『マリ・クレール』と「ケリング」が考えるサステナブルなファッションの未来

『マリ・クレール』は、「グッチ」や「バレンシアガ」などのブランドを擁するフランスを代表するラグジュアリー・グループ「ケリング」とともに、サステナブル・ファッションに特化した取り組み「FASHION OUR FUTURE」を昨年スタート。その活動の一つとして、環境に配慮したファッション界の未来について意見を交換させるシンポジウムを開催している。今年は昨年のパリから会場をニューヨークのマンハッタンに移し、3月16日、ファッション界のエキスパートや著名なアクティビスト、セレブリティを集めて行われた。

シンポジウムでは、「ケリング・グループ」のチーフ・サステナビリティ・オフィサー兼渉外担当責任者、マリー=クレール・ダヴーが登壇。同社のサステナビリティ戦略における進化とともに、その実現には困難が伴うことも語った。「大きな挑戦ですが、私たちはスケールアップを推し進め、迅速に進化しなくてはなりません。今、考え方や方向性を変える時間はないのです」

女優でプロデューサー、制作会社も運営するケリー・ワシントンも「サステナブル・ファッションは、一時の流行りではなく、豊かな自然環境を維持するために必要なこと」と追随し、今、行動を起こすことの大切さを強調した。


「ケリング」のチーフ・サステナビリティ・オフィサー兼渉外担当責任者、マリー=クレール・ダヴー(左)と『マリ・クレール』インターナショナルのガリア・ルパン(右)

ダヴーは、イノベーションの重要性も訴える。「ケリングはミラノにマテリアル・イノベーション・ラボを所有し、革新的かつサステナブルな4000以上の新素材のサンプルをデザイナーたちに提案しています」

また、サステナブル・ファッションを語る上で注視すべき要素に「社会の力」を挙げたのは、ガーナ出身のデザイナーで「Gromek Institute for Fashion Business」のディレクターも務めるアブリマ・アーウィア。「女性に力を与えることで社会全体を活気づけることになる」と説明する。


再生素材やオーガニック素材、バイオベースによる素材などを使用した「グッチ」のコレクション、さらには、「ボッテガ・ヴェネタ」や「サンローラン」など、「ケリング」の傘下にあるブランドのサステナブルな新作も披露

さらに別のシンポジウムでは、世界で活躍する3人の女性ゲストを迎えて、「ファッションの未来を支える社会とは?」をテーマに、その論議をさらに発展させた。登壇した中国出身のデザイナー、エンジェル・チェンは「ファッション業界はそれに関わる大勢の人たちの共同作業で支えられていて、より明るく、より良い、そして環境に優しい未来に向けて、公平性と多様性、そして包括性が不可欠です」とコメント。アクセサリーデザイナーで、アフリカ系アメリカ人の雇用促進やサポートをする慈善活動にも取り組むオーロラ・ジェームズも「サステナブル・ファッションは業界のトップから消費者に至るまで、すべての人々が意見を出し合い、実行可能な変化を求めていくことが必要。ある国の工場では女性が過酷な労働を強いられていると知りながら、ブランドがフェミニズムを語るのを聞くのは本当に辛いこと」と訴える。しかし、「未来は希望に満ちている」とも。


『マリ・クレール』アメリカ版編集長、サリー・ホームズ(左)が司会を務め、世界で活躍する3名の女性をゲストに招き、「ファッションの未来を支える社会」について、ディスカッションを展開。サリーの隣から、女優で制作会社も営むケリー・ワシントン、中国出身のデザイナー、エンジェル・チェン、アクセサリーデザイナーでアフリカ系アメリカ人の雇用促進やサポートをする慈善活動にも取り組むオーロラ・ジェームズ

ゲストたちは「ファッション界は今、正しい道へと向かっていて、持続可能な未来に到達するには女性が重要な役割を担う」という意見に賛同し、シンポジウムを締めくくった。


会場では、ニューヨーク州立ファッション工科大学の学生がデザインしたサステナブルなコレクションも展示。作品を鑑賞するオーロラ・ジェームズと学生たち