スピーチロックが介護現場で問題視されている理由や4つの悪影響について解説

近年「スピーチロック」が問題視されており、これは何気ない言葉で行動を抑制してしまうことを指します。

介護現場において悪影響を及ぼす可能性が高いため、ケアをする方は意識的に行動を制限しないような声がけを行うことが大切です。

そこで本記事では、介護現場におけるスピーチロックについて、問題視されている理由や高齢者に及ぼす悪影響などについて詳しく解説していきます。

自分はしていないと思っていても無意識に行動を制限をしている可能性も高いので、ぜひ最後まで読んで理解を深めてみてください。

スピーチロックが問題視されているのはなぜ?

問題視されている最大の原因となっている理由が、介護をする側が言葉によって行動を制限していると認識していないのにも関わらず、介護されている側はスピーチロックを受けてしまっているからです。

例えば、介護している方が忙しい場合、「少し待っていてください」と声をかけることも多いですが、実はこの一言が行動を制限するきっかけになっているのです。

「ちょっと待って」と声かけられてしまうと、どれくらいの時間前てばいいのか分からずに行動を制限されてしまいます。

また、自分の考えをうまく伝えられない高齢者に対して「用事がないなら忙しいからまた後でね」と発言してしまうと、自分の考えを抑制されてしまったと感じてしまい、これもスピーチロックに繋がってしまいます。

このように、何気ないシーンで、場合によっては大きな悪影響に繋がってしまうこともあるため、介護する側は発言によって行動を制限しないように意識的に声かけを行う必要があるのです。

特に多くの高齢者に対応しなくてはいけない老人ホームなどの高齢者施設や、家事や仕事と両立して介護をおこなっている方においては、ついつい口調が強くなってしまうことも多いため注意しましょう。

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スピーチロックが及ぼす4つの悪影響

スピーチロックが及ぼす悪影響は下記の4つです。

・ADLが低下する恐れがある

・認知症の症状が悪化する恐れがある

・行動意欲が低下してしまう

・信頼関係の悪化につながる

それぞれの悪影響について詳しく解説していきます。

1.ADL(日常生活動作)が低下する恐れがある

悪影響の中でも特に症状が重いとされているのが日常生活動作(ADL)が低下することです。

ADLが低下してしまうと、お風呂に入る・トイレに行く・段差を乗り越える・歩く・スムーズに話すなど、今まで日常的に行えていたことができなくなってしまうため、要介護度が重症化してしまうのです。

行動を制限されることでADLがすぐに低下するということはありませんが、話しかけたのに相手にしてもらえない、自分の話を聞いてもらえないなどのネガティブな感情が大きなストレスとなって行動意欲が低下してしまいます。

その結果、いままでできていたようなことができなくなってしまいます。

2.認知症の症状が悪化する恐れがある

認知症の高齢者であっても、自分の感情は鮮明に残ることが多いため、強くストレスを感じた場合には長く記憶に残ってしまうこともあります。

発言によって行動を制限されただけでは強く印象に残らないと思うかもしれません。

しかし、実は行動を制限されることで、自分の気持ちを無視された、訳もわからず怒られてしまったなどの強い負の感情が残ることも多く、結果として被害を受けたと勘違いしてしまい記憶に強く残ってしまうのです。

このようなトラウマにもなり得る負の感情が認知症患者の記憶に残ると、介護している方への恐怖心や不信感などを感じることはもちろん、ストレスを感じて認知症の症状をさらに悪化させてしまう原因になることもあるのです。

3.行動意欲が低下してしまう

介護を受けている高齢者に限ったことではありませんが、「これはだめ」「今は話せない」「ちょっと待ってて」など、行動を制限され続けるとネガティブな気持ちになってしまい、今後の行動が消極的になってしまいます。

これは認知症患者だけに当てはまることではなく、子どもに対しても同じことが言え、自分の行動を制限できる立場の方に行動を制限され続けてしまうことで、自分から意欲的に行動する気が失せてしまうのです。

また、行動が消極的になった高齢者に対して「頑張ろう」や「やってみよう」などのポジティブな言葉をかけたとしても、その言葉すら否定的に聞こえてしまうことがあります。

そのため、日頃の声かけから強く行動を制限する言葉をかけるのではなく、どうしてそのような行動をしたいのかを理解して寄り添うことが大切になります。

4.信頼関係の悪化につながる

スピーチロックは高齢者にとってストレスになる場合が多いため、繰り返し行うと信頼関係を失ってしまい、さまざまなトラブルになる可能性があります。

いくら介護現場だとしても要介護者もひとりの人間ですので、対等に接する必要がある中で上からものを言うように行動を制限されたと感じてしまったら、温厚な方でも怒りの感情が引き起こる可能性もありますし、スタッフに対して不信感を覚えてしまうこともあります。

また、そのように要介護者が不信感を募らせてしまうと、その親族が面会に来たときに施設への不満を話すことで、最悪の場合親族の方からの信頼を失ってしまうことにも繋がってしまうのです。

このように、要介護者だけではなくその親族との信頼関係を築くためにも日頃の声かけを慎重に行うことが大切になります。