私は女子校時代からの親友と、女2人で小さな会社を共同経営しています。それは海洋深層水を使った高糖度のトマトを扱う農園。うまみが詰まったフルーツみたいなトマトは大人気となり、地元紙からもたびたび取り上げられるように。ところがそんなある日、共同経営者の親友の裏切りが発覚したのです。

親友がひょう変?

親友と興した会社では、パートさんたちとの関係性も良好で毎日楽しく仕事をしています。和気あいあいとした農場で定期的に会議をおこない、上下の分け隔てなく、皆でアイデアを出し合っているのですが……。この日は、親友の様子がどことなく変でした。

「何かあった?」と私が聞くと、彼女はおもむろに話し始めました。「ここも立ち上げて3年、大きくなったわよね。このへんで私、あんたとの共同経営は解消したいんだけど」

「え?」突然の言葉に私は驚いてしまいました。「何それ……どういうこと?」

「結構儲かったし、私は私で新会社を設立したいの。今よりもっと簡単にトマトを栽培して稼げるって話を聞いたからさ。共同経営だと利益も半分じゃん? だからひとりでやりたいわけよ」

驚く私やパートさんたちをあざ笑うかのように、彼女はさらにこんなことまで言ったのです。「それに、写真やテレビ映えするのは私よね? 地味なあんたじゃただの農家のおばさんじゃん」

「はぁ……!?」。私は親友の変わりようにあ然としていました。昔はこんなにお金に執着していなかったし、人をけなすようなことだって言わなかったのに……。

「実はもう話が進んでいて。有能な社員は引き抜かせてもらいました。社長は私だけで十分。あんたらとはおさらばよ」と言い捨てると、彼女は部屋を後にしました。残された皆はあまりのことに放心状態。まさかこんな形で親友に裏切られるなんて思ってもいませんでした。

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決別後…

それから数日後、元・親友は宣言通りに他の従業員たちを連れて農場を出て行ったのです。

「社長、へこんでいる暇はないですよ」「従業員が減った今、残った人間で何倍も働かないと!」「トマトの納品を待ってくれている顧客がいます!」

落ち込む私を励まし、力を合わせて頑張ろうと申し出てくれたパートさんたち。涙ながらに私も奮起しました。さらにその後、私の両親も知人たちを連れて手助けに来てくれました。友だちには裏切られたけれど、私はステキな人たちに囲まれている! そう思ったら逆に心が温かくなり、ますますおいしいトマト作りに精が出るように。

その結果、生産もアップし新しい従業員も雇用。次々と注文が来るようになり、マスコミで取り上げられることも増えました。

そしてそれから1年がたったころ……。ある日突然、決別した元・親友が私の農場にやって来たのです。