大麦に含まれる水溶性食物繊維(β‐グルカン)は、余分な中性脂肪やコレステロールの吸収を抑制し、糖質の吸収を緩やかにして、さらに腸内環境も改善します。米といっしょに炊いて麦ご飯にして継続的にとるのがお勧めですが、発酵食品と組み合わせるのもよい方法です。【解説】赤石定典(東京慈恵会医科大学附属病院栄養部係長・管理栄養士)

解説者のプロフィール

赤石定典(あかいし・さだのり)

東京慈恵会医科大学附属病院栄養部係長。管理栄養士。栄養管理のプロとして栄養に関する研究を行い、入院患者の献立の作成や、患者に直接栄養管理の指導やアドバイスも行う。勤務する東京慈恵会医科大学附属病院栄養部が監修した書籍に、『慈恵大学病院のおいしい大麦レシピ』(出版文化社)、『慈恵医大病院が考えた、やせ麦丼 』(主婦と生活社)がある。

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血糖値抑制や降圧作用に優れた大麦

私が管理栄養士として勤務する東京慈恵会医科大学附属病院では、以前から入院患者さんに病院食として「大麦」を使った麦ご飯を提供しています。

大麦の効能に着目し、海軍の脚気(ビタミンB1によって起こる病気)撲滅運動で大きな成果を上げた研究者、高木兼寛先生が慈恵医大の創設者であるためです。

近年、その大麦の持つ健康効果に大きな注目が集まっています。実際、私たちの病院でも、大麦は患者さんたちの健康増進の一助になっています。

大麦の主な健康効果は、次の3つです。

①生活習慣病の予防、改善

大麦に含まれる水溶性食物繊維(β‐グルカン)は、体内の余分な中性脂肪やコレステロールを吸着し、吸収を抑制。これにより、脂質異常症を予防・改善します。

脂質異常症は、血液中の中性脂肪やコレステロールが増え過ぎた状態で、動脈硬化の原因になります。さらにそれが悪化すれば、心筋梗塞や脳梗塞といった心血管疾患へつながるおそれもありますから、脂質異常症を予防・改善することは、健康を維持するうえで重要な役割を果たすといえるのです。

β‐グルカンが豊富であることは、糖尿病の予防や改善にも役立ちます。まず、β‐グルカンには、糖質の吸収を緩やかにし、血糖値の急上昇を防ぐ働きがあります。

また、β‐グルカンをとることで、次の食事のあとの血糖値上昇を抑制する「セカンドミール効果」も得られます。大麦を頻繁にとれば、血糖値の上昇を抑制する効果が持続的に働くというわけです。

さらには、大麦には降圧作用のあるカリウムが、米の2倍も含まれていることも見逃せません。常食すれば、降圧効果も期待でき、高血圧の予防や改善にもつながるでしょう。

②ダイエット効果

こうした生活習慣病に対するもろもろの作用は、ダイエットにも有効です。

先述のとおり、β‐グルカンが中性脂肪やコレステロールの吸収を抑制すると、内臓脂肪の減少が促されます。それにより、肥満、ひいてはメタボの改善にもつながります。

また、大麦は腹持ちがよく、空腹感を感じることが少ないので、無理なく食べ過ぎを防げるのもメリットです。

③腸内環境の改善

麦ご飯1膳(150g)には、β‐グルカンをはじめとする食物繊維が通常の白米の約5倍含まれています(米と大麦を7:3で配合した場合)。

食物繊維は便に水分を含ませ、やわらかくするため、便秘の解消につながります。それにより腸内環境が改善し、肌トラブルの解消や、免疫力アップなどの効果も期待できます。