F1メキシコシティGPのFP1にレッドブルから出走したアービッド・リンドブラッド。彼は同じくルーキー枠として出走したパトリシオ・オワード(マクラーレン)を妨害したとして警告処分を受けたが、それでも彼のキャリアにとって重要なレッドブル首脳陣からの評価は非常に高かった。
まず注目すべき点は、レッドブルのレギュラードライバーである角田裕毅をコンマ1秒上回るタイムを出したことだ。当然、走行プランや燃料搭載量、エンジンモード、タイムを出したタイミングなどが異なるので単純比較はできないが、リンドブラッドは1回目のプッシュラップでターン12の縁石に乗り上げた以外はクリーンで落ち着いた走りを見せた。
レッドブルのモータースポーツアドバイザーであるヘルムート・マルコは、motorsport.comのインタビューに対して次のように述べた。
「堅実な仕事ぶりだった」
「彼にとっては難しい状況だっただろう。誰もが『やらかすな』『クラッシュするな』『クルマに傷を付けるな』と言っていた中で、彼はしっかり結果を出し、ルーキーの中ではダントツだったし、技術的なフィードバックも印象的だった」
FP1のセッション序盤、リンドブラッドも角田もハードタイヤを履いて10周以上を走行したが、この時点でふたりの走行プランは異なっていた。リンドブラッドはコース習熟に重点を置いていた中、角田はレースシミュレーション1本目を始めていた。
リンドブラッドはソフトタイヤを履いた時に速さを見せたが(それでもトップとなったフェラーリのシャルル・ルクレールからは0.617秒落ちだが)、チームは意図的に走行プログラムを簡略化した。というのも、リンドブラッドのマシンはFP2以降マックス・フェルスタッペンが乗り込むわけで、フロアボディにもマイナーアップグレードが施されていた。新人に無理をさせる理由はない。
チーム代表のローレン・メキーズはこう説明する。
「我々はアービッドに比較的少ない燃料搭載量で走らせることにした。いつも我々がFP1でやっているような、軽タン、重タン、軽タン……と複雑に推移する形にはしたくなかった。でも彼は非常に良い仕事をした」
「こういう(新パーツが装着された)状況で乗り込むのは難しいものだが、彼はとても良い仕事をした。タイムを見てもそれは一目瞭然だし、文句のつけようがない」
リンドブラッドはソフトタイヤでの最初のプッシュラップで、スタジアムセクションに入る前のビッグブレーキングポイントであるターン12をオーバーラン。縁石に乗り上げたが、ここは他のドライバーもミスしがちな場所ではある。このサーキットは普段あまり使用されないため、FP1の序盤は路面が滑りやすくなっている。そんな状況下でミスをしたのは彼だけではなかった。
その後、同じタイヤで再びコースに戻ったリンドブラッドは、1分18秒997を記録。これが自身のベストタイムとなった。
角田もソフトタイヤを履き、アウトラップ→プッシュラップ→インラップの短い走行を2回行なった。このプッシュラップでは1分19秒275、1分19秒090とタイムを上げていった。
このセッションではデータ伝送にトラブルがあったため、両者の最速ラップを厳密に比較することはできなかった。この問題はF1 TVやチームへのGPS信号にも影響を及ぼした。メキーズはリンドブラッドがオワードを妨害した件もGPS信号の途切れによるものだと指摘している。
リンドブラッドは来季F1デビューする可能性が高いと噂されるが、現在参戦中のF2でランキング7番手となっている点が指摘されることもある。ただマルコは、F2の成績はドライバーの資質を測る上で信頼できる指標ではないとして、むしろFP1での働きの方がより参考になるという考えを持っている。これは、F2では開発中の持続可能燃料や電気系統に起因するエンジンの問題や、センサー故障による失格処分など、トラブルが多いからだ。
「昨年の(アイザック)ハジャーのように、彼(リンドブラッド)は好成績を挙げたのに失格になったことがあった。これは彼のせいではない」とマルコ。
「昨年も、(アンドレア・キミ)アントネッリや(オリバー)ベアマンも選手権のフロントランナーではなかった。これ(F1でのFP1)の方が本当のポテンシャルが分かる」
「彼は終始冷静で、興奮しすぎることもなかった。彼の技術的フィードバックには深い洞察力があり、要するに……非常に正確な表現だったんだ」

