦者。X(旧)Twitter→@yam_ak_en
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