進行するまで「自覚症状ナシ」の恐怖…近年急増している「男性のがん」【医師が解説】

中高年の男性に起こりやすいがんのひとつに「前立腺がん」があります。「前立腺がんはたいしたことない」「がんのなかではましなほうだ」といった声も聞かれますが、年齢を重ねていくにつれてどんどん発症リスクが高まり注意する必要があると、MYメディカルクリニック横浜みなとみらいの山本康博院長はいいます。今回は、そんな「前立腺がん」の原因と予防法についてみていきましょう。

1.「前立腺がん」は“放っておいていい”?

「前立腺がんは進行が遅くて、がんのなかでは“良いがん”である」
「前立腺がんは、“天寿のがん”だ」

前立腺がんというと、一般的には上記のように「あまり怖いガンではない」といわれることが多いです。“天寿のがん”というのは、前立腺がんは進行が遅いため、がんで命を落とすより先に他の病気や老衰で亡くなるケースが多いことから、そういわれているようです。

たしかに前立腺がんは、肺がんや胃がん、大腸がんなどと比べて進行は遅く、かつ生存率が高いというのは事実です。がん研究センターからも、前立腺がんの10年生存率はほぼ100%というデータが報告されています。

しかし、これは「前立腺がんは放っておいていい」「進行してから治療すればいい」というわけでは決してありません。最初の治療がうまくいかなければ、5年以上にわたって再発や転移と闘いながら治療を続けることになってしまいます。

以前は平均寿命が短く、亡くなったあとに前立腺がんがあったことが発覚するケースも多くありましたが、「人生100年時代」といわれる現在においては、決して見逃してはいけない疾患なのです。

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2.「夜、トイレに行くことが増えた」は要注意!前立腺がんの症状

前立腺がんは主に、前立腺の「外腺」と呼ばれる辺縁の部分に発生します。他の臓器のがんに比べて、とてもゆっくりと進行することが特徴です。そのため、早期に発見できれば他のがんよりも治る可能性の高いがんであるといえます。しかし、初期は自覚症状がほとんどないため、発見が遅れてしまうことが多いです。

早期~中期程度の段階では自覚症状がほとんどありませんが、進行すると前立腺自体がだんだん大きくなっていきます。そのため、「前立腺肥大症」の症状として連想されるような排尿障害や下腹部の不快感などが現れることがあります。

以下のような症状が出た場合、前立腺肥大の可能性もありますが、前立腺がんの初期症状であることも考えられるため、検査を受けることをおすすめします。

  • 尿が出にくい
  • 尿の回数が多くなった(頻尿)
  • 夜間の尿の回数が増えた
  • 尿が残っている感じがする(残尿感)

「腰痛のため検査を受けたら前立腺がんだった」というケースも

前立腺がんはさらに進行すると、前立腺を覆っている膜を破って、精嚢[せいのう]や膀胱、尿道といった近くの組織にまで広がり(=浸潤)、血尿が出ることもあります。そして、さらにステージが進むと、骨や他の臓器にまで転移します。「腰痛のために骨の検査を受けたところ、前立腺がんが発覚した」というケースもみられます。

前立腺がんは、早期であれば手術などで根治が可能ですが、このように進行してしまうと根治は難しく、化学療法などを行う必要が出てきます。

したがって、初期の段階で前立腺がんを見つけ、適切な治療を受けるためには、定期的に検査を受けることが大切です。