中高年以上の世代は、料理は妻任せ、もしくは外食で済ます人が多くありませんか。これからは男も料理をするのが当たり前の時代です。老後に始める趣味としても、料理ほど楽しいものはありません。
かく言う私は「漫画家ではなく料理人になろうか」と真剣に考えていた時期もあったぐらいですから、自分でもよく作ります。このページでは、「これなら俺も作ってみよう」と思わせる「弘兼流簡単メシ」をはじめとして料理に纏わるあれこれを語っていきたいと思います。
いちばん最初に紹介するのは「チャーハン」。
高級中華の主役といえば、北京ダックやフカヒレの姿煮などで、チャーハンは脇役になりがちです。材料も、基本は、米、卵、豚肉、海老など、いたってシンプル。でも、だからこそ奥深く、お店によってバリエーションを加えやすい。チャーハンといっても、さまざまなのです。
私は町中華が好きで週に何回かは食べに行きますが、いちばん好きなのがチャーハンです。特にチャーハンは、ホテルの中華料理店などで出される高級チャーハンより、町中華の庶民的なほうが好きです。
よく足を運ぶのが、仕事場近くの上石神井(練馬区)にある「梁山泊」。名物の「肉あんかけチャーハン」は、卵で仕上げたシンプルなチャーハンに、細切りの豚肉をたっぷり使ったあんがかかっています。
ラジオ出演のため浜松町(港区)に行く際によく食べる「新福菜館 浜松町店」の「焼きめし」もお気に入り。見た目からインパクトのある黒チャーハンで、その秘密は濃口醬油ベースの秘伝ダレでクセになる味わいです。
もちろん、家でも作ります。チャーハンほど簡単にできる料理はありません。家で作ると火力が弱いのでフライパンに焦げつきやすいです。しかし、ちょっとしたひと手間でうまく作れます。
ここで「弘兼流・チャーハン」を教えます。
材料は、シンプルに卵と冷飯。事前に溶いた卵に鶏がらスープの素をやや多めに入れてください。冷や飯は前の日に残ったご飯をラップをかけずに冷蔵庫に入れておいてください。冷蔵庫に入れると水分が飛んでご飯はパラパラになるからです。
まずフライパンに油をちょっと多めに入れて、卵をジャーッと入れて炒めてください。火が通ったらいったん取り出し別皿に上げてください。火を止めて、もう一度、油を引いた鍋に、冷や飯を投入。油でご飯をコーティングするように絡めてください。
ある程度ほぐれたら、先ほどの卵を投入して一気に炒めてください。仕上げに塩と醬油を鍋肌からジャーッとかけて出来上がり。焦がしたほうが風味が出ます。好みで、刻みネギ、黒コショー、高菜、ザーサイ、ソーセージなど、冷蔵庫の余っている材料をプラスしてもいいでしょう。
あと、冷や飯の代わりにパックご飯を使ってもOKです。レンジでチンせず硬い状態でフライパンで油と馴染むようにほぐして炒めるとOKです。パラパラにしたければ、焦がさないようにフライパンを持ち上げて時間をかけて炒めてください。
ぜひ皆さんも試してみてください。
弘兼憲史(ひろかね・けんし)1947年、山口県生まれ。早稲田大学法学部卒。松下電器産業(現パナソニック)に勤務後、74年漫画家デビュー。以来『課長 島耕作』『黄昏流星群』などヒット作を次々生み出している。07年には紫綬褒章を受章。

