行政相談チャットボット公開も「ちゃんと答えが出てこない」 それでも総務省が「生成AIは使わない」理由

総務省は先月26日、国・地方共通相談チャットボット「Govbot(ガボット)」の提供を開始した。

Govbotは総務省とデジタル庁が連携し、各府省の協力を得て整備しているといい、マイナンバーや子育て、税といった生活にまつわる制度に関するよくある質問と回答が用意されている。

総務省はGovbot導入の目的について、「本チャットボットが広く活用されることで、住民の利便性の向上、自治体の窓口負担の軽減につながることが期待されます」としている。

SNS上では不満の声「ちゃんと答えが出てこない」

Govbotの使い方は簡単で、「転職した際の年金の手続きは?」と質問を送信すると「会社を転職・退職した際、厚生年金保険・国民年金の手続は必要ですか」「会社を転職・退職するとき、企業年金の手続は必要ですか」といった対応する質問が表示され、それらをクリックもしくはタップすることで、回答を見ることができるというシステムだ。

しかしながら、Govbotの性能を巡っては、SNS上で不満の声もあがっている。

たとえば、Govbotに確定申告の締め切りについて聞いたユーザーは、「所得税の確定申告はどこに提出すればよいですか」「ふるさと納税は確定申告を行う必要がありますか」といった質問が提示されたとし「ちゃんと答えがでてこない」と投稿していた。

実際にGovbotに同様の質問をしてみると、たしかに「所得税の確定申告はどこに提出すればよいですか」や「ふるさと納税は確定申告を行う必要がありますか」といった選択肢が表示される。しかし、これらを選んでみても、確定申告の締め切りについて知ることはできなかった。

そのほかSNS上では、ChatGPTのような生成AIと比較し、利便性においてGovbotが劣っているとの感想も。中には生成AIを利用してGovbotと似たようなチャットボットを再現するユーザーまで現れた。

Govotの“利便性が低い”ワケ

では、こうした声について総務省はどう受け止めているのだろうか。同省の担当者は「Govbotは前提として、国の制度がどうなっているのか、などについて説明するものであり、個々のケースについては必ずしも対応していません」という。

「Govbotの性質上、回答を載せていない質問というのはあると思います。ある程度一般的なことであれば答えられますが、たとえば最終的に国や自治体による認定が必要なものについて、実際にその人が認定されるのかどうかといった質問には答えるようになっておりません。

また、生成AIの方が便利であるとのご意見もあるとは思います。しかし、現状では生成AIの精度が明らかではないですし、そもそも行政が提供するものとして誤りがあってはいけないことから、正確性や確実性を重視した結果、回答には生成AIを使用していません」(総務省担当者)

「業務の参考になる」肯定的な意見も

一方、前出の担当者によると、総務省にはGovbotに対する肯定的な意見も届いているという。

「たとえば、自治体の職員からは『業務の参考になる』といったご意見もいただいております。国のさまざまな制度についての情報が1か所にまとめられており、自治体で相談業務に携わる方などに役立てていただけると考えております」

さらに、今後については「まだ公開したばかりで、この先どのように改修や拡充を進めていくのかは検討中です。各省庁の意見や制度改正に対応するのはもちろん、Govbotに備えられたフィードバック機能を通して、利用者の皆さまからのご意見なども踏まえ、機能改修や搭載されている質問と回答の拡充などに取り組んでいきたいと考えております」と語った。

Govbotの設計・開発には8500万円以上の予算が使われたという。デジタル庁の担当者によると、今後の改修について現時点では未定であるものの、「実施する際には新たに予算を執行する予定」とのことだった。

利用者からのフィードバックなどをもとに改修・拡充が検討されることからも、実際にGovbotを使用して、その性能を感じてみてほしい。