でも本当にそれだけなのか、とずっと引っかかっていました。

◆「AIのせい」という便利すぎる説明
2025年、アメリカの企業が発表した解雇のうち、AIを理由に挙げたものは約5万5000件にのぼりました。2年前と比べて12倍以上の数字です。報道だけ見ていれば、AIが着々と人間の仕事を奪っているかのように聞こえます。ところが専門家たちの見立ては、かなり違います。採用調査会社Resume.orgの調査によれば、採用担当者の約60%が「AIや自動化を理由に挙げる方が、財務的な制約を正直に言うよりも受け入れられやすい」と考えているという結果が出ています。そして実際にAIが役割を「完全に」置き換えたと答えた企業は、わずか9%にとどまりました。
労働市場データ分析会社Revelio Labsのチーフエコノミスト、Lisa Simon氏はこう述べています。「企業は不要になった部門を整理したいだけです。今のところAIは、そのための隠れ蓑であり、言い訳になっています」。
これが「AIウォッシング」と呼ばれる現象です。グリーンウォッシング(環境への取り組みを実態以上に見せること)と同じ構造で、AI活用を実態以上に見せながら、本来は別の理由による人員整理に正当性を持たせる経営手法です。
◆Twitterが3年前に証明してしまった事実
AIウォッシングを理解するために、もっと直接的な例があります。2022年、イーロン・マスクによるTwitter買収直後の大量解雇です。マスクはBBCのインタビューで、買収時に約8000人いた従業員を約1500人にまで削減したと述べました。約80%のカットです。当時、「これでプラットフォームが崩壊するのでは」という声が上がりました。コンテンツモデレーションチームが壊滅し、信頼安全チームは大幅縮小。あちこちで機能障害が起き、広告主も一時離れました。
ただ、プラットフォームとしてのTwitter(現X)は、今も稼働しています。
つまりこういうことです。「あれだけの人数がいなくても、会社は回った」。
もちろん品質の低下はあったでしょう。利用者数の減少を示すデータもあります。でもここで注目したいのは別のことです。8000人いた組織が1500人になっても、会社として消えなかった、という事実そのものです。
さらに興味深いのは、Twitterの共同創業者でかつてのCEOだったジャック・ドーシー自身が解雇された従業員に向けて謝罪し、「会社を大きくしすぎた」と認めたことです。つまり過剰な採用は、経営者も内心ではわかっていた、ということです。これはAIが登場するずっと前の話です。

