気持ちに火がついた、夏
でも2ヶ月もすると慣れ始めるんですよ。どれだけ怒られても「べつに」くらいに思えるメンタルになってきて、勉強に気持ちが向き始めました。
学校からも「模試があるから問題取りに来て」って案内をもらって。
──模試ってどこかに集まって受けるものではないんですか?
最初は「受けにおいで」って言われたんですけど、断ったんです……。下の学年の子と同じ環境では受けたくないって。そしたら「じゃあ、家でやっておいで」って言ってくれたので、問題を取りに行って寮で解いて提出してました。
──ちなみに模試の結果は?
ずっとA判定でした。
──すごいじゃないですか!
国試前の追い込みでわりと貯金がある状態で始まったんです。国試直前の2月くらいに学校の先生に「このままだとヤバいから、解剖生理を整理してみて」って言われて、自分なりにこうやってまとめたんです。


解剖生理の本を見ながらまとめて、模試で出題されたポイントを書き足してました。
“点”で覚えていると点数がなかなか安定しないと思うんですけど、こうやって“点”と“点”をつないで流れを掴むことで「わかる!」「解ける!」っていう自信になりました。
──それが、2月?
はい、だから「遅かったね」って(笑)。
──でもあと1点でしたし、「これがわかれば大丈夫」という筋は掴んでいたんですね。
そうですね。解剖生理のこの流れが完全に頭に入っているか確認するために、この白地図をコピーして繰り返し書き込みながら、模試の解き直しを丁寧にやってました。模試は2ヶ月に一回くらいのペースであって、一回につき240問あるので解き直しているうちに次の模試が来るって感じでした。
>Wさんが作った白地図(消化器系)のダウンロードは

あとは脳外科だったので脳のことも勉強しました。
──脳外科病棟で働くことで勉強の役に立ったりしましたか?
脳ってすごく症状が目に見えてわかるんです、喋れないとか意識がないとか。
本当に寝たきりで一言も喋れなかった患者さんが、座ってお風呂に入れるようになって、歩けるようになって──って。「人間ってこんなに良くなるんだ、面白い仕事だな」って思ったんです。
「看護師になりたい」って気持ちになったのは、その患者さんと出会って「力になりたい、やっぱり助手じゃ力不足だ」と思ったのが大きいですね。
そこで「勉強しよう」とスイッチが入って、週に2〜3回は仕事上がりにそのまま院内の図書室に直行して勉強するようになりました。

──ちなみにコロナ禍の影響はあったりしましたか?
入院が止まって仕事の量が少なくなった時期もありましたね。
あとは友達と遊びに行けなかったのが一番つらかったことなのかなと思ったんですけど……。助手でお金もなかったので、遊びの誘いがあまりなかったのはちょうど良かったというか。
私、「親に迷惑はかけられない」と思って実家からの仕送りはもらってなかったんです。
だから助手の給料だけでやりくりしてたんですけど、助手の給料って新卒の看護師さんとは5万、6万くらい違うんです。だから「ごはん行こうよ」とか「アウトレット行こうよ」って誘われても、お金を出せない自分が悲しくなってくるから。
──友達と金銭感覚がずれてしまうとちょっとつらいですよね。
そうなんです。ボーナスもぜんぜん違って! 初めてもらったボーナスが9千円しかなくて泣きながら親に電話しました、「9千円から税金引かれるんやでぇ〜!」って。
「こんなにがんばったのに9千円しかもらえないの?」って。毎日怒られながらも、現場にいる意味を見つけたくて、私がここにいる意味、必要とされる意味──って思いながらいろいろ気を利かせてきたつもりだったので。
新人看護師の子は10万円くらいもらってたので、そこで「看護師になろう! 絶対なってやる!」って気持ちになりました。

超難問に心が折れた、秋
──模試の結果も上々で順調だったはずが、秋に一度勉強が手につかなくなったとか?
そうなんです。10月に買った問題集が難しすぎて「まったくわからん……!」って心が折れました。こんだけやっても解けないんだって。
──模試A判定なのに……!
『プチナース』の予想問題集だったんですけど、国試ってたまにめっちゃ難しい問題が出てくるんですよ。その対策問題集で。
──「難しい問題だけを集めました」みたいな。
そうです。「確実に点取りたい」って子が解くような問題だったんですけど、私は「受かればいいや」と思っていたので。見るのも嫌になって、早々に捨てました(笑)。
──同じ問題集を繰り返し解くタイプの人と、いろんな問題集を解くタイプの人がいますよね。Wさんは後者だったんですか?
同じ問題を3回も4回も解いても意味ないなと思っていて。そもそも前回はそんな感じの勉強法で落ちたので。
1回解いて、2回目はわからなかった問題だけ解いて。あとはいろんな問題に触れたほうがいいかなと思います。というのも、本番に焦らないようにしておくのが大事だと思っていて。
──ほう。
1問や2問わからない問題があっても大丈夫なはずなんですけど、見たことがない問題が出てきたら焦ってペースが崩れてしまうので。とにかく「多くの問題に触れておこう」「見たことのない問題を減らそう」と思ってました。

それで予想問題があったらとりあえず買って「こんな問題があるんだなあ」って。『プチナース』も心は折れたんですけど「こんな問題があるんだ」「こんな問われ方をするんだ」って思いながら眺めてました。
──本質的に同じ問題でも問われ方が違うとか、そういうのがあるんですか?
ありますね。国試って4択じゃないですか。問題が同じでも選択肢が違えば見たことのない問題になるけど、たくさんの問題に触れておくと出題のパターンが掴めてくるんです。
とにかく試験中に焦るのが一番良くないって経験があって。最初の受験では本当に何も準備してなくて(笑)。鉛筆を3本しか持っていかなくて鉛筆削りもなくて、そしたら「芯が丸まって書きにくくなったらどうしよう」って不安がずっと残っちゃって……。
その反省から2回目は鉛筆もたくさん持って行ったし鉛筆削りも持って行ったし、「お初です」みたいな問題もなかったので、安定して解けたっていう自覚があります。


