創業100周年を前に魅力を再発見。「フェンディ」の永遠のシグネチャー“セレリア”

2025年に創業100周年を迎えるイタリアのラグジュアリーブランド「フェンディ」。その記念すべき節目の年を前に、メゾンのルーツでアイコンとも言える“セレリア”にフォーカス。

「祖母のアデーレと祖父のエドアルド・フェンディが開いた小さなお店の前を馬車が行き交っていたそうです。祖母はそれを見るのがとても好きで、鞍などの馬具の美しい仕上げやディテールを愛していました」と語るのは、フェンディ家3代目であり、アクセサリーおよびメンズウェア部門アーティスティックディレクターのシルヴィア・フェンディ。


コンパクトサイズの“ピーカブー アイシーユー プチ”のこの春の新色。手作業で施した306本のハンドステッチで“セレリア”の職人技を表現。取り外し可能なショルダーストラップ付き。バッグ各[W20×H15.5×D11cm]¥583,000(フェンディ/フェンディ ジャパン)
©Ellen Fedors

100年前のローマ、馬具に魅了された「フェンディ」創業者の夫妻は、この伝統的な職人技をレザーグッズに応用することを発案。最高級カーフレザー「クオイオ ローマ」のパーツを伝統的な馬具の製法を用い、手作業で縫い合わせるハンドステッチが印象的で、のちの“セレリア”の原型となるバッグが誕生した。当時、「クオイオ ローマ」は地元の馬具工房だけが馬具製造のために使っていた素材。そこに新たな解釈を加え、熟練の馬具職人のノウハウをハンドバッグや旅行鞄といった、日常的に身につけられる高度なプロダクトへと昇華することに成功した。“セレリア”と名付けられたバッグたちは、すべての制作工程を手作業で行う。ローマの卓越した馬具職人によるインスピレーションとクリエイションに由来する“セレリア”は、現在でも高い人気を誇り、乗馬というスポーツとモードの境界線を超え、「フェンディ」のシグネチャーとして愛されている。


アイコニックな“バゲット”バッグが“セレリア”レザーで登場。新作の“ミニ バゲット”も309本の手縫いのステッチが印象的。ハンドルもチェーンのショルダーストラップも取り外し可能。バッグ各[W20×H13×D5cm]¥346,500(フェンディ/フェンディ ジャパン)
©Ellen Fedors

そして、創業100周年を迎える2025年を前に、この春、アイコニックなサドルステッチを再解釈した“セレリア 1925”が登場。ハンドバッグの最新作から、ウェアやシューズ、ジュエリーにまで、カテゴリーを超えてサドルステッチがモチーフとして用いられ、「フェンディ」の新たなる歴史が幕を開けた。


東京・渋谷で3月に開催されたポップアップストアのために来日したメゾンのレザー職人たち
〈左〉会場では職人によるデモンストレーションの他、DIYワークショップも行われた〈中〉一人の職人がすべての工程を担当し、バッグが誕生する〈右〉“セレリア”のサドルステッチは、熟練のクラフツマンシップを備えた職人たちの手作業から生まれる

「クリエイションの裏に何があるのかをフォーカスしたい」


シルヴィア・フェンディ
「フェンディ」アクセサリー・メンズウェア担当
アーティスティック ディレクター
「フェンディ」創業家の3代目。1992年に「フェンディ」に入社し、クリエイティブ ディレクターだったカール・ラガーフェルドの補佐を務める。1994年にアクセサリー部門の主任ディレクターに就任。“バゲット”や“ピーカブー”といったバッグの人気コレクションを世に送り出し、世界中で成功を収める。2010年よりキッズ ウェア、2011年よりメンズコレクションのクリエイティブ ディレクター(当時)も兼任。4代目のデルフィナ・デレトレズ・フェンディの母親でもある。

イタリア・ローマで1925年に創業し、来年100周年を迎える「フェンディ」。その一族の3代目として、1992年からメゾンを牽引しているのがシルヴィア・フェンディだ。今年3月、東京・渋谷で開催された「フェンディ」のクラフツマンシップに焦点を当てた体験型ポップアップストア「フェンディ セレリア」のために来日した彼女に話を聞いた。

メゾンにとっても、彼女にとってもやはり“セレリア”は特別なものだと語る。「創業者で私の祖母であるアデーレが100年前に閃いた馬具の技術を応用するという発想を継承し、発展させるのも私たちの役割。良いものはいつの時代でも良いという証しです。今では、バッグはもちろん、ウェアやインテリアにも用いています」

その美しいサドルステッチを手仕事で仕上げているのは、「フェンディ」が誇る高いクラフツマンシップを備えたレザー職人たちだ。「メゾンを支えているのは、デザイナーたちのイマジネーションのみならず、それを現実に落とし込む職人たちの力が大きい。しかしながら、これまでレザー職人という仕事の地位は決して高いものではありませんでした。だからこそクリエイションの裏に何があるのか、どのような光景が繰り広げられ、どんな職人たちが働いているのかにもフォーカスしたいのです。そういった意味でも実際にローマから職人たちが来日し、彼らの手仕事に間近で触れてもらえる今回のイベントはとても重要だと感じています」


ポップアップストアの会場を訪れたジャパンメンズブランドアンバサダーを務め、Snow Manのメンバーで俳優の目黒蓮とシルヴィア・フェンディ。メゾンのレザー職人が手作業で仕上げるバッグの製作工程などを一緒に見学

「フェンディ」は若い職人たちの未来のために、自らの工場の中に学校を作り、現在はそこで職人たちを養成する講座を展開している。「2024年の今、私たちのメゾンで切磋琢磨している若き職人たちは、自分の仕事について再発見を繰り返し、クラフツマンシップへの意識も高まっているように思います」

現在、「フェンディ」の工場では、一人の職人が最初から最後まで一つのバッグの製作工程を担当している。かつてのように、ハンドル作りだけの、そしてステッチだけの専門家、という分業体制ではない。「一人の手で一つのバッグを完成させた方が満足感も高いからです。職人によっては、ライニングの裏の見えないところにこっそりと自らのサインを忍ばすものもいますよ。出来上がったバッグは彼らの誇りなのです。昨年6月には、フィレンツェの工場でメンズのショーを開催しました。そこには、工場で活躍している若い職 人たちの姿をメディアの方々に見てもらいたいという狙いもあったんです」

現在、シルヴィアの娘でフェンディ一族の4代目、デルフィナ・デレトレズ・フェンディがメゾンのジュエリー部門のアーティスティック ディレクターとして活躍している。若き世代にしっかりバトンを繋いでいる「フェンディ」の未来は、盤石と言えそうだ。

目黒蓮の特別ムービーも。フェンディの職人技術に触れるポップアップ「フェンディ セレリア」へ
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