中国による高市首相批判がエスカレートしている背景には、日本の後ろ盾であるアメリカのトランプ大統領の姿勢があるという。国内金融系シンクタンク研究員が分析する。
「中国の高市叩きの狙いは『発言撤回』『首相辞任』。中国にちょっかいとここまでやるよ、というのを世界に示すことです」
今、日本に厳しく対処しても、トランプ大統領は2つの理由で中国には強硬に出ない、との確信を持っているというのだ。
「ひとつめの理由は、10月30日の米中首脳会談によって、対立していた米中貿易戦争が『休戦』となり、握手したばかりであること。つまり中国の世界戦略の切り札であるレアアースのアメリカ輸出を継続することになり、アメリカも関税措置を緩和した。さらに来年4月には、トランプ大統領の訪中を約束した」(前出・シンクタンク研究員)
そのためアメリカの一部メディア関係者、国防関係者の間では、米中貿易の円滑化のため、トランプ大統領は台湾問題で「大統領期間中は不関与」の密約でもあったのかと囁かれている。
ふたつめはトランプ大統領の「高市発言」に対する反応だ。シンクタンク研究員が続けて解説する。
「トランプ大統領は11月10日放送のFOXニュースのインタビューで、高市首相の『台湾有事は存立危機事態』という国会答弁と、それを受けた中国の薛剣在大阪総領事の『首を斬る』という表現を使ったSNS発信について問われると、沈黙しました。さらにインタビューアーから『中国は友人とはいえないのでは』と尋ねられて『(日本を含め)多くの同盟国も友人ではない。貿易で中国以上に我々を利用してきた』と、逆に日本批判を展開しました」
こうした中、アメリカの上院外交委員会で11月20日、台湾政策に関する公聴会が開かれ、米シンクタンク「ジャーマン・マーシャル・ファンド」のボニー・グレイザー部長など専門家の間から「台湾世論で有事の際にアメリカが台湾を守る、という信頼性への疑問が高まっている」との厳しい指摘が出たという。
その背景には、トランプ政権が台湾に高関税を課した事実がある。また頼清徳総統が今年夏、外交関係を持つ南米歴訪を準備した際、アメリカ立ち寄りが慣例となっていたが、トランプ政権がニューヨーク入りを認めなかったことが挙げられた。
一方でトランプ支持派の間では「トランプは中国を刺激しないように沈黙しながらも、内実では台湾援護をジワジワ進めている。トランプ独特のデイール、ステルス作戦だ」という声もある。
アメリカ政府はF16戦闘機の部品など、台湾へのおよそ510億円相当の武器売却を承認。中国は猛反発だ。さらに米上院で11月18日に可決された「台湾保証実施法案」がある。
「これは台湾との公式交流をより自由にするための法案です。アメリカはこれまで、ひとつの中国を認めている関係上、外交や軍事などで政府関係者が台湾側の関係者と交流することにレッドラインを設けてきた。今回の法案は制限を段階的に取り払うことに重点を置く、画期的なもの。最終的にトランプ大統領が署名すれば成立です」(アメリカメディア関係者)
こうして見てくると、もつれる日中関係はトランプ大統領が台湾問題、米中関係、日米関係で次にどう発言し、行動するかが焦点となる。
(田村建光)

