1.歯科衛生士の8割近くが転職を経験

歯科衛生士のニーズは高い

日本歯科衛生士会が2020年におこなった「歯科衛生士の勤務実態調査」によると、歯科衛生士の76.4%が転職しているという結果でした。

また、全国にある歯科診療所の数は6万7,899施設*1で全国にあるコンビニよりも多く、歯科衛生士の有効求人倍率*2も3.24と全産業平均の1.13を大きく上回っています。全国的に就労先が多くニーズが高いことや、国家資格を活かせることなどから転職を選ぶ人は多いようです。

*1:厚生労働省「 医療施設調査」より

*2:求職者1人に対して何件の求人(仕事)があるかを表す数値

就業者数は20代後半がピーク


厚生労働省|「第6回歯科医療提供体制等に関する検討会」より作成

就業している歯科衛生士の総数は14万2,760人(2020年時点・厚生労働省)と増加傾向にあるものの、年代別の就業者数を見ると25〜29歳をピークに30代前半になると減少しています。結婚や出産などのライフイベントが多い年齢において業務から離れ潜在歯科衛生士となる人もおり、仕事と家庭の両立がはかれるようになる30代後半から復職していると推察されます。

歯科衛生士が離職する主な理由

日本歯科衛生士会の調査によると、歯科衛生士の主な転職理由は次のような結果でした。


公益社団法人日本歯科衛生士会|「歯科衛生士の勤務実態調査報告書」をもとに作成

調査によると、結婚・出産・育児などを理由に退職していることがわかります。先ほどの年代別の離職データでもこれらの理由が発生しやすい年代が離職傾向にあり、家事・育児との両立が難しいことなどから、一旦は業務から離れている様子が伺えます。

ライフイベント以外にも「経営者との人間関係」が上位にきている点も特徴的です。個人経営や少人数体制の職場も多い歯科診療所の場合、院長やオーナーとの相性も就業の継続に大きく関係しているようです。

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2.クリニック以外も!歯科衛生士の転職先7選

歯科診療所(クリニック)

歯科衛生士の9割が勤務しており、その数の多さからも転職先候補として最も有力です。小児や矯正など専門に特化した歯科もあり、希望する業務内容によって職場を選ぶことができます。また、駅周辺や住宅街などさまざまな場所にあるため、立地や勤務時間などの条件に合う職場探しもできます。

病院

病院内にある歯科や口腔外科で入院患者に対する口腔ケアや、手術のサポートなどをおこないます。設備が充実しているため、歯科診療所での治療が難しい患者を対象としている点が特徴です。病院では多職種との連携があり、疾患についての知識が求められる場合もあります。

保健所・保健センター

各自治体に設けられた保健所や保健センターで、歯科健診や歯科指導をおこないます。乳児から高齢者まで幅広い年齢層を対象としており、勤務先施設以外では学校における歯みがき指導にも出向きます。指導や相談事業は、同じ施設で働く保健師や管理栄養士など多職種と連携しておこなうことがほとんどです。

訪問歯科

歯科医師とともに個人宅や施設を訪問し、病気や障がい、要介護などにより通院が困難な人を対象に歯科診療をおこないます。訪問専門歯科や、外来と訪問どちらもおこなう診療所があります。主な業務は虫歯など一般的な治療の補助や定期的な健診、衛生指導、口腔リハビリなどです。

>訪問歯科に関する詳しい内容はこちらをチェック

介護施設

介護施設は介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)、介護医療院、デイサービスなど多岐にわたります。施設では利用者の口腔ケアや咀嚼・嚥下機能訓練のほか、介護職員に口腔ケア指導をおこなうこともあります。施設内外の医師や看護師、理学療法士、作業療法士、管理栄養士など多職種と連携をとり、利用者のケアに従事します。

教育関連

歯科衛生士養成学校で教員として、学生への授業や技術指導、相談業務などをおこないます。求人は多くありませんが、母校や学校のウェブサイトなどで募集があることも。教員になるためには教職としての経験は求められませんが、歯科衛生士として最低でも3〜4年程度の実務経験が求められます。

一般企業

歯科衛生士の経験や知識を活かして、歯科材メーカーや歯科関連のサービス提供をおこなっている一般企業で働きます。業務内容は営業職や営業サポート、顧客対応、商品企画など企業によってさまざまです。