
『ウルトラマン HDリマスター版』ビジュアル (C)円谷プロ
【画像】「えっ、また喋ったのか」これが『初代』の56年後にウルトラマンの声を演じたイケメン俳優です(4枚)
まさかの「おまえもやってみろ」のひと声で?
初代「ウルトラマン」は、戦闘中に「ヤー!」「ハー!」といった掛け声を出し、飛び立つときには、「シュワッチ!」などと叫びますが、ハッキリとセリフで言葉をしゃべったのは、第1話と最終話(第39話)の2回しかありません。みなさん、あのウルトラマンの声の主は誰なのか、気になったことはありませんか?
「初トーク」のシーンを振り返ってみましょう。第1話、宇宙怪獣「ベムラー」を追って地球にやってきたウルトラマンが、「ハヤタ隊員」が乗る小型ビートル号と衝突。そして、幻想的な雰囲気のなかでふたりが会話をします。
ハヤタの「君はいったい何者だ?」という問いかけに、ウルトラマンが返した最初の言葉は、「M78星雲の宇宙人だ」、そして「遠い宇宙からベムラーを……」と続けます。少し低い声、無機質で感情の薄い口調、エフェクトをかけるなどの加工を施してあるので、元の声とは大きく変わっているはずです。これは、いったい誰の声なのでしょう?
まず、多くの人が思い浮かべるのが、『ウルトラマン』でナレーションをつとめた浦野光さんか石坂浩二さんでしょう。でも、このふたりではありません。
そこで浮上するのは、「ヤー!」「シュワッチ!」など、戦闘中の掛け声を担当している人です。この声は、俳優の中曽根雅夫さんという方でした。第1話のセリフ部分も、この中曽根さんがしゃべる……予定だったのですが。

ウルトラマンが再び言葉を発した最終話「さらばウルトラマン」が収録された、「DVDウルトラマン vol.10」(ハピネット・ピクチャーズ)
第1話のアフレコは、東宝撮影所内にあるキヌタ・ラボラトリーの録音スタジオで行われました。出演者たちのアフレコが終了して、中曽根さんの順番が回ってきました。しかし本人がいません。遅刻でした。ウルトラマンがしゃべるシーンは、しゃべる長さで映像の時間を決めることにしていて、しかも、これが本編におけるウルトラマンのファーストカットでもあったので、とても重要でした。
中曽根さんが来ないので、セリフの長さだけはかるために円谷一監督がブースに入ってセリフをしゃべることになったのですが、しばらくして監督が、「おい、おまえも入ってやってみろ! 交代!」と、ご指名が入りました。指名を受けたのは、編集技師の「近藤久」さん。近藤さんは、ウルトラマンのセリフを発し、遊び半分で録音もしたそうです。
そこへ、ようやく中曽根さんが到着します。ところが、円谷監督はご立腹で「撮り終わったからもういい」と追い返してしまいました。えっ……「撮り終わった?」と思ったのは近藤さんです。監督は、「フィードバックでエフェクトをかけるから大丈夫だよ」と言って、遊び半分で録音した近藤さんの声を放送で使うと決めたのです。
この瞬間、なんと、ウルトラマンの声は、編集技師「近藤久」さんに確定しました。たまたま監督の近くにいたスタッフが、このあと国民的大スターになるヒーローの声に抜擢されたのです。
この経緯から、最終回の「ゾフィー」と対話するウルトラマンの声も、近藤さんが担当することになりました。近藤さんはある雑誌インタビューで、「本当に思いもかけずこのようなことになり、誠にお恥ずかしい限り……」と話しています。ただ、円谷監督もウルトラマンの声のイメージにマッチしたからOKを出したのだと思います。
今も印象に残る、あの「ウルトラマン」の声の主は、収録時にたまたま居合わせたスタッフだったとは、なかなかほのぼのしたエピソードでした。
※資料「ウルトラマン研究読本」(洋泉社)
