妻には「あなたが訴訟を起こさないから」と責められ……狂った老後設計と夫婦の亀裂
もともと想定していた600万円の遺産相続。それがなくなったことで、男性夫婦の老後設計は大きく狂ってしまいました。
男性自身の認知症リスクに備えたサービスや、妻の膝の手術費用を貯蓄から捻出せざるを得なくなり、予定より5年も早く貯蓄を取り崩さざるを得ない状況に。
さらに、相続トラブルに端を発した家庭内の不和も男性を苦しめたと言います。

妻からは「あなたが訴訟を起こさないから」と責められ、夫婦間の雰囲気は悪化。孫への入学祝いや子どもに渡す帰省費用も削らざるを得ず、子ども世代との関係にもひずみが生じてしまいました。
「自分がもっと父の財産に関心を持っていれば」という深い後悔と、「姉は長年父の面倒を見てくれた。そこまでして争うべきか」という迷い。そんな相反する二つの感情で、男性の胸の内は引き裂かれていました。
妻から「なぜ弁護士に頼まないの」と責められるたびに、情けなさと申し訳なさで押しつぶされそうだったと振り返る男性。「これで家族がバラバラになる」と考えると、夜も眠れないほど追い詰められていたと当時の苦悩を明かしました。
精神的に限界を迎えた男性は心療内科へ。一方、妻は無料の法律相談会へ足を運び…
精神的に限界まで追い詰められた男性は、かかりつけ医に相談し、心療内科でカウンセリングを受けることに。さらに知人に話を聞いてもらったり、地域の年金者組合の集まりで体験を共有したりすることで、同じ境遇の人々の存在を知り、少しずつ心が軽くなっていきました。
最終的には「姉を恨み続けるより、今ある年金でどうやって幸せに暮らすかを考えよう」と前向きになれたと言います。

一方の妻は、なんとかお金を取り戻そうと、市の無料法律相談会へ足を運びました。ところが、そこで弁護士から告げられたのは「証拠があれば遺留分侵害額請求は可能だが、時効(相続開始から1年以内)を過ぎている」という非情な現実でした。
それを聞き、深く絶望したという妻。それでも「相続が発生したらすぐに行動すること」を新たな学びに変えたと言います。
前に進んだ男性夫婦はエンディングノートを作成。自分たちの遺産は公正証書遺言で明確に分けることを決意しました。結局、父親の遺産600万円は戻りませんでしたが、それぞれが心の整理をつけたことで、夫婦関係もだんだんと修復されていきました。
