進学を希望している学生が、経済的な理由で進学を諦めずに済むように学費を借りたり、給付を受けたりできる「奨学金制度」。学びの継続や、将来への道を切り開くためにも必要なものです。

銀行で借りる教育ローンや国の教育ローンは、親などの保護者が借りて返済しますが、奨学金制度は、「学生自身」が借りるものなので、卒業したら自分で返済しなければなりません。いざ返済が始まり「思ったより大変」と悩んでいる人もいると思います。そこで今回は、奨学金の返済について考えていきましょう。独立行政法人日本学生支援機構(JASSO、以下日本学生支援機構)を利用する人が大半ですので、こちらの情報を中心に解説します。

奨学金返済、1割が延滞

奨学金はとてもありがたいものです。しかし、返済ができず延滞するケースも少なくなく、国も問題視しています。日本学生支援機構の「返還金の回収状況及び令和2年度業務実績の評価について」によると、令和2年度における返済を受けるべき額7785億円のうち回収できず延滞となった金額は789億円と、1割ほどあるようです。

返済できない理由としては、本人が低所得であることや失業、病気、親の生活支援をしているため余裕がない、他の借入金の返済がある、延滞額が増えたことでさらに返済困難に陥っているなど、さまざまです。

特にコロナ禍では、家計急変世帯への給付奨学金を準備したり、返済期限の猶予について特別な対応を行ったりしたことは記憶に新しいですが、その他にも多くの施策が実施されています。

例えば、家庭の経済的な事情によって進学を諦めなければならない人を減らすための「給付型奨学金」の拡充や、月の返済額が前年の所得に連動する「所得連動変換方式」が選択できるようになりました。これは、所得が少ない若いうちは返済負担を抑え、収入が増えるにしたがって返済額が増える返済方法のため生活設計が立てやすくなるメリットがあります。

また、専門家を学校に派遣する「スカラシップ・アドバイザー派遣事業」も実施されています。進学のために資金計画の説明・助言を事前に受けることで高校生や保護者の経済的な不安を軽減したり、安心して奨学金を利用するための知識を提供することが目的です。

その他にも、日本学生支援機構のホームページにある「進学資金シミュレーター」の活用もおすすめです。授業料や一人暮らしの生活費や不足額を確認でき、利用可能な奨学金を診断できるため、より具体的に必要資金を知ることができます。さらに「奨学金貸与・返還シミュレーション」で、具体的な返済回数や返済額をイメージすることも可能です。

漠然と奨学金の利用を考えるのではなく、早いうちから知識をつけて借入額や返済計画が立てられるように工夫がされているわけです。

参照:独立行政法人日本学生支援機構「奨学金貸与・返還シミュレーション

また、自治体による奨学金の返還支援の拡大や、企業の返還支援(代理返還)という嬉しい制度もできました。この部分は後ほど詳しく説明します。

(広告の後にも続きます)

現在の奨学金利用率の推移

では、奨学金制度を利用している人はどのくらいいるのでしょうか?日本学生支援機構の「令和2年度学生生活調査結果」をもとに、大学(昼間部)、短期大学(昼間部)、修士課程において、何らかの奨学金を利用している人の割合を見ていきましょう。

=奨学金受給状況=

参照:独立行政法人日本学生支援機構「令和2年度学生生活調査結果」より抜粋

これによると、約半分の人が奨学金をもらいながら学生生活を送っていることが分かります。2人に1人が奨学金の返済をしている(していく)わけです。

大学の奨学金について利用率の推移を見ると、平成30年度は、平成28年度より1.4ポイント低下していますが、令和2年になると2.1ポイント上昇。修士課程でも同様の傾向があるようです。一方、短期大学では、ずっと上昇傾向。令和2年度以降は、新型コロナウイルス感染症が流行して経済がストップしたことで所得減や失業者が相次いでいますので、その後のデータが注目されます。