日常着が魅力的にアップデート 「アンダーカバー」のコレクション

2024年秋冬パリファッションウィークを現地よりレポート! 「アンダーカバー」のショーは日常着をアンダーカバー流にアップデート。当たり前のような何げない日常着が刺激的で美しくなる。

体育館のような広々としたショー会場。静まりかえった空間を、カーディガンを羽織り、ジーンズ姿の素足のモデルが歩く。カーディガンを脱ぐと、ウエストのあたりにバラの花のついたキャミソール。

音楽の代わりに流れるのは、男性の声による朗読。耳を澄ますと、法律事務所に勤める40歳のシングルマザーの日常が語られている。

普通に見える日常着。しかし、実は違う。「誰もが知る普遍的なデザイン群を私たちの視点で再解釈した」とコレクションノートに記してあった。

その技術的手法が「圧着」。2枚の全く異なる素材同士を接着し、大胆にはみ出させることによって、ベーシックなウェアに非日常性を持たせたのだという。どの服も様々な形で布がはみ出ている。何の変哲もない日常着が変化し、それが日常を変えてくれるかもしれない。そんな気分になる。

バッグも面白い。フランス人と日本人の女性デザイナーが作る「BRIGITTE TANAKA」とアンダーカバーのコラボで、ポリエステルオーガンディの布に様々な刺しゅうが施されている。ヨガ用のバッグや、花を入れるバッグ。スーパーなどの買い物でなじみの深い形のバッグが、時にユーモラスで、日常が楽しくなる。

ショーが終わり、会場を出る際に配られた紙で、会場に響き渡った詩と声の主が明らかになった。映画「パーフェクトデイズ」の監督ヴィム・ヴェンダースがアンダーカバーのために書き下ろし、朗読したものだそうだ。

普通に見えて、普通でない。アンダーカバーらしいのだ。

text: 宮智 泉(マリ・クレールデジタル編集長)

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