
似たような商品が並んでいれば、つい「No.1」と書かれたものを選びたくなる――そんな心理はごく自然なものです。しかし、その「No.1」には本当に根拠があるのでしょうか。2026年3月12日、「イモトのWiFi」を展開するエクスコムグローバル社に対し、約1億7,000万円の課徴金納付命令が出されました。本件をもとに、弁護士の森大輔氏が、ナンバーワン表示の問題点や注意すべきポイントについて解説します。
「No.1」の表記に合理的根拠なし―措置命令に続く課徴金納付命令
2026年3月12日に、「イモトのWiFi」を展開するエクスコムグローバル社に対して、1億7,000万円の課徴金納付命令が出されたとの報道がなされました。既に2024年3月1日に措置命令が出ており、これに続く課徴金納付命令ということになります。
課徴金納付命令とは、消費者庁や公正取引委員会が独占禁止法や景品表示法などに違反した企業に対して、不当に得た利益を国庫に納めるよう命じる行政処分のことです。
事案としては、「イモトのWiFi」の広告の中にあった「お客様満足度No.1」や「海外旅行者が選ぶNo.1」、「顧客対応満足度No.1」等という表記について、合理的な根拠がない(優良誤認)という判断をされたというものでした。
報道によると、エクスコムグローバル社は、これら「No.1」表記を広告に表記するためにアンケート調査会社に調査の依頼をしていたようですが、その調査会社が実施したアンケートでは、回答者のサービス利用経験が確認されていなかったということです。
例えば、一般の消費者が「顧客対応満足度No.1」という表記を見れば、「イモトのWiFi」と別のメーカーのWi-Fi端末を実際に利用した消費者がそれらを比較し、どちらが良いかを判断した結果がアンケートに反映され、「No.1」という表記に至ったと理解するのが一般的ではないかと思います。
そもそも、商品や役務を利用したことがない人の「No.1」感想というのはいったいどれほどの意味があるのでしょうか。一般消費者からすればそのような意味がない「No.1」が表記されているとは思いもしないはずです。
しかしながら、実際には、アンケート調査会社が、回答者が実際にサービスを利用していたかどうかの確認をせずに調査をしていたとのことでした。であれば、この「顧客対応満足度No.1」は、単なるアンケート回答者の印象を掲載したに過ぎず、一般消費者が広告から受け取る情報とは異なるものが表記されているということになります。
「No.1」表記は消費者の購入の意思決定に大きく影響を与えるため、その意味で優良誤認ということになってきてしまいます。そして、それは「お客様満足度No.1」や「海外旅行者が選ぶ No.1」も同じことです。今回、消費者庁はこのような点を根拠に、課徴金納付命令を出したものと思われます。
「No.1」はなぜ優良誤認となるのか
「No.1」表記は昔からある広告の手法の一つですが、近年はこの「No.1」表記で多くの違反事例が報道されています。そして、この「No.1」表記は「優良誤認」とされていますが、なぜ優良誤認となるのかについて、まずは解説をしたいと思います。
優良誤認とは、商品役務の品質性能等について実際よりも著しく優良であると誤認をさせたり、他社製品よりも著しく優れたものであると誤解させるような表示をいいます。
では、「顧客対応満足度No.1」といった記載は、商品役務の品質性能に関する表示といえるのでしょうか。
一見すると、顧客満足というのは利用した側の主観に基づくものであり、商品役務の品質性能そのものとは関係がないような気もします。しかし、おそらく消費者庁は、「No.1」という表記は他の商品よりも品質性能が優良であるということを想定させるものであるため、商品役務の品質性能とは関係がないとまでは言えないという立場をとったのではないかと思われます。
実際に、消費者庁表示対策課が取りまとめた「No.1表示に関する実態調査報告書」(令和6年9月26日)では、No.1表示が購入の意思決定にどの程度の影響を与えるかを調査した結果、約5割の回答者が、「かなり影響する」または「やや影響する」と回答したとの分析がなされており、消費者の購入心理に大きな影響を与えている点は無視できないものと思われます。
以上の理由により、「No.1」の記載をする場合は、優良誤認の対象となりますし、この点については現在のところ、異論がないように考えられます。
