庭では合わせない色が、ブーケだと映える

何よりうれしいのは、さっきまで「抜きどきかな」「切りどきかな」と思っていた花が、ほかの花や葉ものと合わせてブーケにすると、また新しい魅力を見せてくれることです。庭植えや寄せ植えでは合わせないような色も、ブーケにすると驚くほど似合うことがあります。庭の中では脇役の花が、手の中に集めると急にきらきらと輝いて見える。そんな瞬間に、花の意外な表情を発見します。

庭はもともと、自分の好きな色合わせや雰囲気で植えているので、適当に摘んできてもなんだか可愛いブーケになるものです。上の写真も庭の手入れをしながら集めた花々。左からラベンダー、ニゲラの葉、ラナンキュラス・ラックス、パンジー、ビオラ、イベリス、ティアレア、ガーベラ、アネモネ、アークトチス。庭でもそうであるように、リーフはブーケづくりでも欠かせない名脇役です。ニゲラのふわふわの葉はグラつく花を抑えたり、オリーブの葉は額縁のようにブーケを整えてくれたり。一回りすれば簡単に花材が集まる庭は、大きな宝箱のようでもあります。

とはいえ、私は一番きれいに咲いている花を切ることができないのです。最高の状態の花を切れば、それはそれは見事なブーケが作れるでしょう。それがわかっていても、ここを切ったら、この庭の風景が変わってしまう、と思うと、なかなかハサミを入れられません。一番いい花を切ったことがあるのは、二人の娘の結婚式のときだけ。一度はバラを、もう一度はクリスマスローズを庭から切って、ブーケにしました。あのときは惜しいというより、その日のために庭の花を手渡せることが、ただただうれしかった。

普段はそこまで思い切れなくても、よく咲いてくれるパンジーやビオラ、ラナンキュラス・ラックスを少しずつ摘むだけで、十分に可愛いブーケができます。雨でしなだれてしまったチューリップも、花束にして飾ればいいと思うと、残念な出来事だけで終わりません。そうして束ねた花を、家の中やクリニックに飾ると、みんなとても喜んでくれます。「きれいね」と言ってもらえるのは、庭づくりをしている者にとって本当にうれしいことです。
咲くときから終わるときまで、花を楽しみ尽くしたい

私にとって庭づくりの醍醐味は、花が咲くその瞬間だけにあるのではありません。芽吹き、育ち、咲いて、やがて終わりへ向かう、そのすべての時間を味わえること。そして、庭で役目を終えようとする花を、ブーケとしてもう一度楽しめること。咲く時から終わる時まで、花をたっぷり楽しみ尽くす。それが、庭づくりの喜びであり、花の命への感謝なのだと思っています。

おもだに・ひとみ/鳥取県米子市で夫が院長を務める面谷内科・循環器内科クリニックの庭づくりを行う。一年中美しい風景を楽しんでもらうために、日々庭を丹精する。花を咲き継がせるテクニックが満載の『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(KADOKAWA)が好評発売中!
まとめ・写真 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。「ガーデンストーリー」書籍第1弾12刷り重版好評『植物と暮らす12カ月の楽しみ方』、書籍第2弾4刷り重版『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(2冊ともに発行/KADOKAWA)発売中!
