比例区だけを削る維新案に公明党や共産党は猛反発
さらに、吉村氏は1割削減を衆院の比例区削減で求めている。衆院は小選挙区比例代表並立制で定数465のうち、小選挙区289、比例区176。比例176から定数の1割を50として引くなら126になる。
個人名を書いて1選挙区から一人しか当選できない小選挙区は大政党有利だが、政党名で投票できる比例区は小中政党にとって有利だ。
元々は1994年の平成の政治改革のときに、政権交代可能な二大政党制への移行を想定して小選挙区制の導入を決めた。そのとき、中小政党のために比例区制度も織り交ぜるということで小選挙区300、比例200で定数500、という3:2の配分が決められた。
そんな経緯があるため、比例区だけを削る維新案に公明党や共産党は猛反発する。参政党やチームみらいという新興政党も反対を表明している。
みらいの安野貴博代表は「私みたいなスタートアップは消える。政治の世界の新陳代謝を低下させる」と真っ向から反対の論陣をはっている。さらに安野氏は続ける。
比例復活が問題なら、定数削減でなく制度変更すればいい
「身を切る改革というなら、議員定数削減ではなくて議員の歳費(給与)を削ればいい。比例復活のゾンビ議員が問題なら、定数削減ではなく制度を変更すればいい」
いずれもごもっともだ、という正論だろう。「身を切る改革」で議員定数削減するというのは維新の看板政策だ。2011年には大阪府議会の定数を118から88に2割削減した。吉村氏らは「維新の原点だ」と胸をはるが、その後の大阪府議会はどうなっただろうか?
中選挙区に近かった制度が、一つの選挙区から一人しか当選しない小選挙区が全体の7割程度まで激増した。一つの選挙区から数人が当選する中選挙区制度と違って、少選挙区だと1位の候補だけが当選していくため、そのときの支持率次第では一つの政党が大勝することもある。
2015年の府議選では定数88のうち50議席以上を維新が占めて、一人勝ちだった。つまり、「身を切る改革」を掲げつつ、結果的には自分たちに有利な選挙制度に変わっただけのようにもみえるのだ。
自民党内でも選挙制度を検討している「選挙制度調査会」の逢沢一郎会長は16日には自身のX(ツイッター)で「身を切る改革イコール議員定数削減ではない。自民、維新でいきなり削減は論外です」と批判した。逢沢氏は与野党で選挙制度を協議する「選挙制度協議会」の座長でもある。
これまで国会の慣習として、国会議員の身分に関わる選挙制度や議員定数は与野党の合意を前提にしてきた。今回の自民と維新の約束を本当に今国会で果たすには、野党の反対を押しのけ、自民党内の反対も押さえつけないといけない。高市総理はまず逢沢氏を更迭しないと始まらないだろう。
さらに、自民と維新は衆参両院で少数与党だ。衆院で2議席、参院で5議席足りないため、他の野党からの協力がなければ定数削減の法案は通せない。

