食楽web

 “ニャンニャン、マンマン”といえば? と聞かれてすぐに「スタミナ!」と答えられる人は、おそらく埼玉県民だけではないでしょうか。

 ここで言う“スタミナ”とは、埼玉県のご当地グルメ「スタミナラーメン」のこと。それを看板料理にしているのが、『娘娘(ニャンニャン)』、『漫々亭(マンマンテイ)』という2つの老舗中華料理の姉妹店で、さいたま市周辺に9店舗あります。

 筆者がこの名前を知ったのは、さいたま市(旧:浦和市)出身の同僚に「無性に食べたくなるもの」を聞いた時に、即答で「スタミナラーメンとスタカレー!」と返ってきたのがきっかけ。それまでスタミナラーメンなるものを知らなかったので、一体どんな食べ物か、まったく見当がつきませんでした。

 同僚いわく、ひき肉やニラ、豆板醤で作るピリ辛の餡=“スタミナ餡”を、醤油スープのラーメンにかけたものが「スタミナラーメン」、ライスにかけたのが「スタミナカレー(通称:スタカレー)」と呼ぶとのこと。

 それを聞いて、筆者は勝手に、名古屋発祥の「台湾ラーメン」に近い味なのかな? と想像しました。しかし先日、同僚の案内で「スタミナラーメン」を埼玉県まで食べに行って、全然違う食べものであることが判明したので、そのスタミナラーメンの全貌をご紹介したいと思います。

“漫々依存症”になってしまう独自の味わいとは?


『漫々亭』と『娘娘』は、もともとは同じ会社が経営していたそうです

 というわけで、訪れたのは、さいたま市西区にある『漫々亭』。最寄駅のJR指扇駅から徒歩25分という、やや辺鄙なロードサイドにあり、我々は昼営業の終わる14時前にギリギリ到着できました。

 店の赤いひさしがド派手なので、遠くからでもすぐわかりました。何しろ手書きで「一口食べたら頬が落ち、二口食べたら首が落ちちゃう旨さ。漫々依存症、特効薬ありません」という面白いキャッチコピーがデカデカと書かれているのです。

 いざ店内に入ると、いわゆる町中華店のゆるい雰囲気。いい感じです。壁にはたくさんの有名人のサイン色紙や写真が飾られていて、テレビや雑誌などのメディアにも多数とり上げられているようです。


店内のメニュー。気になるメニューが多数ありますが、スタミナラーメン+半バラ丼+餃子が揃い踏みの「定番」(1000円)がおトク!

 メニューを見ると、「スタミナラーメン」も「スタカレー」も650円。最近、都内ではラーメンやカレーは1000円前後するのが当たり前なので、かなり良心的ですね。ちなみに説明書きによれば、“スタミナ餡”のことは“辛挽肉餡”と呼んでいるようで、スタミナラーメンは“辛挽肉餡かけそば”と書いてありました。


初訪店の人にもわかりやすい説明書き入りのメニュー

 そして、お店自慢の3品をセットにした「定番セット」(1000円)は、スタミナラーメン+半バラ丼+餃子で、200円もお得。そこで、その「定番セット」と、「スタカレー」(650円)を注文してみることに。

「定番とスタカレーください!」とご主人に告げると、「ごめんね、スタミナ餡がラスト1個なんですよ」と言われました。つまり、スタミナシリーズは1食分しか頼めないということ。我々の到着が遅かったので、これは仕方ありません。「定番セット」は絶対頼むとして、もう一品をどうするか…。そこで、ご主人に他にオススメを聞いてみると、「初めてなら、ウチはやきそばが美味しいよ」と教えてくれました。

「焼きそばか…」。一瞬、悩みます。いや、焼きそばは大好きなんですが、わざわざ埼玉まで来て焼きそばでいいんだろうか、とあまりにも普通すぎる料理名に戸惑いました。が、わざわざ勧めてくれたのにそれが美味しくないはずがない! と思い直し、「定番セット」とご主人イチオシの「やきそば」(800円)を注文することにしました。


これがさいたま県のソウルフード「スタミナラーメン」だ!

 待つこと5~6分。最初に登場したのは、定番セットです。スタミナラーメンと、お茶碗1杯分の半バラ丼、小ぶりの餃子3つです。素晴らしくいい匂いがします。うーん、美味しそう!

 スタミナラーメンは、ひき肉餡が丼の中央に鎮座し、周りには生の刻みニラが浮かんでいます。まずはひと口スープをすすってみると、とろみ強めで、やや甘めの肉餡。と思いきや、後からピリッとほどよい辛さが現れ、さらに生姜の風味も押し寄せてきます。


スタミナ餡と麺とのからみが最高です

 スープの下には艷やかな中太ちぢれ麺。箸で掘り起こしてすすり上げると、とろみのある肉餡とスープをしっかり絡め取り、醤油スープの滋味深い味と、肉餡の甘辛味が口中で絶妙なハーモニーとなって広がります。こ、これは…。とがった辛味でパンチのある台湾ラーメンとは全然違います。やさしい味なのにピリリとして、しかもウマい! 塩味や辛味、甘みに偏りがなく、ものすごくバランスが取れた味なんです。

 感動冷めやらぬまま、続いて、半バラ丼を食べてみます。


半バラ丼。単品は400円

 バラ丼は、スタミナ餡(辛挽肉餡)の挽き肉の代わりに豚バラ肉を入れた餡をご飯にぶっかけたもの。ご覧のように、豚バラがたくさん入っているのがわかります。その半量のミニサイズが半バラ丼です。

 食べてみると、こちらもとろとろの餡。しかしスタミナ餡とは違い、甘さがより際立っていて、ごはんとの相性は抜群。いわゆる“飲むように食べられる”丼ぶりです。卓上の自家製ラー油を少し垂らすと、ピリッと味が引き締まり、これまた旨し!

 さらにセットの餃子は3つ。一口サイズで八角の風味が効いていて、小さいながらものすごくインパクトのある味です。いや~、しかし何もかも想像していたより遥かに美味しいです!


「やきそば」800円

 そして最後に登場したのが、ご主人がオススメしてくれた「やきそば」。結論から言うと、これがスゴかった!

 お皿にこんもり、1人前とは思えないほどのボリューム。具材には大量のもやし、ニラ、ニンジン、豚バラが入っていて、味は中華だしをベースにした塩味です。シンプルですが、一口食べて思わず「ウマっ!」と声が漏れ、『漫々亭』でやきそばは初体験という同僚と顔を見合わせてしまったほど、めちゃくちゃ美味しいです。


野菜たっぷりでヘルシーなやきそば

 シャキシャキのもやし、中太麺と具材の火の通り具合、中華スープの旨味、すべてが最高! 麺の上にのっている辛味噌を混ぜて食べると、さらに香ばしいピリ辛味が広がって美味。同僚と奪い合うように完食しました。

 というわけで、名物のスタミナラーメンは言うに及ばず、半バラ丼、餃子、シンプルな焼きそばまですべて絶品でした。長年、埼玉県民のソウルフードとして親しまれている老舗中華店だけあって、さすがのひと言。店のひさしに書いてあったとおり、“漫々依存症”になるのがわかる気がします。食べたことがない人は、ぜひ『漫々亭』に行ってみてください。美味しすぎて、ほっぺたも首も落ちるかもしれませんよ。

(撮影・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

店名:漫々亭

住:埼玉県さいたま市西区西遊馬343
TEL:048-622-4512
営:11:30~14:00、18:00~22:00、日11:30~15:00
休:月・第3火