寝たきりになりやすい病気の第1位は何か知っていますか? 現在のところ、それは脳卒中を代表とする脳血管の疾患で、寝たきりになる原因の3割を占めると言われています。その脳卒中の中でも、後遺症が出ることが多く死亡率高いと言われるのが「脳出血」。どのような病気で、何が原因で起こるのか、予防法はないのかなどを、きくち総合診療クリニック理事長・院長の菊池大和先生に聞きました。

教えてくれたのは…

監修/菊池大和先生(医療法人ONE きくち総合診療クリニック 理事長・院長)
地域密着の総合診療かかりつけ医として、内科から整形外科、アレルギー科や心療内科など、ほぼすべての診療科目を扱っている。日本の医療体制や課題についての書籍出版もしており、地上波メディアにも出演中。

脳出血とは



脳の血管が詰まったり破れたりすると脳が障害を受け、さまざまな発作や病気を引き起こします。これを総称して脳卒中と言います。脳卒中を代表とする脳血管疾患は、現在日本人の死因の第4位です(厚生労働省「令和4年(2022) 人口動態統計月報年計(概数)」より)。

脳出血は、この脳卒中の1つで、脳の中の細い血管が突然破れ、脳の中で出血する病気です。脳卒中の約20%と割合としては多くありませんが、総じて後遺症が出ることが多く、死亡率も高いといわれています。

年齢的には50~60歳代が多数。夏に少なく冬に多く、早朝と夕方が発症のピークとされています。

脳卒中には他に、脳の血管が詰まる脳梗塞(全体の約70%)と、脳の太い血管にできた脳動脈瘤が裂けて脳の表面に出血するくも膜下出血(全体の約10%)があります。

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脳出血の症状

脳出血は、出血が起こった部位や出血の量により、以下のようなさまざまな症状が出ます。

・片手・片足のまひ、脱力、しびれ
・ろれつが回らない、言葉が出ない
・めまい
・意識がもうろうとしたり、起きているけれど反応が鈍い
・片目が見えない、物が二重に見える
・立てない、歩けない

なお、出血量が多い場合には、脳脊髄液が流れている脳室という空間に血が流れ込み、髄液の循環・吸収に障害が起こるケースがあります。すると、脳室が異常拡大する水頭症を合併してしまう可能性が高く、回復が妨げられることがあります。

脳梗塞の症状との違い

一般的に脳出血は、発症した後、数分で症状が進行します。脳梗塞にはほとんど見られない頭痛を伴うこともあります。一方、脳梗塞は、徐々に悪化しながら同じ症状を繰り返したり、症状の進行に2~3日かかったりします。

ただし、これはあくまで傾向の1つで、上記に当てはまらないケースも少なくありません。症状だけで脳出血か脳梗塞かを見分けることは不可能で、確実な診断にはMRI検査が必要です。