サンドイッチをこよなく愛するパリ在住の文筆家、川村明子さん。『&Premium』本誌の連載「パリのサンドイッチ調査隊」では、パリ中のサンドイッチを紹介しています。
ここでは、本誌で語り切れなかった連載のこぼれ話をお届け。No39となる今回は、本誌No125に登場した『ロティスリー・セガール』で惜しくも紹介できなかったサンドイッチの話を。


川村さんによる精巧なスケッチから。店の人に見せると、大喜びされて「飾りたい!」と言われることもあるのだとか。

フランスの精肉店事情について。

フランスの精肉店では、店先にロースターを置き、鶏の丸焼きを売る店が少なくない。通りや広場に立つマルシェに行けば、大抵、家禽(かきん)類を専門に扱う店が出ていて、そこには決まって大人の背丈ほどの大きなロースターがあり、鶏が焼かれている。そのほかに、ロースト肉専門店というのもある。こちらは生肉は扱わず、焼いた肉のみを売る。鶏肉だけでなく、仔牛肉や豚肉も焼いていることが多い。

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仲良し二人組が始めた、ローストチキン専門店。


ヴィクトールとエレナの二人。「一緒に店をやったら楽しそうじゃない?」と始めることにした。

以前よりも見かけることが少なくなった気がするこのロースト肉専門店を、ヴィクトールとエレナが、5区の商店街・ムフタール通りにオープンしたのは1年半ほど前。ホテル学校の同級生だった彼らは卒業後も仲のいい友人で、二人ともいつかレストランをやりたいと思っていた。一緒に実現しようと決めて、まず最初のビジネスとして選んだのが、ローストチキンの専門店だ。理由は、まず、鶏肉は世界で最も食べられている肉で、フランスにおいてローストチキンは“シェアする”食べ物の象徴でもあること。そして、2キロの鶏を育てるには、2キロのとうもろこしと水だけで良いと飼育も非常にシンプル。手の届きやすい商売、かつ、エコロジーという彼らの考えに適っている。