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【画像】そういや場所変わってね? HD-2D版のローラ姫救出シーン
言われてみれば確かに…「姫を助けて」とは言ってなかった
シリーズ第1作、ファミコン版『ドラゴンクエスト』の「ローラ姫」は、とらわれの身となっていたところを勇者(主人公)に助け出され、エンディングでは勇者と共に旅立ち、続く第2作『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』の、主人公たちの先祖にあたる子供たちの母となりました。
ところが、そのローラ姫を救出しないままゲームをクリアすることも可能です。HD-2D版『ドラゴンクエストI&II』の発売が控えているので念のため詳細は省きますが、ファミコン版ではローラ姫を救出しないとあるアイテムの入手難度が格段に上がるため、2周目以降はさておき初見では助け出しておきたかったものの、必須というわけではありませんでした。
ローラ姫を救出しなかった場合、もちろんエンディングにも登場せず、勇者はひとり旅立ってしまいます。『ドラクエ2』の物語は始まる前に終わり、王様「ラルス16世」も娘である姫に言及することはありません。ローラ姫、不憫です。
ただ改めてゲームを振り返ってみると、実のところ王様、ローラ姫を救出しろとはひと言も言っていませんでした。王様の勇者への依頼は、「竜王」を倒して「ひかりのたま」を取り戻し「このちに ふたたびへいわをっ!」とあるだけなのです。
勇者がローラ姫の存在を知るのは、ファミコン版では王様の近くに控える兵士からでした。その兵士いわく姫はさらわれて半年で、「おうさまは なにも おっしゃらないが とても くるしんでいるはず。」とか。姫の救出も、この兵士に懇願されています。
つまり王様は娘のことを案じつつも、この地の平和を第一に考え、勇者への依頼に私情を挟むことはしていない、ということでしょう。
そうなると、上述した「勇者ひとり旅立ち」のエンディングも見え方が変わってくるのではないでしょうか。ひと言「姫を探してくれ」と言えば、きっと勇者はサクッと見つけ出してくれるであろうなか王様は、それはそれ、これはこれとして、勇者の旅立ちを見守るのです。
なるほど、それこそが王たる者の姿なのかもしれません。ローラ姫が不憫なことに変わりはありませんけれども……いえ、きっとあのあとすぐに、改めて捜索隊が組織されたものと考えたいところです。平穏になったアレフガルドであれば、もう兵士の犠牲を気に病む必要はありません。
あるいは、勇者がアレフガルドを離れる前に助け出したとか。これなら『ドラクエ2』の物語につながりますね。
支度金の少なさから「ケチな王様」などと揶揄されがちではありますが、実は最初のあのシーンから最後まで、実に王らしい王としての振る舞いが垣間見られるのでした。
