今年のGⅡ・神戸新聞杯(阪神・芝2400メートル、3歳牡・牝)の出走馬は、わずか10頭。このうち春のクラシック戦線(皐月賞、ダービー)を経てきた参戦馬は、エリキングとショウヘイとジョバンニの3頭しかいない。神戸新聞杯がGⅠ・菊花賞(京都・芝3000メートル)のトライアル競走に位置付けられているにもかかわらず、だ。
この点は春のクラシック戦線でライバルを捻じ伏せた有力馬が、適距離を求めて次々と菊花賞を回避したことと軌を一にしている。例えばダービー馬クロワデュノールはフランスの凱旋門賞、皐月賞馬ミュージアムマイルは天皇賞・秋を選択。ダービー2着のマスカレードボールも同じく天皇賞・秋へ、といった具合だ。
だとすれば、3着までの入線馬に菊花賞への優先出走権が与えられる神戸新聞杯の今年の激アツ馬は、鬼の居ぬ間に大一番への最終切符を虎視眈々と狙う「今夏の上がり馬」ということになるのではないか。というわけで、以下の3頭を抜擢する。
1頭目は、前走の積丹特別(札幌・芝2600メートル)で1勝クラスを勝ち上がった、アルマデオロだ。距離を延ばした前走は、2番手から余力十分の手応えで後続を封じた完勝劇。デビュー戦から手綱を取る名手・武豊とのコンビで権利獲りを目指す。
2頭目は、同じく距離を延ばした前走の英彦山特別(小倉・芝2600メートル)で1勝クラスを勝ち上がった、ジョイボーイ。デビュー戦から芝の2400メートルを連続して選択してきことからも明らかなように、まさに「長距離戦でこそ」のステイヤーと言える。
3頭目は、積丹特別4着を叩いた後、前走の北辰特別(札幌・芝2600メートル)で1勝クラスを圧勝した、ボンドロアだ。同馬も距離を延ばしつつパフォーマンスを上げてきた1頭であり、鞍上の横山典弘ともども、一発の気配が漂う。
この3頭以外では、パッションリッチとライトトラックの2頭も、今夏の上がり馬に該当する。しかし距離適性の点で「疑問あり」の感は否めない。
それならば、冒頭で指摘したエリキング以下3頭の、春のクラシック戦績を素直に評価して、前走2600メートル勝利の3頭をこれに続く穴馬とするのが賢明だろう。
(日高次郎/競馬アナリスト)

