「ディオール」インド・ムンバイで現地の刺繍をふんだんにあしらった最新コレクション

「ディオール」がインド・ムンバイで2023年フォール コレクションを発表。インドのサヴォワールフェールを讃えるとともに、メゾンの創設者と後継者たちへのオマージュを込めた。

伝統的装飾を飾った「インド門」前広場がショー会場に

3月に「ディオール」の2023年フォール コレクションがインド・ムンバイにて発表された。クリエイティブ ディレクターのマリア・グラツィア・キウリが長年に渡って育んできたインドとの関係性やコラボレーション、友情を表現するとともに、ムッシュ ディオールやマルク・ボアンへのオマージュを捧げた。

ショーの会場はインドにおいて最も重要なモニュメントのひとつ、「インド門」前の広場。「インド門」を背景に設置されたアーチには手刺繍による壮大なトーランが飾られ、ランウェイの両サイドには何万本もの切り花で象やフラワーモチーフを表現した。音楽はアヌラーダ・パルによるタブラ&マルチパーカッションとインド交響楽団の生演奏。


インドで戸口に飾られる伝統装飾「トーラン」に着想を得たアーチは高さ約8メートル。テキスタイルにはチャーナキヤ工房とチャーナキヤ工芸学校の300人を超える職人たちが3万5000時間かけて刺繍を施した


切花で花や象を描いたモニュメント

ファーストルックは上下ブラックのバンドカラーチュニックとラップスカート。南インドに伝わる技法で織られたシルクがしなやかなドレープを描く。


ブラックシャツにパールのネックレスが映える

ブラック、ホワイト、サンドベージュといったニュートラルなカラーパレットを基調に、グリーン、イエロー、ピンク、パープルといった鮮やかな色が加わった。フラワーモチーフやアニマルモチーフの柄はプリントやビーズ刺繍だ。シルエットはサリーやバンジャビ・ドレスといったインドの伝統的衣装に着想を得ており、ワンショルダードレスやボレロ、スタンドカラーのジャケット、コート、ストレートスカートなどが登場した。


サイドが大きくあいたドレス


メンズライクなスタンドカラージャケットとパンツ


ヴィヴィッドカラーが映える、シンプルなコートとパンツ


ワンショルダードレスはインドの伝統的衣装サリーがインスピレーションソース

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インドの伝統的素材と刺繍技法、シルエットを用いたコレクション

このコレクションの見どころは、なんといってもインドのサヴォワールフェールとのコラボレーションだ。ひとつひとつ版木を手押しする「ブロックプリンティング」、ジャケットを複雑な幾何学模様で縁取る「コーチングステッチ」、フック針を用いてビーズやマイクロスパンコールを刺繍する「アーリ刺繍」、インドの王室で初めて披露されたといわれるマイクロ地金テクニックの「ザルドジ刺繍」。どの技術も熟練した職人が手作業で時間をかけておこなう繊細な作業だ。ビーズやスパンコール、ミラーやメタリックヤーンを用いて現代的なエッセンスも加えている。


©Melinda Triana


ラージャスターン州で生まれた「ブロックプリンティング」技法。布地に版木をひとつひとつ手で押してプリントする。


「ブロックプリンティング」をほどこしたドレス


「アーリ刺繍」でビーズやスパンコールを刺繍しても衣服が重くならないようにする技術は熟練の手仕事だからこそ


「アーリ刺繍」によるビーズとスパンコールが輝くミニドレス


「コーチングステッチ」で正確な曲線を描くには、1ミリ単位の精密で高度な技術が求められる


「コーチング」技術による縁取りが施されたジャケット


©Melinda Triana


マイクロ地金テクニックを使用した「ザルドジ刺繍」。シルクのオーガンジーを使い、インドのエメラルドやルビーを連想される装飾が施されている


©Melinda Triana


「ザルドジ刺繍」のトップスとシルクスカート

刺繍などのメインコラボレーターは、ムンバイのチャーナキヤ工房とチャーナキヤ工芸学校。インドのハイレベルな職人技に光を当て、主に男性の領域であった刺繍技術を女性の手に広げ、現地の女性たちが自立できるようサポートをしている。工房での作業を通じて生まれた様々な技術は女性の財産となり、独創性とエンパワーメントを同時に実現する手段となるのだ。

ショー会場にはカーラ・デルヴィーニュやディーヴァ・カッセル、カーリー・クロスをはじめとするたくさんのセレブリティが来場した。


カーラ・デルヴィーニュ


ディーヴァ・カッセル


カーリー・クロス


レティシア・カスタ

text: Yoko Era(arex)、edit: Miyuki Kikuchi