生かされないお金が増えている現実
井戸さんがそう考えるようになった理由の一つに、日本では自分の資産が使い切れないままに亡くなる人がとても多い、という現実があります。

2023年の時点で、相続する人がおらず国庫に入った遺産金は1015億円。10年前の約3倍にも上ります。
「お金は、自分がこれまでかけてきた時間やエネルギーの対価、言うなれば積み重ねてきた人生の証しです。それが生かされないまま、“死んだお金”となってしまうのは、とても悲しいことではないでしょうか」
老後生活の不安についてのアンケート(公益財団法人生命保険文化センターが2022年に発表)では、82.2%の人が「不安がある」と回答。使い切れないほどにお金を貯め込む人が多い背景には、やはり“不安”があるようです。
「貯蓄があっても『足りないのではないか』と考え、貯蓄額を増やしても不安が消えない。何となく不安、という人が多いのだと思います。でも社会保障が充実しており、最低限の暮らしを保障されている日本では、本来そこまで心配する必要はないのです」
漠然としたモヤモヤにとらわれて貴重なお金を無駄にしないために、井戸さんは「今の家計収支を把握し、老後にかかるお金をシミュレーションしておく」ことをすすめます。
「“老後2000万円問題”が取り沙汰されて久しいですが、実際には生活スタイルや年金額などによって、必要な額は異なります。人と比べず、自分の身の丈に合った暮らしを見つめることでしか、本当の安心は得られません」
最期の時を、どんな気持ちで迎えたいか
老後に必要なお金のめどがつけば、残りのお金は自分がやりたいことに使えます。
「人生100年時代といわれますが、元気に動けるのは50歳を過ぎたら平均で25〜30年ほどと、長くはありません。自分がやっていて本当に楽しいことは何か、やり残していることはないかと思いを巡らせて、小さな一歩でいいので踏み出してみましょう」
ハルメク世代に根強くある「子どもや孫のためにお金をとっておくべきでは」という考えについてはこう話します。
「次世代に残せる最大の貢献は、やりたいことをやって悔いなく人生を終える姿を見せることだと私は思います。最期の時をどんな気持ちで迎えたいか、具体的にイメージしてみてください」
人生を楽しむために、ぜひ“生きたお金の使い方”を身に付けましょう。

