50年代オートクチュールをフレッシュによみがえらせたシャネル【2023年春夏パリコレクション】

オートクチュールやパリ、ミラノコレクションの取材を続けているファッション・ディレクターの萩原輝美さんによる最新コレクションリポート。今回は、2023年春夏パリコレクションでアラン・レネ監督の映画『去年マリエンバートで』を着想源にショーの世界観を構築した「シャネル」について。

「シャネル」のコレクション会場に入ると、床、壁、天井いっぱいにモノクロ写真がコラージュされています。インビテーションも、そのモノクロ写真が大きなブックとして届きました。

ショーのステージでは、創業者のガブリエル・シャネルのオートクチュールが登場するアラン・レネ監督の『去年マリエンバートで』のフィルムが上映されています。1961年に公開された、バロック様式の庭園が登場する幻想的なモノクロ映画ですが、ブラックの羽のドレスやシルクの箔ドレスは印象的でした。

アーティスティック ディレクターのヴィルジニー・ヴィアールは、そのヌーベルバーグ映画からインスパイアされたコレクションを披露し、フィルムを背景にモデルを登場させました。ファーストルックはコラージュされたモノクロ写真のプリントに黒のショートパンツを合わせ、シフォンのケープを羽織っています。映画衣装のディテールを取り入れながら、ぐっとモダンなスタイルに仕上げています。

ミドリフ丈のレザーやツイードのジャケットには、ミニスカートやランジェリー風のショートパンツを合わせてコケティッシュに。ネットのニーハイソックスやリボンのついたバレエシューズで若さを添えています。パステルカラーの千鳥格子のツイードにはフェザーやビジューをつけながら、そぎ落としたフォルムが軽やかな仕上がりです。

text: Terumi Hagiwara