文具のとびら編集部

日本能率協会マネジメントセンター(以下JMAM)が販売するNOLTYのフラッグシップモデル「NOLTY 能率手帳ゴールド」は、2023年版で誕生から60周年を迎えた。これを記念して、普段は一般公開していない手帳製造の現場を特別に見学できることになった。そこで本サイトでは、「NOLTY工場見学ツアー」と銘打って参加者を募り、2023年2月1日にツアーを実施した。

当日の参加者は、「文具のとびら」編集長の高畑正幸文具王をはじめ編集部スタッフ3名、そして抽選で選ばれた2組4名の文とび読者の方々の総勢8名。普段は一般に公開していない手帳製造の現場に入れてもらい、印刷から製本まで、一冊の手帳ができあがる工程を詳しく解説してもらうという、至福のひとときを過ごすことができた。

その模様をリポートしよう。

手帳製造の現場へ

訪れたのは、東京・板橋区にあるJMAM100%子会社の新寿堂。NOLTY手帳のおよそ8割をここで製本しているそうで、「NOLTY手帳のクオリティを支えてくれている工場です」という。


玄関にウェルカムボードが用意されていた

工場見学に先立ち、新寿堂の方が手帳の製本工程について説明してくれた。

その製本工程を簡単に説明すると、
印刷→大断ち(断裁)→折り→丁合い(折った用紙を1枚ごとにページ順に束にする工程)→糸かがり→ならし(プレス)→背固め(背部分に糊付け)→見返し貼り→背巻き→紙表紙くるみ→三方断裁→検品・セット・出荷
このほか、小口塗りやしおり付け、インデックスなどのオプション工程もある。

ひと通り説明を受け、工場へと移動した。

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いよいよ工場見学!

機械音が威勢よく響く工場に入り、まずは印刷機の前に案内された。CMYK(青・赤・黄・黒)の4色インクでの印刷ではなく、印刷する手帳に合わせた特色での印刷となるのが、一般の印刷物との違いだという。

手帳の用紙は薄く、しかも印刷面が少ないので、難しいとのこと。そこで、印刷機のスピードを落とし、250枚に一度、目視検査で濃度、表裏ズレ、欠け、カスレのチェックを行っている。

続いて大断ちの工程。断裁機で元々の紙のゆがみ、印刷時の紙の伸びを正確な四角形にする。用紙に印刷されたわずか0.2㎜程度のトンボと呼ばれる断裁線の中心を一気に断つのだが、熟練の人しかできない重要な工程だという。

印刷したものを折る工程。折りトンボだけでなく、日記欄の罫線や絵柄が前後のページで揃っているかまで確認しながら折っていく。「折りの精度は製本業界でもトップクラス」という。

折った用紙を1枚ごとにページ順に束にする丁合い工程。積み上がった紙の束が、下から1枚ずつ順々に抜かれて丁合いされる。

丁合いした束を糸で縫い合わせる糸かがり工程。目にもとまらぬ速さで糸が縫われ、手帳らしくなった姿で次々と現れる。

背固め(ローラーで背中部分に糊付けを行う)、見返し貼り、背巻き(寒冷紗というガーゼ状のテープを貼る)、表紙(紙表紙)くるみ工程を1台の機械で一気に行う。

くるみ製本は、手帳本体と表紙が直接接着しているタイプは、通常は機械で行うが、機械ではできない複雑な仕様の能率手帳の場合は、写真のように手作業で行う。熟練の手くるみの技を、じっくりと拝見した。

オプション工程についてもいくつか見学させてもらった。小口(背以外の三方の辺のこと)塗り工程は、手垢で汚れたり、日焼けなどで紙が変色するのを防ぐ目的(あるいはデザイン的な目的)で行うもの。使っている刷毛は、熊の毛を使っているそうだ。小口塗りしたところを機械で磨いて艶を出す小口磨き工程(右写真)もある。

小口は、色塗りのほかに、箔付け加工もできる。今回は、「能率手帳ゴールド」でおなじみの本金箔付けの作業を拝見した。


金箔付けは機械で行っている(左)。キラキラと金色に輝く小口が美しい(右)。右写真手前に並ぶ各種箔ロールの中で、一番左にあるのが本金箔のロールとのこと。

こうした手帳の製造工程は、気温や湿度などの条件に合わせて細やかに微調整をしたうえで行われているそう。「紙は生き物なので」という工場長の言葉が印象的だった。